M&Aの組織・人事デューデリジェンス

組織・人事に関する観点で統合初期診断の上、組織・人事デューデリジェンスを実行します。買収契約書への組織・人事デューデリジェンス発見事項の反映や経営者リテンション(引き留め策)、経営者報酬・雇用条件レビューを実施します。また、高難度となるスタンドアロンイシューへの対応や円滑な統合に求められる組織・人事コミュニケーション、マネジメントとガバナンスの実態調査および新体制設計にも対応いたします。  

組織・人事統合の進め方

買収検討の初期段階において両社のフィット感を公開情報等から検討し、その後の組織・人事デューデリジェンスに役立てます。フィットがない、と判断される場合には、M&Aの構想自体を見直す可能性も考えられます。

組織・人事統合初期診断 ー 理解のポイント

What?

買収先選定段階、あるいはHRDD(組織・人事デューデリジェンス)開始前の段階で、買収先の組織風土などソフトな面に焦点を当てて、可能な範囲で効率的・効果的に調査を行い、買収後の統合(組織統合あるいは事業の統合運営)のフィット感を探ったり、統合に伴い予見される課題を洗い出したりするものです。

Why?

買収先・買い手の状況により、企業文化、経営者や社員の状況、人材マネジメントといったソフト面における両社のフィット感が買い手の経営層の関心事となります。また、買収先の成功要因がソフト面にあると考えられる場合は、その概要を買収検討初期段階で把握するニーズが生まれます。買収検討初期段階で両社のフィット感を考察しておくことで、将来の統合を見据えた場合の重要課題が想定できるため、より効果的かつ効率的なHRDDが可能になります。

How?
主としてデスクトップサーチにより、公開されている情報を収集・分析し、統合フィット診断報告書として、あるいはHRDD報告書の一部としてご報告します。

マーサーの具体的サービス

典型的には、以下の6項目に沿って情報収集・分析を行います。項目は、ニーズに応じて調整します。但し、公開情報によるため、収集できる情報には限りがある場合があります。

1. Leadership 

  • 経営チームの校正、構成員
  • 経営の考え方、価値観
  • 経営チームの経歴、実力など

2. Rewards & Recognition

  • 報酬、処遇の考え方
  • 報酬、処遇の水準
  • 評価の思想など

3. Work Force 

  • 組織・階層構造、人数、一人当たり生産性
  • 人材のフロー
  • 競争力の源泉 など

4. Performance Management & Engagement 

  • 評価の仕組み、プロセス
  • 社員のモチベーションの源泉
  • 会社に対する愛着のレベル など

5. Communication 

  • 専門担当部署
  • 内容、スタイル、頻度
  • 発信と受信の方法 など

6. Culture 

  • MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)
  • 行動スタイル、働き方
  • 職場環境 など

<M&A 人事コラム>

M&Aの成功要因として、各種調査でよくトップに挙げられるのは、どの国でも企業文化の統合であるといってよい。であるならば、買収前に双方の企業文化を診断し、組織統合がある場合はもとより、組織統合がない場合でも、事業の統合運営の難度がどのくらいであるのか探っておくべきであろう。

ところが多くのディールでは、買い手の交渉ポジションがよほど強くない限り、買収先の企業文化を診断しようにも、思ったように情報が出てこない。また、情報が出てきた場合でも、検討自体に大きなコストがかかってしまうと、検討自体が難しい。このようなことから、組織・人事デューデリジェンス開始前に実施可能で、しかもコスト面でも使いやすい統合初期診断手法が求められている。

相手が非協力的な場合は、相手に負荷をかけない診断方法(Non-Invasive Diagnosis)を採用するのが原則である。エンジニアリングの世界に「非破壊検査」と呼ばれるものがあるが、そんなイメージかもしれない。具体的には公開情報と、売り手やターゲットが自発的に出してきた情報を活用する。集められる情報には偏りがあるが、しかしそれでも、分析すればPMIで起こりそうなことは一定程度予見できる。そして発見事項を、ディールの促進要因と阻害要因の両方から評価するのである。

組織・人事デューデリジェンス

M&Aの実施に先立ち、買収対象(会社、事業)を組織・人事の観点から精査します。これにより、M&Aによって買い手が負うリスクと、手にするチャンスを明らかにします。

組織・人事デューデリジェンス ー 理解のポイント

What?

買収対象(会社、事業)を買収前に精査し、買収によって買い手が負うリスクと、手にするチャンスを明らかにします。買い手、売り手の合意のもと、組織・人事デューデリジェンスの範囲、プロセス、期間を定めて行います。

Why?

買収の可否判断や条件の設定を行うためだけでなく、買い手が株主等に対して負っている説明責任を果たすためにも、適切なデューデリジェンスが必要です。買収の成否は、買収時に想定していた目的を買収後に果たせるかどうかで決まるため、買収後の事業運営で生じる組織・人事面のリスクを事前に把握し、対策を練っておくことが必要です。デューデリジェンスの結果は、買収価格算定のバリュエーション、買収価格、買収契約に謳う権利義務(売り手の行う保証、買収確定(クロージング)の前提条件など)に活用されます。

How?

必要情報(定量情報、定性情報)を請求し、売り手がVDR (Virtual Data Room)に開示する情報を分析します。Q&Aやインタビューも可能な限り実施し、理解を深めます。判明事項と考察をまとめたデューデリジェンス報告書を作成し、報告・説明を行います。

マーサーの具体的サービス

  • 案件内容と売り手の状況に応じた情報請求リストの作成
  • 売り手とのQ&Aプロセスの管理・リクエストによる必要情報の最大限の収集施
  • 国情等を踏まえた情報分析と意味合い明確化、問題が重篤な場合の対策立案(買収価格や買収契約への反映を含む)

        - 年金債務などの人事関連債務およびリスクの評価

        - 現状人事制度の把握、買収後の買い手の変更自由度の確認

        - 人事責任者などの適切な経営メンバーへのインタビュー(買収先へのト ータルな理解を深め、重要な組織・人事課題を整理)

        - 人件費プロジェクションなど、バリュエーションに影響の大きい組織・人事関連項目(含む一時費用)の推計

  • 経営者の雇用条件レビュー、リテンションリスクの調査
  • 特定機能人材など、買収の眼目となっている人的資源の状況についての調査
  • 事業譲渡(カーブアウト)に伴うクロージング時の必要作業の洗い出し、体制・工数・所要期間の予備的検討
  • 買収先の組織風土、人材特性の把握と、PMIにおける意味合いの検討
  • 買収後の組織再編、人員削減のシナリオ検討、これに伴う人事関連コストのシミュレーション など

<M&A 人事コラム>

M&Aは「後悔先に立たず」の代表例である。値段の高いもの、リスクの高いものを買ってしまったら、あとで挽回するのは難しい。そこで、1) 買収対象には何が含まれるのか、2) それがどのくらいの価値があるのか、そして3) 買った後で面倒なことが起きないのか、の3点について、買う前にできるだけ調べる。この作業がデューデリジェンス(DD)と呼ばれるものである。

調べてもし問題があった場合は、対策の方向性もDDで検討する。つまり、買収価格や買収契約の内容(条件、保証など)に反映するか、買収後の施策に対策を織り込むか、それともディール自体を再考するか、といったことである。

時間と情報のない中で、いま何をどこまで調べるべきなのか、どうやったら売り手から欲しい情報が取れるのか、判明事項を買い手の意思決定にどう織り込むか。各国・各分野の標準慣行がわからなければ、データを見たところで何が異常なのもわからない。ディール固有の事情・制約下で、効果的にDDを実施するには、経験豊富な信頼できるアドバイサーとの協働が鍵となる。

買収契約書への組織・人事DD発見事項の反映

組織・人事デューデリジェンスにおける重要な発見事項を、リーガルアドバイザーと協働して買収契約書に反映し、M&Aのリスクを低減・回避します。

買収契約書への組織・人事デューデリジェンス発見事項反映 ー 理解のポイント

What?

DD(デューデリジェンス)における重要な発見事項を、買い手(クライアント)の意向に沿う形で、リーガルアドバイザーと協働しながら買収契約書に反映します。但し、マーサ ーはリーガルアドバイザーではありませんので、契約書に反映すべき内容の報告とご説明のみを行います。契約書文言への落とし込みと契約全体の最終確認は、リーガルアドバイザーにご依頼願います。

Why?

DDで発見した重要な問題については、売り手によって適切な対応がなされることをクロージングの条件としたり、買収価格の調整条項を設けるなどして、買い手のリスクを回避したり低減する必要があります。また、DDで買い手が必要とする情報のすべてが開示されるわけではないので、買収を決断するたに、未開示情報に起因するリスクの回避を担保することも大切です。

How?

契約書に反映すべき内容をその背景と共に報告し、その内容をリーガルアドバイザーが契約書文言へと落とし込むためのサポートを行います。但し、マーサーはリーガルアドバイザーではないため、契約書への反映方法、最終的な記載文言、などはリーガルアドバイザーの責任で行われる必要がございます。

マーサーの具体的サービス

  • 契約書に反映すべき内容の報告とご説明(DDレポートにて行います)
  • リーガルアドバイザー、ファイナンシャルアドバイザー(FA)などへの補足説明
  • 売り手が提示する買収契約書ドラフト中に、標準的な組織・人事の慣行と異なる記述など、買い手が留意すべき内容が盛り込まれていないかについての確認 など

キーとなる経営者リテンション(引き留め策)

買収先の現経営者について、買い手がM&A後も辞めずに残ってほしいと考える場合には、買い手の意に反して経営者が「悪いが辞める」と言い出さないように、積極的に対策を講じる必要があります。

経営者リテンション(引き留め策)- 理解のポイント

What?

買収後の事業運営方針、買収先の現経営者の適性などを勘案し、現経営陣を一定期間続投させることが必要と判断した場合、これら経営者が様々な事情によって、買い手の意に反して退職してしまうリスクのコントロールを試みます。

Why?

会社や事業の買収直後にそれら組織の経営を担える人材を買い手で準備することができず、対象会社の経営者が継続してくれない場合にたちまち困ってしまうのが、多くのクロスボーダーM&Aの実情であると思われます。現経営者側には、M&Aに伴って多額の現金を手にしたり、他社から声がかかったりするなど、退職の大きな誘因があるケースも珍しくありません。M&Aという経営環境の激変下では、残って欲しいという買い手の意思を適切に伝えないと、自分から転職先を探し始める恐れもあります。

How?

HRDD(組織・人事デューデリジェンス)の一環として、経営者の雇用関係、報酬・処遇関係のドキュメントを分析し、市場慣行との相対感を持ったうえで、さまざまな状況におかれた経営者の本心を探るリテンションインタビューを行います。買い手から提示するリテンションプランと買収後の新報酬案を策定し、効果的なコミュニケーションの方法をデザインして、経営者との合意形成を支援します。ニーズに応じて、経営者に対してオファー内容の説明や、オファーミーティングへの同席もいたします。

マーサーの具体的サービス

  • サイニングまでに重点的に調査・対応する経営者の特定
  • 経営者の雇用契約書、適用されている報酬プラン(制度)のレビュー:特に役割、雇用期間、セベランス、解雇通知予告期間、退職予告期間、基本給、賞与(STI/STIP)、中長期インセンティブ(LTI/LTIP)、経営者ベネフィット、トランザクションボーナス、買収時における取り扱い(CiC/CoC)
  • 現経営者報酬の市場ベンチマーキング)
  • 現地経営者報酬専門家によるリテンションインタビュー
  • リテンションプランおよび買収後の経営者報酬案の策定
  • タームシートの作成、経営者への提示、合意形成サポート(買い手との協働)
  • オファーレター、雇用契約書等の作成サポート(法務アドバイザーとの協働)
  • PtoPミーティング*設計への助言

    * PtoPミーティング: Principal to Principalミーティングの略。Agent(代理)ではない、トップ同士のミーティングのこと

<M&A 人事コラム>

日本企業が海外企業を買収する際、一定期間、現経営者の続投を考えることが多い。それは、日本企業にとって新しい経営者を手当てして送り込むことが簡単なことではなく、経営者の交代(流出)で足元の業績が悪化するリスクもあるからである。残ってほしい経営者に「悪いが、辞める」と言わせないための施策がリテンション(引き留め)策である。

効果的なリテンション策には、今回の買収が買い手の事業戦略のどの部分にどうあてはまるのか、それは買収先の経営者や従業員にとってどのようなチャンスを意味するのか、という事業家魂に火をつけるような話がまず必要である。これに加えて、市場慣行を踏まえたフェアで魅力的な報酬の設計が欠かせない。さらに、経営者の置かれた状況に鑑み、リテンションボーナスの提供も検討される。

鍵となるのは、経営者の本音を引き出すリテンションインタビューである。一口に経営者といってもさまざまなタイプがいて、個人の事情も異なる。買収後の買い手のシナリオを踏まえ、本人へのコミュニケーションの組み立てを吟味する。一方、いくら手を尽くしても遂にリテンションが叶わないケースもあるので、常に「プランB(現経営陣が退職した場合の次善策)」の準備を怠るべきでない。

経営者報酬・雇用条件レビュー

買収先の現経営者のリテンションあるいは交代を検討するには、報酬を含む各人の現雇用条件の把握・分析が欠かせません。日本の経営者のものと比べ、海外経営者の雇用条件はより複雑で、個人別に決められている面が強く、専門家による完全な解明が必要です。

経営者報酬・雇用条件レビュー ー 理解のポイント

What?

買収先の現経営者の報酬および雇用条件を確認し、マーケットプラクティスと比較して、客観的にどの程度厚遇されているのか、個人別に明らかにします。併せて、CiC/CoC条項*の内容と、その財務的なインパクトも把握します。

* CiC/CoC: Change in Control/Change of Controlの略。雇用契約書において、CiC /CoC条項として、買収(経営権の移動)に伴い何らか特別の権利や手当が発生することが定められていることがある

Why?

買収先の現経営者のリテンションあるいは交代に関して、人事・退職リスクを適正に評価し、買い手の意向に沿った合意可能な案を策定するには、現契約内容の把握・分析が欠かせません。また、CiC/CoCによるクロージング時の払い出し金額は、通常、買収価格に反映しますので、適正な買収価格の算定のためにも、しっかりと把握することが必要です。

How?

HRDD(組織・人事デューデリジェンス)の一環として、契約書やプランドキュメント(規定)を請求します。内容のセンシティビティにより、他の資料同様にVDR**に開示されることも、別ルートで内密に提供されることもあります。また、売り手が情報の開示に応じない場合や、文書がない場合には、現実的な代替方法によって情報を収集し、買い手の目的ができるだけ達成されるように努めます。

** VDR: Virtual Data Roomの略。Web上で電子化された関連資料を開示する場所

マーサーの具体的サービス

  • 情報請求リストの作成
  • 情報取得の方法やタイミング、情報取得を促進するための売り手へのコミュニケーションや働きかけ方の検討・実施
  • 提供された情報の実務的理解・整理(全体および個人別)
  • 契約解釈上の疑問点については、買い手法務アドバイザーから見解を取得
  • マーケットベンチマーク(市場相場や通常みられるプラクティスとの比較)の実施
  • CiC/CoCによる取扱いの確認

     - LTIの清算方法

     - セベランスが支払われる条件と金額

  • トランザクションボーナスの有無・内容の確認
  • 会社と個人の特約の有無の確認 など

 

<M&A 人事コラム>

海外企業の経営者の雇用や報酬の条件は、個人別に決まっている場合も多い。個人別というのは、「経営者の上位ランクと下位ランクでは扱いが違う」ということを越えた、個人の採用の経緯や交渉の結果である。それは、報酬の水準にも表れるし、セベランスの有無や支払条件の違い、雇用期間や解雇・退職の事前通知期間にも表れる。よって、経営者人事規定を入手してそれを理解するだけでは、現状を適切に把握することはできないのである。

内部昇格してくる経営者であれば、既存制度に沿った処遇を行いやすい。しかし、経営者を外部から採用したり、買収先の現経営者をリテインしたりする場合は、実際の問題として、その人の現条件を踏まえないわけにはいかない。時に、会社と個人の間で特別な処遇条件が取り交わされるのも、このような会社と個人の交渉の結果なのである。

従って、組織・人事デューデリジェンスでは、会社と経営者個人の決まりごとを個人別に全て開示するよう情報請求をした上で、出されたものが全てであることの念押しが必要となる。分析にあたっては、報酬や雇用関係についての専門性はもとより、人によって内容が全く違う可能性があるという理解のもと、特別な注意深さが要求されるのである。

高難度となるスタンドアロンイシューへの対応

一部のM&Aスキームにおいては、従業員との雇用関係、年金やベネフィット、人事サービス機能は売り手に帰属したままで、事業の買収によって買い手がこれらを自動的に入手することはできません。このため、原則としてクロージング日までに、すべての買収先拠点において、従業員の転籍、人事制度の立ち上げ、人事機能の整備を完了する必要があります。

スタンドアロンイシューへの対応 ー 理解のポイント

What?

事業譲渡(アセットディール、カーブアウト)による事業の買収においては、株式の買収によって会社を買収する場合と異なり、買収契約のサイニング後、買収契約の効力が発生し、新組織が立ち上がるクロージングまでの期間に、買い手が買収した事業を受け入れる準備を整える必要があります。対象国が多い場合はもとより、たとえ1か国の場合でも多くの工数を要する場合が多く、プロジェクト体制をしっかり敷いて期日までに作業を間に合わせる必要があります。

Why?

ディールの建付け上、従業員の雇用関係、従業員の加入する年金やベネフィット、従業員にサービス提供を行う給与支払いなどのHR機能は、すべて売り手に帰属しており、事業の買収によってこれらを自動的に入手することはできません。このため、受け入れ拠点を準備した上で、従業員には転籍をオファーし、ベネフィットや人事機能を立ち上げて、クロージング以降の操業を円滑に継続する必要があります。

How?

転籍してくる社員の受け入れ拠点を定めることが、すべての起点となります。買い手の既存拠点が活用できる場合には、ベネフィットや人事機能は新設せず、既存のものが活用できる可能性があります。法務アドバイザーと緊密に連携の上、拠点毎の法的な受け入れスキームを確認し、転籍対象従業員への提示条件を検討して、オファーを行います。各地における人事の専門性に加え、高度なプロジェクトマネジメント能力が求められます。

マーサーの具体的サービス

  • クロージング実現に必要な必要作業の洗い出し(グローバルおよび国別・拠点別)、クロージング推進体制の整備、プロジェクトマネジメント
  • 買収先の報酬・年金・ベネフィット・人事機能のレビュー、追加情報請求、Q&A
  • 買い手の既存拠点で受け入れる場合には、買い手の上記項目との対比分析(Side-by-side analysis)の実施および受け入れに伴う必要措置の検討
  • 拠点別のオファー等の内容とプロセスの決定(各拠点に適用される法的要件を踏まえて実施)
  • 転籍対象人材の確定の支援
  • 買収後の事業運営に必要だが転籍対象となっていない人材の洗い出しと、対応策の検討
  • 個人別のオファー等の準備と実施(支援が必要な場合)
  • 各拠点における年金、ベネフィットの立ち上げ支援(支援が必要な場合)
  • 転籍時に必要となる、年金、ベネフィットなどの説明資料の作成/説明会の実施
  • TSA1などのオプションの検討
  • 買い手のHR/PMO2および売り手/買収先のグローバルHRとの緊密な連携、方針の明確化と問題の解決
  • 買い手および売り手/買収先のローカルHRとの緊密な連携、実務上必要な詳細の確認・詰め(必要に応じで法務アドバイザー他と連携) など

1) TSA: Transition Service Agreementの略。売り手・買い手間で締結する、事業分離直後の移行期間のサービス提供契約のこと

2) PMO: Project Management Officeの略。PMIにおいて、組織・人事、ビジネス、システム等、同時並行的に流れる複数のプロジェクトを円滑に遂行させる機能を担う事務局のこと

<M&A 人事コラム>

組織・人事のスタンドアロンイシューの難しさは、人がらみ故に気を使う多くのタスクを、急いでクロージングに間に合わせようとするところに起因する。クロージングまでに十分な期間を取ればよさそうだが、クロージング日の決定は、金融市況や事業の状況、IR、税制、規制、売り手の都合など、ディール全体の判断で決めるものなので、多くのケースでは「申し訳ないがそう決まったので、この期間で間に合わせて欲しい」ということになる。

一方、ディールに関与しているメンバーが、組織・人事のスタンドアロンイシューの重要性を十分に認識していなかったり、あるいは認識していても、他に山ほど先決問題があって検討にかかれない状況もある。また、オークションであったり、事業上の交渉が難航するような案件の場合、組織・人事のスタンドアロンイシューがあることが分かっていても、サイニングに至る目処が立つまで、検討を始められないこともある。更には、売り手が十分な情報を出してこないこともある。

特別に小規模な案件は別として、組織・人事のスタンドアロンイシューは、その範囲の広さ、内容の細かさ・複雑さ(多国にまたがる場合は一段と困難)、時間のなさにおいて、大きな問題となる可能性が高い。特に、M&Aが多国にまたがる場合は、言語の問題も乗り越えて、多義に渡る多くの作業を期限内に終わらせる必要があるので、適切な社外リソースの活用も重要となる。

円滑な統合に求められる組織・人事コミュニケーション

買収先従業員の不安を軽減し、期待を醸成して、M&A成功に向けての組織のモメンタム(勢い)を生み出すことが重要です。誰が、何を、誰に、どのように、どのような方法で伝えるかを、各国の受け手の状況に配慮しつつも、全体整合をとって計画し、体制を整えてしっかりと実行する必要があります。

組織・人事コミュニケーション ー 理解のポイント

What?

買収先の従業員に対して、合意したM&Aの趣旨、買い手の概要、今後の会社の方向性・体制、従業員にとって従来と変わることと変わらないこと、といった重要事項を整理し、最適な方法・ツールを用いて、タイムリー、かつ効果的・効率的にコミュニケーションを行います。

Why?

通常、対外発表まで秘密裏に進行するM&Aの性質上、買収先の従業員は、突然多くのことを知らされることになります。買収後に従業員のパフォーマンスが落ちることがないように、不安を軽減し、今後に対する期待を醸成することが重要です。双方の経営が社員にいつ、何を、どうやって伝えるべきかを決め、適切に実施することが必要です。

How?

プロセスマネジメントの巧拙が、成功のカギを握ります。コミュニケーションの専門チームあるいはワークストリームを立ちあげ、他のモジュールと連携して、マスタープランを常時アップデートしていきます。実施段階に入ると、買収先と買い手との緊密な連携が不可欠になります。体制の弱い恐れのある拠点は事前に洗い出し、対策を考える必要があります。

マーサーの具体的サービス

  • 買収先従業員に伝えるメッセージの整理、推敲
  • プロセスコントロールおよび関係者の連携確保:グローバルおよびローカル
  • グローバルメッセージのローカル展開:言語対応、承認プロセス、ロジスティクスなど
  • マネージャー手引き、FAQの作成
  • 一般従業員向けビデオ、ウェブサイト、ウェルカムパッケージの作成
  • タウンホールミーティングの設計、実施支援
  • HRコミュニケーションに関するヘルプデスク運営、オンサイト常駐サポートサービス など

<M&A 人事コラム>

経営者が何を言ったかではなくて、従業員が実際どう思っているかがすべてである("Perception is reality”)。コミュニケーションは、その内容・タイミングだけでなく、トーンやスタイル、あるいは使用するツールや場の設定(印刷物、メール、ウェブサイト、ボイスメッセージ、ミーティング、ビデオ、職場上長からの伝達など)も重要である。

また、M&Aの局面においてこれらの要素をきちんとコントロールするには、体制整備も重要になってくる。特に、買収先が多くの国で操業しているときが大変である。買い手の中の確認・許可のプロセスも、よく整理しないと効率が悪いし、多くの仕掛事項を漏らさずに、同時並行的にモニターし続けるのも、思うほど簡単ではない。相手にとって気持ちよく督促する、という技術も必要になってくる。

M&Aでは、サイニング、クロージング、100日プラン策定後、とステージが進むごとに具体的に伝えるべき事項とコミュニケーションの相手方が増えていく。逆に、まだ社員に伝えられる状態にない事項については、いつごろ発表できるのかをきちんと伝えて、先を照らすことが原則になる。これも「不安の軽減」と「期待の醸成」の一つの形である。決まっていないことについて予想や想像で誰かが言及すると、後で修正が利かなくなるリスクを負うので、厳にコミュニケーションを統制すべきである

マネジメントとガバナンスの実態調査および新体制設計

買収先の経営体制(マネジメント)と、その経営に対する株主からのコントロール体制(ガバナンス)の両方をクロージングまでに設計します。これに買収先のトップの支持をとりつけ、買収後の運営体制を確立します。買収後のマネジメント体制の検討には、買い手が常駐派遣するExecutiveの検討も含みます。

マネジメントとガバナンスの実態調査および新体制設計 ー 理解のポイント

What?

買収先の経営体制(マネジメント)と、その経営に対する株主からのコントロール体制(ガバナンス)の両方をクロージングまでに設計します。これに買収先のトップの支持をとりつけ、買収後の事業・組織・人事の体制を確立します。買収後のマネジメント体制の検討には、買い手が常駐派遣するExecutiveの検討も含みます。

Why?

株主の貴重な経営資源を有効活用するには、優れた経営者をリテインしてマネジメントを行わせ、株主がその経営者に対してガバナンスを利かせる2重構造をとることが、基本的な対応策となります。一方で、品質、ブランド管理など「重要な細部」については、株主が深く関与しないと所期の効果が上がらず、リスクも高くなる恐れがあります。PMI (Post Merger Integration)を円滑に推進するためには、クロージングまでに、マネジメントとガバナンスの新体制を明確に定めることが必要です。

How?

買収先のマネジメントとガバナンスの現状を把握し、課題を洗い出します。その上で、新しいマネジメントとガバナンスの体制および機構を、各人の期待役割や権限とともに明確化します。経営者の交代や追加を伴う場合には、そのタイミングや移行措置も検討します。

マーサーの具体的サービス

  • 買収先のマネジメント・ガバナンス現状調査:個人の期待役割、権限・適用ルール、レポートライン、会議体の全体構造、主要会議議事録・会議資料レビュー、主要メンバーインタビュー
  • 新しい経営チームの設計:個人の期待役割、権限・適用ルール、レポートライン、人選・想定任期・交代イメージ、報酬・処遇上の措置
  • 新しい会議体設計:会議体の全体構造、各会議体の管掌・出席者・開催頻度
  • 買収先トップとのコミュニケーション支援
  • 100日プラン(買収後の運営の根幹となる計画、経営者の目標設定・評価の拠り所)の検討方法・体制の設計と、当事者のバイ・イン支援 など

<M&A 人事コラム>

買収後のマネジメントとガバナンスの体制は、買収先トップの支持を取り付けた上で、クロージングまでに定めることが望まれる。取り敢えず現状を踏襲して様子を見る、必要があればあとで修正する、という方法は株主の権限をもってすれば可能だが、前倒しで検討していれば避けられた無駄が生じるだけでなく、その時になってなぜ変更するのか説明できずに、買収先トップのモチベーションを損ねるリスクもある。

もちろん、株主の権限を活用して、買収先トップの意向と関係なく、物事を決定することもできる。しかしその方法では、リテインした買収先トップの力を引き出すことは難しいし、場合によっては辞めてしまうかもしれない。買収先トップは、「自分の配下の経営陣は自分が選ぶ、その扱いも自分で交渉して決める」という感覚を強く持っていて、頭越しに配下に対する意思決定が行われることを嫌うことが多い。

もっとも、重要事項について買収先トップと、どう議論を尽くしても折り合えなければ、もはや株主としては辞めてもらって後任を据えるしかない。旗幟鮮明な経営を目指す以上、このような状況に陥ってしまうケースも生じるであろう。とすれば、あまり慎重に様子を見るよりも、早い段階でお互いのフィットを見極め、並行して交代要員の目途を付けておくことによって、買い手は自らのリスクを下げる必要がある。

クロスボーダーM&A・グローバル経営支援

ディールの開始前からPMIまで一貫して、M&A案件を国内含めグローバルに支援します。一方、ピンポイントで、必要な時に必要な支援をご提供することもできます。また、買収のみならず、JV設立、売却、組織再編・人事統合・再編・リストラなども支援します。さらには、グローバル人事オペレーションの高度化、DB年金問題への対応、買収先CEOの報酬決定・交代など、グローバル経営の諸問題についても、幅広く支援します。
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