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機窓にて - 寺田 弘志

コラム407 機窓にて - アジアと日本の距離感覚

更新日 2009年3月13日
執筆: 寺田 弘志(組織・人事コンサルティング)

 

 ここ2年ほど、仕事の関係で上海に行く機会が多い。成田から上海までは概ね3時間。この時間がもったいなく感じ、なんとかならないものか、と思う。ふと、機内のモニターを見るともう福岡上空付近。路線図をみてみると、福岡はちょうど東京と上海の中間点の位置にあり、中国からはずいぶんと近く思える。仮に福岡勤務だとすると、中国出張もそんなに苦にならないだろう。

 そんなことを考えているうちに、今後の日本企業のグローバル化を考えた場合、様々な機能を東京に一極集中させることが合理的なのか、そんな疑問が湧いてきた。

 仕事場所が東京と上海のような2拠点だけだと出張ベースでもよいのかもしれない。だが、3つ以上の拠点となると、出張のための時間やコストも無視できなくなる。そのような場合には、アクセスの利便性の高い拠点にハブ的な機能を設けることで効率化を図るといった考え方もある。そうしたハブ機能を介して優秀な人材の交流の場が広がり、グローバルな視野や知見を有したマネージャーが継続的に輩出されていくという仕組みが実現されれば、人材を通じたグローバルな優位性・競争力の向上へと発展してこよう。

 ただし、その際には、会社が強制的に社員を異動させるのではなく、社員自らが異動したい、と思ってもらえないといけない。アジアの方々と話をしてみると、日本や海外で経験を積んでキャリアアップを目指したいと考える方々が意外に多いことに気付かされる。その一方で、生活費が高い、教育環境が整っていない、家族と離れて暮らすのはどうも、といった理由で、日本への転勤には躊躇することが多いという話も聞く。実際、上海の同僚コンサルタントと話をしていると、「日系企業より欧米系企業のほうが、本社勤務のチャンスもあり、かつ、そうなった場合も家族にとって暮らしやすいから」、そんな理由で海外現地法人の幹部候補を引き抜かれた例もあるそうである。

 そうして考えると、人材をグローバルに活用するための拠点は、単に会社にとって経済合理的であるだけでなく、社員からみても「住んでみたい/住んでみて楽しい」と思える場所なのか、といった点も重要になってくるのではないだろうか。将来、アジア市場を視野に入れた成長戦略や、そのための人的資源の開発・活用を考える場合、社員にとって、その地域の「住みやすさ」も踏まえて、拠点間の機能・人員の配置を見直す、といった選択肢もありえるだろう。

 もしかしたら、大阪や福岡といった、アジアにより近い西日本の都市か、もしくは、国境を越えてソウルや北京、上海にアジア市場をターゲットとしたマーケティング・商品開発の拠点を移す、そんな話も現実となる日がくるのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、上海到着。またチャレンジングな仕事の日々が始まる。

執筆者: 寺田 弘志 【執筆者プロフィールを見る】





 


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