第7回 株式会社良品計画 執行役員 総務人事 J-SOX担当部長 経理財務担当 企画室管掌 鈴木 啓さん (1/4)
C-Suite Talk Live第7回は、株式会社良品計画の執行役員で人事に留まらず管理部門全般を管掌しておられる、鈴木啓さんのお話を伺います。
「無印良品」― 多くの方々が何らかの形で接点を持っているブランドの一つですね。海外を旅していても、「MUJI」のロゴを見かけることがよくあります。その無印良品を軸にした事業運営を、企画・開発から製造、流通、小売に至るまで一貫して行っているのが株式会社良品計画です。 現在の市場は日本がメインですが、海外展開にも着実に取り組んできた歴史があります。近年の中国を中心とした成長のみならず、イギリス、フランス、香港、台湾、スウェーデン、シンガポール、韓国、イタリアなど、日本発の「MUJI」ブランドはグローバル市場で着々と存在感を高めています。 これまでとは異なるプロファイルの顧客や社員が、本格的に視野に入って来るステージを迎えた良品計画。鈴木さんご自身、ロンドンで欧州事業の責任者として海外事業の第一線を経験されています。グローバル経営への胎動の中、鈴木さんは何を軸にして組織・人材マネジメントを進めておられるのでしょうか。その思いを伺いたいと思います。
グローバル経営における真のアセットとは
古森 無印良品といいますと、これまでのメインは国内市場ですよね。しかし海外で「MUJI」のロゴを目にする機会は増えてきましたし、欧州などにも熱烈なファンがいると聞きます。今後のグローバル展開と人材マネジメントの方向性などをお聞かせ願えますか。
鈴木 海外売上高比率という意味では、今は10~15%というところですね。しかし、ご指摘の通り海外でも「無印良品」のコンセプトへの好反応があり、今後グローバル展開を加速させていく方向にあります。現時点でも世界16拠点に約100店舗がありまして、出店ペースは既に国内を上回る勢いです。店舗数でいえば、既に約25%が既に海外事業ということになります。 古森 売上高はともかく店舗の数で見れば、現在でも既に海外市場のオペレーションは無視できない規模になっているのですね。それが今後さらに加速するとなれば、人材マネジメント面でもしっかりした手を打つべき時期に来ていますね。 鈴木 まさにそれが経営課題の一つです。もっとも、グローバル人材マネジメントの基本スタンス自体は、大きく変わらないでしょう。弊社では現在でも、「日本人駐在員が何でもやっている」という姿ではなく、現地人材が現法の役員になっているケースも多々あります。もちろん駐在員は置きますが。性別、学歴、年齢などにとらわれないというのが弊社の風土ですが、国籍についても同じことです。 古森 現地での人材活用は、多くの日系企業が悩んでいるポイントです。具体的には、御社の場合どのような状況でしょうか。 鈴木 例えば、英国の販売会社の社長含めた幹部はイギリス人ですし、持ち株会社でも現地人材が役員に登用されていますね。業績が大きく伸びている香港でも、現地人材が経営にあたっています。また、日本にある本社のトップも現地の優秀人材と積極的に交流しているので、人材交流も少しずつ増えてきていますよ。日本での取り組み事例を紹介したり、逆に日本からナレッジを持つ人を派遣したり・・・。 古森 上位層への登用もあり、ナレッジ・マネジメント面での動きも起きているわけですね。逆に「海外から日本へ」という流れについては、いかがですか。 ![]() 古森 着々と活発化しているようですね。しかし、とりわけ重要なのはやはり「海外拠点のトップ人事」だと思います。経営の現地化がある程度進んでいるようですが、今後拠点数が増えていく中でいかにそれを加速するか。信頼できる人材のプールをしっかりと持つことができるか・・・。これからがまさに本番ですね。 鈴木 同感ですね。信頼できる人材、任せられる人材をいかにグローバル展開の速度にあわせて育成・確保できるか。今後一層、重要なテーマになるでしょう。 古森 ここは、一般的にジレンマがありますよね。信用できないと重い仕事を任せられないし、かといって任せないと人材が育たない。過去に一度任せて裏切られ、そのトラウマでずっと動けずにいるような場合もあります。 鈴木 任せることに不安やリスクがあるので、消去法的に日本人がやる・・・という姿ですね。そうせざるを得ない局面ももちろんあるのでしょうが、どこかで思い切って前に進むことも必要です。 古森 現地トップを任せるというのは、非常に大きな意味がありますよね。トップというのは、法的なものも含めてあらゆる責任、リスクを負います。そこまで任せられてしまうと、人間というのは「変なことができない」境遇になります。様々な理不尽や問題解決に苦しみながら、人が育ちます。 鈴木 それは間違いありません。日本人の例ですが、比較的若手で海外拠点に異動して大変な苦労をして、成長して帰って来る人材が増えています。今後現地人材を登用していくうえでも、大きな示唆があります。 古森 組織の「ナンバー・ツー」も大事な仕事ですが、「あと一人上にいる」「保険をかける相手がいる」という環境は、場合によっては「逃げ」を許します。下手にナンバー・ツーに滞留させるよりも、トップに据えたほうが逆にリスクが下がるような気さえします。ただ、これは「鶏と卵」の問題ですが、最低限の信頼を本社側で感じられる人材であることは必要ですね。最初の歯車をまわすために・・・。 鈴木 日本人以外の現地トップ登用は、欧米圏で始まりました。英国現地トップは就任して2年目ですが、店長代行からずっと当社で活躍してきた「たたき上げ」です。これから先は未知数ですが、当社でオペレーションを経験してきた人材が登用されていますし、何より国内外問わず当社で働く社員は似ていて、皆「無印良品」ブランドが好きで働いてくれているという点で安心できる部分もあるのです。 古森 なるほど、現場経験を積んだ人材であれば、少なくとも責任ある立場についた途端に裏切るようなことはないと・・・。そこが信頼の原点ですね。ちなみに、英国でトップについた方は、MUJIのオペレーション経験はどの程度ですか。 鈴木 英国拠点では、現地の幹部社員は10年以上経験してきていますよ。店長になって、エリアマネージャーになって、販売部長になって・・・というように、現場からずっと当社でやってきた人たちです。MUJIブランドが好きで、当社の遺伝子を共有している、だから安心して任せられるわけです。 古森 ああ、やはりそこですよね。組織のトップというのは、どんなに規則を作っても、それですべてを縛ることはできない領域です。最終的には、その人材の内面を信じることができるかどうか。店舗という場所を介して10年間も勤務した人が層をなして残っているというのは、すごいアセットですね。 鈴木 海外では転職する人が多いという一般認識がある中で、コア・メンバーがMUJIのコンセプトが好きで居続けてくれている。これは、確かに大きな財産です。アカウンティングのように専門性が明確で転職しやすいポジションでさえ、10年以上勤務している幹部がいるのです。 古森 そういった、MUJIのコンセプトへの憧れや親和性と、現場における深い経験の掛けあわせが今後の展開でも再現できるか。それが出来れば、かなり強力なグローバル組織になっていきますね。
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