第14回
株式会社カフェグローブ・ドット・コム 代表取締役社長 矢野 貴久子 さん (2/4)
女性の自立ラインと企業における教育の意義
古森 カフェグローブのサイトを見ていると、そうした矢野さんの問題意識が情報発信の軸として生きているような気がします。カフェグローブの個性のようなものが、ありますよね。
矢野 女性が意識を高めるのを応援したいと思って、色々とやっています。実際、マクロのデータを見ても、今の日本社会に問題意識を持たざるを得ない状況にあります。 古森 どんな課題ですか? 矢野 カフェグローブのメインユーザー世代がどういう状況にあるかということをみてみると、例えば、2008年時点で年収500万円以上の女性は、20歳から49歳のレンジで約100万人。調査母数の1630万人の中で、たったこれだけです。300万円以上でみても、400万人。この世代の場合、年収300万円以下の女性が圧倒的に多いのですね。 古森 女性個人が稼ぐお金という意味では、ほとんどが300万円以下に入るわけですね。 矢野 私は、女性の自立ラインは300万円だと思っています。地域差はあるにせよ、それくらいはないと、自立してそれなりに生活していくのは難しいはずです。日本の人口構成が完全逆ピラミッドになる数十年後を想定すると、労働年齢世代の所得はある程度必要です。でも、300万円以下の人たちには、そうしたベースがないわけですね。 古森 自立にも、物理的な自立から精神的な自立まで個人によって色々あるでしょうが、最低限の経済力というのは、やはり何事につけ大きな意味を持つでしょうね。 矢野 現在、年収300万円未満の女性というのは、パートや事務職がほとんどだと思います。この人たちを引き上げないと、日本は大変な労働力不足になるはずです。生活がつらいと、子供も産めない。このベースを上げないと、結局少子化問題も労働力問題も変わらない。本当に、国として急がないと・・・。子供手当ても一案ですが、お金が実際は何に使われるか分からないわけでしょう。一時的な景気刺激策にはいいかもしれませんが、待機児童問題など、他にも具体的なことをもっと議論しなければならないと思います。 古森 手当てというのは、あくまでも経済的補完ですよね。でも、子供本人が将来自分で経済力を勝ち取って行く基礎を得るためには、手当てだけでは不十分ですね。つまるところ、学校教育が質の高い知恵、知識、経験などにつながっていかなければ、大変な財源を投入して手当てを支給しても、お金は生かされないでしょう。 矢野 そうした認識の中で、企業に何ができるかというと、やはり教育というか研修ではないかと。ベーシックなスキルを、どうやったら多くの人に持ってもらうことができるのか。企業を超えた一定の標準テストなどがあって、「最低限これをクリアしないと」という共通ラインを設けることが出来ればいいなと思います。 古森 なるほど・・・。もっとも、何を作っても結局「習い事」で終わったら、力にならないという別の問題もありますね。今の日本、そういう風になりがちです。 ![]() 古森 「あたしなんか」? 矢野 いろいろやりたい気持ちはあるが、「あたしなんかが人の上に立つなんて」とか、「マネジメントはちょっとイヤだ」とか・・・。そこに壁を感じていて、理想と実際の行動を分けてしまっている人も多いように思います。 古森 理想が、腰折れするわけですね。 矢野 知識や考え方のベースが薄いので、回り道したりして、意識が形になっていくにしても非常に時間がかかるのですね。私自身もそうでしたから、理解はできるのですが・・・。忙しい中で、せっかくやる気があっても、たとえばマネジメントとクリエイティブの仕事を自分の中で線引きして、壁を作っていたりして。仕事という意味では、どこかで二つは自然に出会うはずなんですけどね。 古森 その二つは自然に出会う・・・確かに。 矢野 実際の商売の中で、何がどう利益に貢献しているかということも、もっと多くの女性に理解して欲しいなと思います。私自身が、身に沁みて経験したことです。だから、向上心という前向きな意識が、心理的バリアというもう一つの意識にぶつかって折れないように、何らかの意図的な教育、訓練が必要だと思います。カフェグローブという会社でもそれがこれからの課題ですね。 古森 今の日本社会においては、男女を問わず、「企業が人を育てること=CSR」なんだと思いますよ。結局、企業が家庭や学校の積み残した多くのものを背負って、人材育成をしている形ですからね。 矢野 そう!CSRのために、無理やり新しいことを考えている場合ではないですね・・・。企業における教育が、ほんとに重要だと思います。 古森 国としても、教育に何か大きな変化を起こすべきでしょう。「国民皆保険」も素晴らしいけれど、私は「国民皆留学」の方が日本にとって将来性があると思っています。観光旅行じゃなくて、現実の体験。世界中のとんがったものに10代で接する機会を多くの人に持たせてあげられたら、日本は変わると思います。 矢野 それはもう大賛成です。人には大きなポテンシャルがあるので、それを引き出すようなきっかけを制度としてつくることができたら、企業にとっても社会にとっても、凄い力になりますね。
|

