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第14回  株式会社カフェグローブ・ドット・コム 代表取締役社長 矢野 貴久子 さん (4/4)
「ゆとり世代」のデビューにどう向き合うか
矢野 話は変わりますが、いわゆる「ゆとり世代」が、そろそろ社会人になり始めますね。戦々恐々としている経営者も多いという話を聞きます。ある大学関係者の話では、「ゆとり世代の子達は覇気がなく、社会に出すことに躊躇を覚える」という声もあるとか。自分の意思が非常に希薄なんだそうです。

古森 自分の意思が薄れるのは、もう10年前くらいから始まっているので、ゆとり教育が直接影響しているかどうかは分かりません。ただ、個々の世代がそれぞれの育った世相を反映するという面は、必ずありますね。いわゆるゆとり世代が育った時代には、世の中を信じられなくなるようなニュースもたくさん飛び交いました。子供達が拠り所のない精神状態のまま大人になっても、仕方ないように思います。

矢野 本当に、目を背けたくなるようなニュースが多かったですね。

古森 世相の影響だとすると、「なぜお前に意思がないのか」と責めても仕方がない。「意思を持ちましょう」という話から、始めるしかないと思いますね。実際にないものはないので、それに怒っていても仕方がない。

矢野 なるほど。

古森 私が「ゆとり世代」と一緒に仕事をするとしたら、最初にまず人生の話をするだろうと思います。それでマニュアル的な質問を受けたら、ちゃんとそれに答えつつ、「でも、いつも答えがあるとは限らないので、自分でも考えようね」みたいな話をするつもりです。

矢野 世相で出来上がったものを、攻撃しても良くはならないということですね。

古森 もちろん、甘やかすのとは違いますよ。「ここから先は、自分の意思がないと生きられないよ」というのを、遅ればせながらでも教えないといけないということです。企業という場の中で、親の肩代わりのような教育が必要な時代になってきたということでしょう。

何かを「言い切る」ことの価値
矢野 ところで私、教育といえば6年前からデジタルハリウッドの本科や大学院で教えているのですが、ここでも色々と考えることがあります。

古森 何かこう、教える側のスタンスについての問題意識のようなものですか?

矢野 例えば、アーティストとして能力があっても、それを活かす人がいたり、売り込むべき顧客をわかっている人がいたり、そういうものがないとアーティストの才能も生かされないわけですね。

古森 ええ、分かります。

矢野 だからデジハリでも、例えば「CGに強い」とかいうだけでは、不十分であるという認識になってきています。「広く深い」強みを持つジェネラリストが必要ではないかと。ITのそれぞれの専門分野に加えて、プロデューサー的な感覚を持った人材の育成ですね。最近ではそれを意図した講座運営を始めています。企業側でもそういった人材の不足が問題になっていますし、私自身も、今後採用をする場合には、育成方針として言い切るべきかなと思っています。

古森 言い切るということは、本当に大事ですね。何かを言い切れば、「ならば私は違う」という人も出てくる。教育機関も、「うちは、こういう人材を育てます」というスタンスをとって人を募れば、そういう人が濃く集まってくるでしょう。ちなみにこれ、経営でもまったく同じだと思います。「うちの会社がどういう人を理想としているか」を、明確に示したほうが良いと思います。

矢野 「こうだ」というのを、会社のポリシーとして掲げる必要があるということですね。例えば、「うちは何事にもチャレンジする会社だから、こうだ」とか。

古森 人材育成には、重視する遺伝子を明らかにして臨む必要があると思います。偉大な企業は多くの場合、理念体系の中で独自の遺伝子を定義していますよね。

矢野 そういう話になると、女性は色々と反応が出てくるように思います。男性よりも、より正直に出てくるでしょうね。例えば、「個々人の価値観に沿った人事を行います」というのさえ、ひとつの手かもしれません。個人の持つ、自然なものを活かすという発想で。あるいは、「人間同士の好き嫌いで決めるのよ」などと明言された方が、スッキリする場合もあったりして。

古森 軸になるものの是非論よりも、謳ったことに「嘘をつかない」ことが大事だと思います。例えば、「好き嫌いで決める」と言ったのに、実際は「業績がどうのこうの」という数字を持ち出してしまうとか。あるいは、「成果で見る」と言ったのに、実際は「好き嫌い」で決めているとか。そういうのは、すべからくダメですね。遺伝子の複写エラーは、生体では癌になります。

矢野 本当にその通りですね。何かどうしても変えなくてはいけない理由があって、当初決めた軸から変わっていくにしても、その理由をしっかり説明して、納得してもらうことが重要なんですよね。

古森 一方で、根本的な軸に賭けたら、細かいことに口を出さないという覚悟も必要な気がしています。忙しい夜に、経営者が「じゃあ」といって消えると、現場の人は文句を言いながらも育っていきますね。「げ、この状態で帰るの?」という場面を経験した方が、実際は人が育ちます。不満にさえ意味があるわけです。

矢野 任せると、皆否応なしに自分で判断するので、仕事もなんとか回っていくようになる・・・。

古森 要は、経験には喜怒哀楽が必要で、嫌なモノを減らしすぎてはいけないのだと思います。うまくいっている企業の経営者は、往々にしてわがままじゃないですか。度を越すと組織は壊れますが、ノイズをある程度放っておくという微妙なところにも経営の鍵があるように思います。価値観や人材方針などの根幹を縛って、細部は雑音を承知で任せる。

矢野 確かに、ノイズを放っておく場面も必要だなと思います。「こういうことが嫌なんだろうな」と分かってしまうことがあり、これまでは、その都度手を出してきました。女性同士なので、余計に分かってしまうこともあるわけです。でも今は、なるべく任せるようにしてきていて、ハラハラしながらも見守る場面が増えてきました。そういった面では、女性の多い会社の課題みたいなものは、少しずつクリアしてきていまして、これからが成長路線なのだと思っています。

古森 仕事で火を噴いた経験というのも、本当に重要だと思います。もちろん、火が吹きすぎると会社が倒れますので、任せる方にも目利きや度量が必要ですが・・・。あ、そろそろ時間ですが、今日は本当に色々な話をさせて頂きましたね。男女の違いに始まりましたが、最終的には企業も人も「何か軸を持つことが大事」というあたりに収斂していきますかね。

[対談終]

~ 対談後記 ~
カフェグローブ、矢野さん・・・となると、会話は「女性」の話に自然と入っていきます。全人類の半数を占める女性に関して、生物学的な傾向差を越えて一律の枠をはめるのは困難です。だからといって、自分の見解を示すことを躊躇するのもまた、不自然です。矢野さんは、ご自身の経験してきた世界をもとに、独自の「女性」観をお持ちです。また、単なる現状認識ではなく、「だから、こうしたらいいのでは」という建設的で暖かい視座をお持ちです。

世に言うダイバーシティ論議に通ずる話ですが、ダイバーシティへの見解は、それこそ多様性があってしかるべきでしょう。対談は、楽しく漂流しつつ「何か軸を持つことが大事」というあたりに漂着しました。矢野さんもまた、自分の軸を持った経営者です。感じたことや信じることを素直に言葉に出来る人というのは、男女を問わず素晴らしいな・・・と改めて思いました。

矢野さん、本当に有難うございました。

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