C-Suite Talk Live 第66回 早稲田大学大学院 (1/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第66回 (1/4)

早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 ロバーツ グレンダ(ROBERTS Glenda S)さん

C-Suite Talk Live 第66回 ~対談エッセンス~
  • 環境が生み出す女性が「再就職しない」状況
  • 日本が目指すべきダイバーシティのあり方
  • 中高年へのスキルアップ機会提供
  • 外国人の活用-“Meet in the middle”という視点

環境が生み出す女性が「再就職しない」状況

鴨居 C-Suite Talk Liveは、企業の経営者や団体の責任者の立場にある方たちに、人材や組織のテーマでお聞きしているものですが、今年はグローバリゼーション、あるいはそれに関連したダイバーシティやワークライフバランスが議論のテーマになっています。今日は、ロバーツ先生とお話させていただく中でも、先生がフォーカスされている移民やジェンダー・人口の高齢化といったところを、いくつかのテーマでお話させていただきたいと思います。

ロバーツ はい。宜しくお願いします。

鴨居 最初に、早稲田大学のアジア太平洋研究科というのは、まだあまり多くの人が知っている研究科ではないかと思いますが、そのバックグランドや特徴をお聞かせください。

ロバーツ この研究科が作られたのは1998年ですが、当時日本で唯一、アジア太平洋に関する研究について、英語でも日本語でも修士号と博士号がとれる大学院でした。政府のグローバル30*のような取り組みよりも随分前です。 早稲田が先行してこの領域ですばらしい取り組みを進めており、私も設立当初に東大から移ってきて教員として入りました。

*グローバル30:文部科学省事業で「国際化拠点整備事業(大学の国際化のための ネットワーク形成推進事業)」


鴨居 その当時からアジア太平洋に焦点を絞って展開するというユニークな視点ですね。

ロバーツ パンフレットを見ていただくとよくわかりますが、国際的な環境の中、学生は50カ国から集まってきています。教員も海外で学位を取得された方が多く、活動の場を国際的に広げていらっしゃいます。

鴨居 日本の企業がこれだけグローバル化し、日常的に海外とのやりとりをしているわけですからもっと前にこのような学校ができてもよかったですね。

ロバーツ はい、そう思いながら私たちも頑張っています。私は地域研究の分野に属していますが他にも国際関係、国際開発、政策研究などがあり、それぞれの先生が担当されています。

鴨居 私も将来リタイアしたら入学させていただき、勉強したいくらい内容が充実していますね。

ロバーツ どうぞどうぞ!(笑) リタイアした人も結構来るんですよ。随分前ですが、リタイアした公務員の方が私のゼミに入っていました。

鴨居 日本に来られることになった経緯も含めて、ロバーツ先生の簡単な略歴をお聞かせいただけますか。今取り組まれている研究の主なテーマなども含めて。

ロバーツ ミシガン大学のアジア学部を卒業してから1年間だけ日本に来たのですが、その時代はクールジャパンじゃなくて、もっとクラシックなジャパンに興味を持っていました。例えば、合気道を始めてみたりしました。

鴨居 歴史のある日本への興味は精神的なものも含めてですか。

ロバーツ はい、そうした伝統的、精神的な面にとても惹かれました。その後、コーネル大学に入り、博士を取る前に2年間、京都大学の米山俊直先生の下でフィールドワークをしました。そのフィールドワークの中で工場で働く婦人達を調査したのですが、彼女たちがどのような人生設計をしているか、また、仕事に対する姿勢などの面で大変興味を持ちました。
その時に日本人のお友達が多くいたのですが、大学を卒業して仕事についていたのに、結婚したらそこで仕事を辞めてしまったことに大変驚きました。アメリカ人の女性は職業人としての意識が強く、卒業してもずっと働きたいという人が多かったので、その違いに大変に驚いたのです。自分自身はできるだけ仕事も家庭も両立したいと思っていましたが、日本人のその時のお友達はそうしなかったので、その違いに興味を持ってこれが研究テーマになるんじゃないかと思ったのです。

鴨居 ロバーツ先生が来られていた70年代後半から80年代というのは日本がまだ輝いていて、ジャパン・アズ・ナンバーワンが注目された時代ですよね。

ロバーツ そうです。その時代に私の研究テーマが決まっていったわけです。

鴨居 経済が高度成長していく中、男性中心の働く環境ができ、一方、女性の活躍の場が制限されていった時代背景もありますね。

ロバーツ そうです。女性は大学を優秀な成績で出ても、働く環境が男性中心であるためにサポート役として何年か勤め、場合によっては仕事を通じて男性と知り合い、結婚して仕事を辞めるというのがむしろハッピーライフと見られていました。

鴨居 そういう見方をされていた時代ですから、余計にアメリカの「働く」女性達と日本の「働ける」女性達とのコントラストが興味をひくテーマになったのでしょうね。

ロバーツ その通りです。そのとき既に、いわゆるOLさん達の研究は他の人がやっていたので、私は工場で働く女性について研究しようと思ったのです。自分も1年間、パートとして工場で働いたんですよ!下着メーカーで検査包装係でした(笑)。アメリカは織物の文化ではないので、最初本当に大変でした。

鴨居 そこから繋がって今の労働環境や移民、ジェンダーがずっと続いている先生のテーマなのですね。それらの観点から見て日本の現在の状況はどう見えていますか。

ロバーツ 労働環境、ジェンダーの視点での大きな課題は、女性が一旦正社員の仕事を辞めてしまうと再就職することが難しいということです。一度、離職すると復職しても契約社員かパートのような仕事しかもらえないわけです。賃金も安いですし、やりがいのある仕事はすごく限られてしまいます。 だから、一層あまり再就職しないというサイクルになってきます。また、税金の構造も専業主婦を作るようになっています。日本の労働環境は、この点を解放しない限り良くはならないのではないかと思います。たとえばオランダではパートタイムの仕事の中にも専門性が必要な男女問わずに魅力的な仕事を位置づけ、お給料も相当なレベルにする仕組みを持っています。パートタイムですので、長時間その仕事に拘束されない働き方も選べるわけで、そうした仕事の作り方が日本でもあれば状況は大きく変ると思います。一度正社員をやめ、それでも一定の能力やスキルをもつ女性はそうした働き方を選択すると思います。

鴨居 私はオランダで働いた経験がありますが、そのような仕組みがあることは知りませんでした。

Prof. Glenda S. Roberts (PhD)
Glenda S. Roberts received her BA in Asian Studies from the University of Michigan in 1978 and her PhD in Anthropology from Cornell University in 1986. After eight years in Hawaii at the East-West Center and the University of Hawaii, she came to Japan in 1996 to be a Visiting Associate Professor at the Institute of Social Science, Tokyo University. At Todai, she was on the first editorial board for the launching of the Social Science Japan Journal. In 1998, she was hired by Waseda University as an Associate Professor at the newly established graduate school,GSAPS. She has been there ever since, where she is now Professor, teaching courses on Contemporary Japan, International Migration, the Anthropology of the Workplace, Gender, and Social Anthropology. She was a Fulbright Commissioner from 2009-2014, and served on the Ministry of Justice 6th Discussion Panel on Immigration Policy (第6次出入国管理政策懇談会) from 2013-2015.
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