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第14回  株式会社カフェグローブ・ドット・コム 代表取締役社長 矢野 貴久子 さん (3/4)
女性が選択肢を持ち、能動的に生きるために
古森 ところで、今のカフェグローブ・ドット・コムのユーザーは、どんな考え方を持った人々なのでしょうか。矢野さんが発する問題意識に呼応して、どんな人々が集まっているのかに大変興味があります。

矢野 二極分化とまではいかないですが、かなり分かれているという印象ですね。「ガンガン働く人」と、ワークライフバランスを重視して「そこそこ働く人」と、大きく二つのタイプがあるように思います。もちろん、ワークライフバランスという観念自体、色々な解釈ができるのですが。

古森 ワークライフバランスの定義は、本来は個人の価値観によりますよね。

矢野 私自身は、ワークライフバランスはトータルで見るべきで、「ワーク・ワーク・ワーク」のような時期がないと、後々伸びない気もしているのです。だから、バランスというのも節目ごとに考えていくべきで、個人別に自分自身が設計するべきことのように思います。

古森 同感です。「今の自分のバランスはここ」と決めることに意味があり、それは個々人の人生のステージの中で変わっていくものだと思います。もちろん、企業の制度的視点で考える場合には、一定の標準的枠組みは必要ですよ。でも、最終的には人生の時間の使い方の話ですから、個々人が独自のワークライフバランス観を持つことに尽きると思います。

矢野 カフェグローブのユーザーを見ていると、そういうところはパシッと自分の軸がはっきりしているように思います。「仕事が好き、結婚もしないかも」という人がいたり、「家でまったりしたいので、仕事はこの程度にこうやってがんばりたい」という人がいたりして。要は、自分のスタンスを持った人が多いですね。

古森 なるほど、「自分の生き方に何らかのスタンスを持っている」というのが、カフェグローブ・ユーザーの特色のひとつなのですね。

矢野 そう、自分のことを分かっている人が多い。

古森 世の中では、男女を問わず人生に迷った人が多くなったと言われていますね。最近は「草食系」なんていう言葉も市民権を得た感がありますが、本人がそういうものを積極的に選んで生きているというよりは、世相の投影のような印象です。

矢野 あ、そういう視点で見ると、カフェグローブのユーザー層には「肉食系」女子が多いと思います(笑)。そういえば最近は、草食系男子はもてたいとも思わないらしいですよね。一方、恋愛したくないという女子はあまり聞いたことがない。一部を除いて。この流れは、生物学的にどうなのでしょうか?

古森 そのあたりは、神のみぞ知るということかも。でも、私はどのような時代になろうとも、「私はこうだ」と言える人たちは素晴らしいと思いますよ。価値観なんて個人の自由ですから。価値観の中味以前に、「自分の意思がある」ということが大事です。男であれ女であれ、そうだと思います。

矢野 だから、カフェグローブも啓発を意識しています。あくまでも情報発信が主体なので、「こう!」と決め付けた言い方はしませんけど。発信されている情報に触れて、自分なりの生き方を考えるきっかけにしてくれたらいいなと思います。ちなみに私の持論としては、身体が丈夫で、金融知力があって、ITリテラシーがあるというのが、これから活躍できる女性の重要ポイントだと思っています。

古森 ITは、今更ながら言いますけど、本当に人類の住む世の中を変えましたね。過去の人類何十万年の歴史で見て、ITによって本当に新しい時代になっている。情報が、これほどまでに時間と空間を超えて空気のように存在する環境というのは、まったく別世界です。怖い面もありますけど。

矢野 ITのおかげで、時間効率が飛躍的に高まりましたね。おかげで、介護や出産や、何かの合間にも仕事が出来たりします。ITリテラシーを筆頭にして、「ベーシックな知識をきちんと持っていれば、何でも変えられるんだ」ということを、もっと多くの女性に知ってもらいたいですね。私が起業した頃は、1,000万円ないと株式会社にできなかったのですが、今は1円でできる時代ですし。

古森 商売のための法的・規制的な与件も、年々変わってきていますね。

矢野 一方、そうしたベースになる知識を持たないと、生き方や働き方の選択肢が広がらないわけです。本当は、広げられるのに・・・。基礎的なことを知って、選択肢をたくさん持ったうえで、やはり専業主婦が好きだという人はそれでいいのです。それも個人のスタンスであり、選択ですから。また、今は専業主婦であったとしても、ITや金融知力があれば、将来何かのときに役に立つわけですしね。私がいやだなと思うのは、知らないで選択できない「機会損失」。本当にもったいないと思うのです。

今後の教育のキーワードは「ストーリー性」?
古森 冒頭に矢野さんが、「企業を超えた基礎的なスキルの標準があればいいな」みたいなことを言われましたね。

矢野 ええ。

古森 ちょっと話を戻しますけど、実は、頭の中にずっと引っかかっています。よく考えてみると、商売の基礎としては、簿記もあれば中小企業診断士もあります。IT系の資格や試験も、けっこうありますね・・・。品揃えとしては、既にそういうものがたくさんあるわけです。

矢野 言われてみれば、そうですね。

古森 で、何が引っかかっているかというと、矢野さんが指摘された男女の傾向差との関係なのです。もしかしたら、世の中にある基礎知識習得ツールというのは、これまでの日本社会の既成観念を暗黙のうちに反映して、「男目線」で作られているってことはないですかね。矢野さんの話を伺っていて、ふと思ったのです。

矢野 男目線?

古森 勉強のさせ方も知識の試し方も、デジタル基調で作られているように思うのです。まず概論があって各論。考え方や決め事をある程度暗記して、やがてそれらを応用して高次元の問題解決に挑むという流れは、多かれ少なかれ色々な資格・試験等の中に流れているように思います。でもこれ、アナログ性向が強いといわれる平均的女性脳にとっては、「つまんない」やり方なんじゃないですか?

矢野 なるほど! いや、実は私、先日弊社の管理職スタッフに、「矢野さんは男脳だから、言ってることが社内に伝わらないんですよ」とバッサリ斬られました。けれど、本当に思い当たるんです。「どうして理解してもらえないのかな?」と。日本語は通じているが、本質が理解されない、わかりあえないもどかしさは、確かにずっとあって、とても考えさせられているところだったんです。

古森 例えば、簿記の勉強も、誰かが起業するところから始まるストーリー仕立てになっていて、感情移入をしながら決まりごとも学ぶような仕掛けになっていたら?女性脳の反応は、違うかもしれません。男性脳はデジタル性向が強いということですから、規範を真正面から受けて、無味乾燥でもそれに挑むことが出来る。しかし、女性脳からすると、それはとてもつまらない勉強になるのでは・・・。

矢野 ありえますね。面白いヒントをもらったような気がします。そうした工夫は、たとえば女子大や、うちのような女性が多い会社の今後のあり方論にも参考になりますね。。女性が多い組織では、ひとつ指示を出すにしても、しっかりとした説明を求められます。彼女たちは、指示に関して「納得」したがっているのですね。

古森 直感や感覚に優れた女性脳が納得するためには、何か手繰るストーリーが必要なのかもしれません。

矢野 皆、いろいろな話をしたがりますよ。本題だけでなく、その周辺情報を含めて。こうなると、組織としては緊急事態に向いていないとも言えますけど・・・。何か言ったからといって、サッとは動けない。一方、男性の場合は、瞬間的に指示命令系統が落ちているような印象です。女性組織は、そのようには落ちて行かない。とにかく、根気よく説明して説明して、やっと分かってもらう感じ。1回や2回の説明では、したことにはならない、というのも実感しますし。

古森 ははぁ、まさに男女脳の傾向差を表すような話ですね。

矢野 実は今、まず自分のすぐ下にいる人に説明して、納得してもらって、その人から組織全体に広がるように情報の流れを変えようとしているところです。昔は私からすべて発信していましたが、最良のやり方ではなかったように思います。女性9割の組織では、中間層がとことん納得して、同じ意識レベルまですりあわせしておかないと、下は動かないんですね。「矢野さん(社長)が言ってるから」みたいになると、自分の頭で考えなくなり、完全アウトです。同じことをやるにしても、納得感やストーリー性を感じられるようにしたほうが良いのかなと思います。

古森 商売や経営にはデジタルな面も必要ですが、教育のあり方や勉強の進め方、あるいは組織内コミュニケーションという視点では、「ストーリー性」というのも重要な要素になりそうですね。

矢野 ベーシックなものがたくさん世の中にあるのに、それに興味を示さない女性が多いというのは、そういう理由もあるのかもしれませんね。だとすると、ちょっとさかのぼりすぎかもしれませんが、キッザニアなどは良い機会になっていくかもしれない・・・。

古森 作られた空間であっても、まず体験的に商売や経営という世界を感じさせて、それを学びのきっかけにしていくことが出来る。そういう意味では、子供たちの教育において非常に示唆に富んだ試みになっていくかもしれません。これまでとは違った形で視界が開けていく女性も、増えていくかもしれませんね。


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