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コラム441 「お金を稼ぐ」ということの意味 - 「報酬」を通じた社会との関わりあい
更新日 2009年12月11日 執筆: 寺田 弘志(組織・人事変革コンサルティング)
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「お金を稼ぐことを甘く見ちゃ、いかん」 私がまだ大学生だったころの父の言葉である。大学生になって最初の夏休みに、実家が営む焼酎工場で洗瓶(回収してきた一升瓶を洗浄して再び焼酎を詰められる状態にする)のアルバイトをした。瓶を洗う工程は機械化されており、高温の蒸気を吹き付けて殺菌しながら瓶を洗うという仕組みである。
その機械に回収してきた瓶をセットするのが人の役目になるのだが、回収してきた瓶にはいろいろな飲み残し(お酒だけでなく、醤油の場合もある)があり、それが高温の蒸気に蒸されてなんともいえない嫌な臭いが鼻を突く。夏場の蒸し暑さと相まって辛い仕事であった。それでいて時給はもう一方のバイトである塾講師の1/4程度。私は父に噛み付いた。 この話ももう四半世紀も前のことなので、残念ながらうろ覚えである。ただ、こんな主旨であった。
当時の私はそんな話を聞いても納得してはいなかったに違いない。ただ、父はそんな私の不満げな表情を見てもそれ以上はなにも言わなかった。 私たちは自分の給料の多寡を判断する際に、「どれだけ自分は苦労したか」「どれだけ時間を使ったか」という"自分"視点で判断しがちである。確かにそれはイメージしやすい。経済や社会の構造が複雑化し、自分の仕事が具体的にどんな役にたっているのかが見えにくくなっている。そのような状況下では費やした時間や労力を基準にすることはある意味では公正で納得感が得られやすいものなのかもしれない。 しかし、私たちが手にする「報酬」は、その仕事に誰かが「価値」を認めてくれるからであって、それ以上でもそれ以下でもない。それはどんなに経済や社会の構造が変化しても変わることはないであろう。いや、世の中にモノやサービスがあふれかえる現状では、なおさら強く「価値」の高さを問われているのではないだろうか。 私たちの周りを見渡せば、海を隔てたすぐ近くで中国をはじめとしたアジアの新興諸国が急速に成長している。彼らは日本人の数分の1の報酬で実に勤勉に働く。今は比較的専門性の高くない仕事を任されているかもしれない。だが、将来彼らが成長して高度の専門性が要求される仕事でも同様の報酬水準で任せられるようになれば、間違いなく更に多くの仕事が海外に流れていくであろう。 一方、国内に目を転じてみれば、成長が鈍化した現状では世界における日本の地位は相対的に低下し、再びデフレスパイラルに転じるのではないかという懸念の声も聞かれる。モノやサービスの値段が下がって家計が助かると思いきや、私たちの仕事の「価値」がそれ以上に下がって雇用の確保さえままならない。 しかし、暗い話ばかりではない。自分の活躍の場を広く捉えなおしてみることで、さまざまなチャンスが生まれてきているのもまた事実である。定年で退職した日本語しかしゃべれない技術者に対して、「1千万円以上出すから、海外の工場で技術指導してほしい」という話も聞く。中国の富裕層が日本にやって来て、銀座や秋葉原でショッピングを楽しむという現象も、日本の小売業への高い信頼感や「おもてなし」の姿勢への好感度ゆえであろう。海外事業に派出され、現地法人の経営に携わるといった、より難易度の高い経験を積んだ若手が、国内に留まっていた同僚を追い抜いて出世している、という事例も少なくない。 「人間」という言葉は、「ひと」と「ひと」との間と書くように、私たちは他者との関わり合いの中で生きている。その「ひと」との間での営みの中から生み出される「報酬」も、他者との関わりの中で評価されるべきものであるはずだ。 厳しかった1年も終わりを告げ、新しい年を迎えようとしている。そんな中、今年1年の自分の仕事をたな卸しして、自らの「報酬」の意味を振り返るにはちょうどよい時期なのかもしれない。例えば自らにこんな問いかけをしてはどうだろうか。
自分が一生懸命取り組んだ仕事は、相手からも仲間からも感謝される価値のあるものであってほしい。本当にそう思う。 執筆者: 寺田 弘志 【執筆者プロフィールを見る】 (組織・人事変革コンサルティング) |
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