Ryoko Ogasawara

マーサージャパン小笠原亮子

広い心で、壁のない世界へ。

その先に光があるから。

何かを変えるには、いくつもの「壁」を越える必要があります。私が担当している福利厚生の見直しや改革は、会社にとってはとても手間のかかる業務です。やむを得ない事情が無い限り、後回しにされてしまう傾向もあります。その理由の一つは、これまで守ってきた日本の社会における画一的な福利厚生のあり方が本当に今の時代に合っているかを考え見直した上で、変わらなければならないからです。手間をかけて、あえて慣れている現状を変えることは確かに面倒なこと。現状維持では福利厚生の位置づけが現代の社員にとって報酬に対する不満も少なく居心地の良い会社なら、「あれば良し」程度の存在になってしまう。ただ、今は時代が違います。

少子高齢化が深刻化する中、労働力の確保は重要な課題です。年齢、性別、国籍の壁が減って労働力も多様化し、社員の働くことへの意識も変化してきました。時代にあった福利厚生制度は会社と社員の双方にとって、より大きな影響を与えるポテンシャルがある。時代の変化にしっかり対応し、より多くの社員が満足して働ける組織へと変革する。そのサポートをするためには、最初の「壁」を突破する必要があります。でも、無理に崩す必要はありません。何度も打ち合わせを繰り返し、粘り強くヒアリングすることで得られた信頼こそが、互いの手を取り合い、成すことの土台になると思うからです。壁は自然と、薄くなって溶けていくから。

「壁」は、そもそも慣れっこなんです。物心がついた頃から、私はいつもちょっとはみ出していた存在で。父が天文物理学者なので、幼少期はマウナケア観測所があるハワイ島で育ち、高校時代はアルマ観測所のある南米のチリで過ごしました。高校卒業後は、米国の大学に入り、そこからスコットランドとフランスに留学。ボストンで1年仕事をして日本の大学院に進みましたが、祖国といえども違和感だらけ。両親ともに日本人ですから、当然、家では日本語です。日本についても多少の理解はあったはずですが、感覚的には外国人。各地を転々としながら、どこにいてもそれなりの壁があるということを何度も繰り返し経験してきました。国や地域、人種や性差、職業を問わず、顔を合わせた瞬間に"全員一致”は、現実的にはありえないと学んできました。

守るべきものはたくさんあります

でも広い心と視野できっと道は見つかる

そう信じています

心が帰る場所は、大自然。

とはいえ、仕事はチームワークが要。ハワイ島のイルカの群れもそうです。魚を獲る時は結束して一気に攻めますが、遊ぶ時もみんなで思う存分に遊ぶ。強み、弱み、好きな仕事、苦手でも得意な仕事など、群れを成すメンバーの個性はそれぞれですから、互いに尊重して譲り合うこともあります。一頭だけ何か違う動きをすると、周りがそれをすぐに察知して対処します。無理をせず、少しでもみんながハッピーという状態が長く続けば良いんです。本能的に争わない。その点は私も同感です。不快なことや納得できないことがあっても、すぐに相手と対立するのではなく、まず観察して道筋が見えてくるのを待ちます。なるべく角が立たないように、丸く収めようとする意識がどこかにあるはずですから、だいたいのことは話せば分かる。だから、自分から心を開いて話す覚悟が大事なんです。人にも、自分にも、嘘はつきたくない。誠実でありたい。それは意外と難しいことですが、人は本来、悪い生き物ではないはず。誰にでもプライドや懐疑心があって、そのテリトリーに土足で踏み込もうとすれば、ギクシャクするのは当然。それは誰でもそうでしょう? 守るべきものはたくさんあります。でも、広い心と視野を持てば、きっと道はみつかる。そう信じています。
常にプラス思考でいられる毎日が望ましいとは思うのですが、そうでない時は強制終了することもあります。人と会わない。携帯を見ない。お庭で静かに本を読んだり公園を散歩したり、のんびり過ごします。そんな日常のささやかな時間をとても大切にしています。私の旅はハワイやチリのおおらかな大自然と、穏やかな人々に囲まれて過ごした幸せな日々から始まりました。雨が降っても傘もささずに野山を駆け回っていた少女が、いつも自分の中にいるんです。言葉がおぼつかなくても、温かく迎えられる喜びを経験として知っている。だから、心の動きには逆らわない。その方が生きやすいですから。人や物事に振り回され過ぎない、鈍感力も自分の持ち味なのかも。"天然"といわれる所以ですね。
Open your mind.