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クロスボーダーM&Aに関する調査結果概要
更新日 2010年10月5日
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本調査は、過去3年間にクロスボーダーM&Aを実施したアジア・太平洋地域に拠点を置く企業、及びプライベートエクイティファームの経営層155人に、買収の成功に影響を与えたリスクマネジメントや人事関連問題に関する見解について、聞き取り調査を行ったものである。調査は2010年3月~4月の間に実施された。
その結果、アジア・太平洋地域の企業の多くは、クロスボーダーM&Aを実施することで海外事業の拡大を狙っていることが判明した。各種データによると、2009年から2010年前半にかけてのアジア・太平洋企業によるクロスボーダーM&A実績は、グローバルのクロスボーダーM&Aの25%を占めている。これは、13%だった2005年から2006年の数字がからほぼ二倍に伸びたことを示し、今回の調査結果は、アジア・太平洋企業の買収サイドにおけるプレゼンスが引き続き高まりを見せていくことを示している。 アジア・太平洋地域の企業がグローバルな場への足場を着実に固めている一方、解決すべき課題やリスクも少なからず存在する。対象企業の選定、買収価格の算定、デューデリジェンス、買収後の統合作業、企業・組織文化の違いの把握、そして労務管理上のリスク等の存在などである。たくさんの潜在的な落とし穴の存在にも注意しなければならない。国・地域に特有の労働法など法制度上の要請、対象企業の事業背景、市場からの企業評価、ビジネスの整合性といった問題から、特許、商標、ブランド名、人材などといった無形資産についても、多くの潜在的な落とし穴が潜んでおり、注意を払わなければならない。 こうした諸課題を背景に、コンサルティング、アウトソーシング、インベストメント分野でグローバルなサービスを展開する組織・人事コンサルティングファームのマーサー、および世界有数のリスクコンサルティング・ファームであるクロールは、mergermarketと協働し、調査結果をレポート「アジア・太平洋地域の企業によるクロスボーダーM&Aのリスクと成功の鍵」(Asia on the Buyside: The Key to Success) にまとめた。本調査報告書は、調査結果の概要を基に、マーサー及びクロールのコンサルタントからの分析・コメントを加え、データを多角的に検証したもので、ディールの実施過程において人事問題やリスクマネジメントに取り組むことが、いかに重要かを示唆している。 調査結果の概要:アジア・太平洋地域のクロスボーダーM&A概要
回答企業の多くは、近い将来のアジア・太平洋地域のクロスボーダーM&Aについて増加を予測
回答企業の大多数(83%)がアジア・太平洋におけるクロスボーダーM&Aは今後18ヵ月間で増加すると考えている。香港に拠点を置く回答企業の94%がこのように見ており最も強気である一方、韓国企業の回答は60%に留まっている。
回答企業の49%が、次の買収ターゲットとして中国市場を挙げており、今後18ヶ月以内にクロスボーダー買収を実施すると回答 回答企業の多くはまた、それ以外の地域においても近い将来クロスボーダーM&Aの完遂を予定しているようである。対象地域として挙がったのは、北米(29%)、東南アジア(27%)、そしてインド(22%)など。一方、日本企業の買収を考えている企業はわずか1%に過ぎなかった。
日本企業の多くは中国狙い 回答企業を日本企業に限定すると、その73%は今後18ヵ月の買収予定先として中国本土企業と回答している。東南アジアと答えたのは27%、北米、インドはそれぞれ18%となっている。
日本企業が海外での買収を検討するのは、経済成長率が高い地域でのビジネス拡充が主な理由 しかし、M&Aによる海外進出の理由は、当該企業がどの国を本拠地にしているかによっても異なる。例えば、海外においてM&Aを実施する最大の要因として、日本の回答企業の半分以上が経済成長率の高い特定地域でのビジネス拡充を挙げる一方、香港の回答企業の半分以上はコスト削減と規模の経済の追求を挙げている。
買収価格が最も重要な懸念材料 クロスボーダーM&A成功の尺度として最も重要なものは何かとの質問に対し、回答企業の42%が適正な買収価格であると回答、また30%の回答企業は顧客数の維持を挙げている。
過去に5億米ドル以上のディールを行った企業は、今後も買収を実施する可能性が高い 過去5,000万米ドル以下での買収を行った企業で、今後18ヶ月以内に再びディールを計画していると回答した企業は38%に過ぎなかった。一方、5億米ドル以上のディールを行った企業の実に75%が今後18ヵ月以内に再びディールを計画していると回答している。
アジア・太平洋地域の企業が、最もリスクが大きいと見ている地域は東欧、ロシア、アフリカ及び中国 回答者は特に、東欧、アフリカでの贈収賄および企業汚職について懸念を有している傾向が見られ、中東については政治的・社会的混乱についての懸念の声が多かった。
クロスボーダーM&Aにおける人事問題への取り組みの重要性
アジア・太平洋地域のクロスボーダーM&Aを実施する企業は、人事関連の問題の重要性を認識
80%以上の回答企業が、ディールに際しては無形資産(人材、ブランド、特許等)や文化の違いが重要な検討事項であると考えている。 さらに、回答企業の66%は、ディールの成果を測る尺度として人事関連の評価基準が必要であると考えていることが分かった。
重要な人事関連施策の導入 直近のクロスボーダーM&Aのディール期間中、従業員のリテンションのための施策等、人事関連の取り組みが積極的になされていることが見てとれる。さらに、回答企業の70%以上は、ディール後に主要スタッフの社外流出を防ぐにあたり、人事施策の導入が奏功したと回答している。
アジア・太平洋地域の企業がクロスボーダーM&Aを実施するにあたり、報酬の設定が最も一般的かつ難度の高い課題の一つとなっている アジア・太平洋地域においても、報酬は複雑な問題である。例えば韓国では、年功序列賃金体系は一般的であり、また日本では、企業によっては報酬の最高額と最低額の差異の割合を遵守しなければならない場合がある。中国においては、全ての国営企業は政府が定める報酬制限を遵守しなければならないなど、国固有のファクターが問題を複雑化している。
企業・組織文化の違いは、プレ・ディールの段階ですでに考慮に入れておかなければならない 回答企業のほとんど(84%)が、ディールの発表の前に、国や組織文化上の違いがもたらす影響を検討材料に入れると回答している
回答企業の多くが、クロスボーダーM&Aにおける人事関連のリスクの重要性を認識している 年金制度や資産の債務にまつわる隠れたコストは、文化の問題と同様、ディールを頓挫させる要因として大きい。回答企業の55%が人事関連の課題から引き起こされる財務リスクは、デューデリジェンスに際して精査すべき最も重要な分野の一つと指摘している。
リスク・デューデリジェンスの実施により、隠れたリスクや潜在的なディールの阻害要因を洗い出す
リスク・デューデリジェンスの実施は、ディールの結果にポジティブな影響を与える
直近のクロスボーダーM&Aにおいてリスク・デューデリジェンスを実施した回答企業のうち、約82%が、当該買収が完全に成功した又は非常に成功したと回答している。直近のクロスボーダーM&Aがあまりうまく運ばなかったと回答した企業の54%が、リスク・デューデリジェンスに将来もっと時間を割きたいと回答している。
アジア・太平洋地域の企業は、ディールの成功を長期的に左右する重要な問題を見落としがちである 回答企業の75%が、過去のディールに際してリスク・デューデリジェンスを常に実施してきたか、少なくとも実施を考慮に入れてきたと回答しているにもかかわらず、ディールの長期的な成功に影響を与える重要なリスクを見落としがちである。例えば、鍵となる社員の信頼性(17%)や経営陣の業績(4%)、規制リスクの存在(1%)等である。
リスク・デューデリジェンスの実施により、投資先との交渉上有利となる、相手方に関する機微の高い情報(ビジネス・インテリジェン)を得ることができる ディールにあたって必ずリスク・デューデリジェンスを実施すると回答した35%の企業のうち51%が、リスク・デューデリジェンスの結果、財務条件の再調整が行われたと回答している。さらに29%の企業が、経営陣の変更につながったと回答している。特筆すべき点は、リスク・デューデリジェンスの実施後、ディール内容の再調整を行ったと回答した企業の92%が、ディールの結果を成功裡に終わったと評価している点である。
アジア・太平洋地域でディールを行うにあたり、対象企業の不正が足かせとなっている ディール前に対象企業の不正の存在を発見することはもちろん重要であるが、ディールが終了した後でも不正の兆候を監視することは同様に重要である。直近のクロスボーダーディールにおいて、対象企業の不正をディール終了後に発見したと答えた企業は47%に上り、ディール終了後にもかかわらず再交渉もしくはエグジットを余儀なくされたとしている。
調査によれば、直近のクロスボーダーM&Aについて「完全に成功した」もしくは「非常に成功した」と捉えているのはアジア・太平洋地域の企業の40%に留まっている。将来、再びクロスボーダーM&Aを実施するにあたってディールを成功に導くためには、どのような点にもっと注力すべきと考えるか、との質問に対しては、以下の4点に集約された形での回答がもっとも多かった。
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佐藤 剛己 クロール東京支社長 マネジング・ディレクター 堀之内 順至 マーサー ジャパン株式会社 グローバルM&A コンサルティング代表 プリンシパル |
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