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グローバル経営のピンチを乗り切れ!

Story #2 世界各地の年金リスク管理は誰の責任か 1/9

更新日 2011年4月21日

 



注) 文中に登場するマーサーの社名以外の企業名および個人名はすべて架空のものです
それ、私の仕事なの?
北尾 千鶴子は、陰鬱な気持ちで机に向かっていた。ランチタイムだというのに、机を離れる気にもなれなかった。

「これは本当に私の仕事なのだろうか・・・。」

そう思うと、腹立たしくもあり、情けなくもあった。気持ちの整理がつかぬまま、既に逃げようのない状況に追い込まれていることだけは理解していた。

北尾が勤務するJMエレクトロニクス株式会社(JME)は、日系大手電器メーカーの一角をしめる名門企業だ。早くから海外での生産拠点を積極的に増やし、海外企業の買収なども行なって販売網を整備してきた。連結で見た社員数でも、海外の社員が既に7割程度を占めるようになっている。

北尾は、その日系グローバル企業の本社人事部に在籍している。タイトルは、専門部長だ。いわゆるライン管理職ではないが、日本国内の退職金・年金制度の担当部長として専門性を発揮する立場にある。

彼女が24年間勤務してきたJMエレクトロニクスの社内では、女性管理職のロールモデルとして注目される存在だ。2年前には、社長直轄のダイバーシティ推進プロジェクトでリーダーも務めた。もっとも、そのプロジェクトはなんとなく梯子が外されたような形になり、北尾としては煮え切らない形で終わっていた。

「また損な役回りが回ってきたような気がする。どうしよう。なんでいつもこうなるのかしら・・・。」

北尾のフラストレーションの原因は、今朝の人事部内の月次ミーティングにあった。

会議室に入った瞬間から、北尾は何か嫌な予感がした。いつもは人事部内の課長以上だけで行われる月次ミーティングの場に、常務取締役管理本部長兼CFOの小笠原 康介と、財務部担当部長の三川 隆が来ていたからだ。

三川は、連結決算で海外子会社の年金関連の数字などをとりまとめるチームも率いている。年金という分野の関係上、北尾も三川とは日常からやりとりがあった。しかし、なぜ管理部門トップの小笠原常務まで・・・。

ミーティングが始まると、執行役員人事部長の谷 健司がおもむろに切り出した。

「ええっと。今日は、小笠原常務と三川担当部長にお越し頂いております。実は、先般の株主総会の関係で、人事としても対応すべき案件が出てきたということで、そのあたりのことをご説明頂くことになっております。小笠原常務、よろしくお願いします。」

「ああ、あの件か・・・。」北尾は、すぐに察知した。

小笠原が口を開いた。

「皆さん、おはようございます。今、谷さんが言われましたように、ちょっと先日の株主総会の関係で、やらなくちゃいけないことが出て来ましてね・・・。総務のほうから聞いておられるかもしれませんが、海外の年金のことで厳しい質問が出たのです。」

ほとんどの人事部の管理職メンバーは、その話は聞き知っていたが、あからさまに頷く者はいなかった。小笠原は続けた。

「JMEの年金債務(PBO)は同業他社比随分大きいように思われるが、この点について経営の見解を聞きたいということでね。」

「やはり。」北尾は、ややうつむきながら聞いていた。

小笠原は、口調は丁寧だが目が鋭く、今朝は特に冷たい感じがした。


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