C-Suite Talk Live の記念すべき第1回は、ホテルニューオータニの代表取締役CFO、川野 毅さんにご登場頂きます。川野さんは2005年のC-Suite Club発足時からのメンバーのお一人で、旧日本興業銀行からホテルに転進されて以来、一貫して経営分野の仕事をして来られました。ホテルという、多様性のるつぼのような世界。「おもてなし」という言葉が日本文化の象徴の一つとして海外でも注目される昨今、一方では経済危機でホテル業界にも激しい逆風が吹いています。常に「人・組織」に熱い思いを持って経営改革に取り組んで来られた川野さんの目には、今何が映っているのでしょうか・・・。
危機の中で、真摯に振り返る
古森 経済危機から世界も日本も徐々に回復途上にあり、色々な指標に前向きな兆しも見えて来ました。しかし私は、「いつ回復するか」といった類の議論よりも、今般の変化に関して「どのような時代観を持つべきか」、「どう活かすべきか」という角度での議論が重要だと感じています。川野さんは今般の経済危機に関して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
川野 足下の状況は厳しいですが、そもそもこの流れは1年半前程から兆候があり、世界的にきな臭い雰囲気がありました。今はまさに、中期の計画が非常に立てづらい、経営の舵取りが難しい時期です。そうした中で、私達は過去10年にやってきたことの振り返りを行いました。「宿泊単価の低下」「外国人宿泊客の動向変化」「9.11事件」「震災」・・・など、10年分の主要な出来事を客観的に振り返ることで、何かが見えてくるのではないかと考えたわけです。 古森 危機に際して10年を振り返る。なかなか勇気のいる活動ですね。それで、何か見えてきましたか。 ![]() 古森 「何に失望してきたのか」・・・。重い言葉ですね。その時代ごとに皆さんが一生懸命に努力してもなお、何かが抜けてしまうということなのでしょう。 川野 ホテルの人材は総じて、「顧客サービスが好きだ」という点で同じ素質を共有しています。それは非常に重要な素質で、「座学よりも現場で顧客におもてなしをして感謝されたい」という思いを持った人材が多いですね。ところが一方でそれは、物事を客観的に分析して、白紙から何かを進めていくような思考プロセスを阻害する方向に作用することもあるのです。また、現在の組織の中核を担う人材の多くが好況期に経験を積んで成長してきたことも、「将来に向けてなすべきことを考える」という思考プロセスが組織内に生まれにくい一因になっているかもしれません。いずれにしても好況期には、私達の持つ一見良いカルチャーの裏側に潜む、思いがけない負の側面には気づきません。今般、自らを振り返る中で気づいたことです。 古森 「危機感を持つ」というよりも、「実際の危機の中で人々が考える」ということに、私は大きな意味があるように思います。真剣勝負の取り組みの中で、次世代の優秀人材も開花していくのでしょうね。 愚直に続ける「スマイルリーダー」~継続は力なり
古森 そうは言いましても、これまでにも一定の意識的努力はしてこられたのだと思います。例えば、御社には「スマイルリーダー」という活動がありますね。顧客目線を現場に根付かせるうえで非常に重要な取り組みだと聞いていますが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。
川野 スマイルリーダーというのは、簡潔に言えば顧客視点での部門横断型の情報交換活動ですね。スタートして4年になります。毎月一回、宴会場の一部屋を使い、フロント部門、レストラン部門、調理部門、経営管理部門など、各職場のリーダーが総勢30名ほど集まって、お客様からのサンクスレターや苦情を紹介したり、各セクションで共通の問題や取り組みについて話し合ったりします。総支配人と私、それに部課長クラスも何名かオブザーバーとして出席しますが、あくまで20代のリーダーたちが主役でオブザーバーに発言権はありません。会議は人事の研修部門が事務局になっていて、身だしなみや挨拶などその月のテーマを決めて、現状の問題点や今後の取り組みのあり方などについて、皆で発言しあうわけです。
古森 偉い人がきちんと時間を割いて毎回参加している、しかし議論の主役は奪わない・・・という点が、重要なポイントですね。実際、ここでの議論が現場の活動につながっていったりしていますか。
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