第22回 株式会社日本総合研究所
調査部 ビジネス戦略研究センター所長 主席研究員 山田 久さん (1/4)
C-Suite Talk Live、今回の対談は 株式会社日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター所長 主席研究員 山田 久 さんにご登場頂きます。
山田さんは、1987年に京都大学経済学部をご卒業され、同年、当時の住友銀行(現、三井住友銀行)に入行されました。1991年に(社)日本経済研究センターへ出向の後、1993年には(株)日本総合研究所調査部出向。1998年に同主任研究員、2003年に経済研究センター所長、2005年にマクロ経済研究センター所長、そして2007年より現職です。この間、2003年には法政大学大学院修士課程(経済学)を修了しておられます。 研究・専門分野はマクロ経済分析、経済政策、労働経済で、特に新しい労働市場のグランドデザイン、グローバル化の中での地域活性化等の分野での研究・情報発信活動に注力しておられます。各種レポートの執筆、書籍の出版、講演など、そのご活躍範囲は多岐にわたります。今、最もアクティブなエコノミストのお一人です。 それでいて、お人柄は誠実さにあふれ、とてもフランクな方です。小職は、さる講演の場で一緒に演者をつとめさせて頂く幸運に恵まれたのが縁で、爾後交流させて頂いております。独自の角度をつけて現実を見つめ、厳しい表現ながら誠意のある提言を行う山田さん。今日は、どのようなお話を伺えるのでしょうか。昼下がりの一番町を訪ねました。
問題から抜け出せない日本
古森 本日は、お忙しいところを有難うございます。この対談は、何かヒントになることを世に伝えたいという思いで続けております。日頃から、山田さんのメディアでのコメントや書籍、あるいは講演などに接して、私自身も色々と考えさせられることがあります。今日は是非刺激的なお話を聞かせて下さい。
山田 こちらこそ宜しくお願いします。 古森 今、私が特に気になっておりますのは、いうなれば社会の中での労働の所在の問題です。労働というものが、時代とともに付加価値を生む分野に流れていかなければ、社会全体としてはサステイナブルではありませんね。景気にもようやく下げ止まり感が出てきた昨今、山田さんはこの点をどう見ておられますか。 ![]() 古森 短期的な補助策と本質的な産業・労働政策とは、峻別して考える必要があるということですね。 山田 ところが、日本ではどうしてもその両者のバランスが壊れてしまいがちです。組織というのは、当初は何らかの目的があって生まれる場合が多いのですが、いったん出来ると組織自体の論理が芽生えてきます。特に日本の場合、構成員の雇用維持が組織の実質的な目的の一つになっていきます。 古森 そうはいっても、今般の世界同時不況の中では、雇用を維持できない状況に陥った組織も多数見られました。 山田 確かにそうなのですが、これを機に何か抜本的なところにまで手が打たれたかといえば疑問です。足元の危機対応をしつつ、その間に長期的な手を打とうという話までは出るのですが、景気が回復し始めるとすぐ元に戻ってしまいます。 古森 喉もと過ぎれば・・・ですか。 山田 今の局面はまさにそうです。2008年秋に起きたショックは「百年に一度」と言われましたが、その後中国の状況は良いし、米国も思ったほど崩れていません。欧州は予断を許さない状況ですが、何とか持ちこたえるとみています。これでまた危機感が緩んでしまい、抜本的な手を打てずに終わるのではないかと懸念しています。 古森 社会全体で見て、労働が付加価値の高い分野にシフトしていく機会をつかめずに次のサイクルに入る・・・。そういうイメージですか。 山田 ここ20年ほどの景気循環の中で、日本経済の体力はどんどん落ちているのです。なぜ体力が落ちるかというと、端的には生産性の高い分野が減る一方で、生産性が低い分野が残っていくからなのです。だから、全体として生産性が引っ張られて、総和としての体力が落ちるという流れです。エコノミスト的に言えば。 古森 社会全体が、ずっと同種の問題から抜けられないでいると。 山田 付加価値をそれほど生まなくなったものに労働を投入し続けていけば、当然そうなります。世の中の変化に応じて事業を変え、個々人は新たなスキルを身につけて、全体として産業構造を高い生産性の方向に持っていかなければ。ところが、日本では長きにわたってそのような流れが起きていないのです。 古森 個別の企業を見ている立場としては、まさに個別の考え方や事情があるように思います。雇用維持を重視しつつ業績を伸ばしている企業もあります。ただ、社会全体として見た場合、雇用に関する日本の風土が産業構造転換を難しくしている面もあるということですね。なかなか難しいジレンマですね。
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