ASEANにおける失敗しない組織人事づくり | マーサージャパン

シンガポール日本商工会議所『月報』2016年8月号要約記事

ASEANにおける失敗しない組織人事づくり


グローバル化は今や多くの日系企業の共通課題です。ASEANにおいても、多くの企業が国またはリージョン単位でローカル人材の育成や組織人事マネジメント力の強化に取り組んでいます。一方で、ASEAN各国が持つ多様性や、せっかく育てたナショナルスタッフの退職、駐在員への急な帰任命令など、その取り組みは容易ではありません。短期間で成果を生みつつ、かつ持続性のある組織人事づくりの要諦とは何か?日系企業の組織人事管理の特徴に触れながら、クロスボーダーM&Aの取り組みをヒントに、海外における組織人事づくりの具体的なアプローチを解説します。


仲島 基樹

執筆者: 仲島 基樹(なかしま もとき)

マーサータイランド Talent Consulting プリンシパル
Mercer Japanese Business Advisory

宮寺 宏器

執筆者: 宮寺 宏器(みやでら ひろき)

マーサーシンガポール M&A Transaction Services プリンシパル
Mercer Japanese Business Advisory

 

 

1. なぜ日本企業には失敗が多いのか?

  1. 世界的にも稀な日系企業の組織人事管理

    日系企業に限らず、欧米系多国籍企業やASEAN各国のローカル企業など各企業の組織人事課題についてコンサルティングを行っていると、日系企業が日本で行っている組織人事管理のスタイルは、世界的に見て極めてユニークで稀なモデルであるということに気付きます。例えば、人材の採用や給与設定、昇格などを行う際に、年齢や他の社員との「公平性」を気にする企業が少なくありません。これには、新卒一括採用および長期雇用といった雇用慣行の中で、組織全体のバランスを整えようとする「内部指向型」の管理スタイルが見て取れます。これは「社員は入れ替わるもの」と考え、市場での競争力を重視する「市場指向型」が一般的な多国籍企業や地場企業とは大きく異なります。

    また「論理的整合性にこだわる」というのも特徴の一つだと言えるでしょう。例えば、評価の結果を処遇に反映させる際、「賞与は超過利益の再配分なので、業績評価に連動すべき」「昇給は将来への期待であり、投資なので、能力評価と連動すべき」といった考えに基づき、複数の評価プロセスを並行して行う企業もあります。こうした、評価の本来の趣旨を捉え、論理的に制度を組み立てていく姿勢は、労働組合に対する説明責任や日本人の持つ品質志向に合致するもので、非常に高い完成度をもたらしていると言えます。一方で、他の欧米・地場企業などでは、「効率性」を重視し、評価の仕組み・プロセスをシンプルに設計する傾向があります。このあたりも違いの一つでしょう。

  2. こんなにも劣後する市場競争力

    こうした違いは、直ちにどちらが良いか悪いかと論じるべきではありません。一方で、それをそのまま海外で適用できるかというと、そこには十分な注意が必要です。例えば、下記のグラフは日本またはシンガポールにおける月額基本給の市場水準を示しています。本データは弊社が毎年行っている報酬調査(2015年度版:シンガポールでの参加企業771社、日本での参加企業534社)から得られたものです。ここには、海外で人事管理を行う上で、必ず押さえておくべきポイントが含まれています。

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