Dialogue

コンサルタント対談No.1 (鈴木秀太郎 / 西田有佳)

対談参加者

鈴木 秀太郎

Mercer Thailandでの勤務を経験

国内大手コンサルティング会社、Mercer (Japan)、Mercer (Thailand)を経て現職。業績改善のためのオペレーション改革の実行支援、事業戦略実行に向けた従業員意識改革支援、事業承継に伴う人事制度構築支援、事業戦略の変更に伴う人事制度再構築支援、企業統合に伴うマネジメント体制改革支援、日系企業の海外拠点の人材マネジメント改革支援等のプロジェクト経験を有する。クライアント業界は自動車製造、自動車部品製造、電子部品製造、流通小売、消費財、不動産、建設、物流、医療など多岐に渡る。

西田 有佳

NewsPicks社への出向を経験

日系企業を中心に人事制度設計・導入支援、海外子会社統合に伴う人事制度統合支援、役員報酬制度設計、役割等級見直し実施支援、従業員サーベイ実施支援、ダウンサイジング等、組織・人事領域における様々なプロジェクトに参画。


自らの意思で道を切り拓いてゆく!

鈴木:私はマーサージャパンでの勤務を経て、マーサータイランドで丸3年間、在タイ日系企業様のコンサルティングをしていました。もともと海外勤務を考えていたところに、ちょうどマーサータイランドで日本人コンサルタントの募集があり、手を挙げたんです。西田さんはベンチャー企業に半年間、出向されていたんですよね?

西田:はい。NewsPicks社(経済オンラインメディアのベンチャー企業)で、事業のリーダーをサポートしながら組織課題を解決する「HRBP」という業務に従事していました。出向のきっかけは、私も鈴木さんと同じく、自らの意志。事業会社でどのように意思決定がされ、どのように組織が動いていくのかを、リアルに体験してみたかったんです。海外の環境に飛び込んでいった鈴木さんは、刺激も多かったのではないですか?

鈴木:タイに着いて最初にインパクトを受けたのは、マーサータイランドのグローバル化が想像以上に進んでいたことでした。社内でのコミュニケーションは、たとえタイ人同士であっても、すべて英語で行われるんです。いい刺激となったのは、多国のオフィスと連携する機会が増えたこと。マーサーシンガポールやマーサーUKとプロジェクトを行うことがありました。また、マーサータイランドにはマーサーインドのコンサルタントが駐在することもあり、色々な国の同僚達とコミュニケーションする機会に恵まれました。

西田:マーサージャパンの経験も活かしながら違う環境で仕事をしてみると、気づきや発見がありますよね。すごく共感できます! 私がNewsPicks社での勤務を通じて特に印象に残っているのは、カルチャーやバリューを非常に重視していたこと。「一人一人が自立して強みを生かし、オープンにコミュニケーションすることで強いチームをつくっていこう」というカルチャーがあり、それを徹底するための様々な仕組みや施策がありました。普段クライアントの組織をコンサルタントとしての立場で見ることが多いですが、このように組織を内側から見て組織マネジメントのあり方を肌身で感じられたのは貴重な経験でした。

鈴木:私の場合、異国の同僚と仕事をしたことが、異文化理解という点でとてもよい経験になりました。実は、タイで働き始めた当初、タイ人の同僚としょっちゅう喧嘩をしていて……。彼らと私とでは「こうあるべき」という視点が違っているので、それも当然なんですよね。でも、「マーサーがお客様のビジネスに貢献するためにはこれをしなければいけない」ということは、どんなに対立があっても根気強く説明し続けました。同時に、歴史や気候など彼らが生きている背景を勉強してからは、「だからこういう反応をするのかもしれない、であればこのようにコミュニケーションした方がいいだろう」と納得できたので、ぐっと歩み寄れたように思います。

異なる環境で得た大きなもの

西田:人とのコミュニケーションは、海外勤務の大変なところでもあり、面白さでもあるのかもしれませんね。仕事のスタイルやコミュニケーション方法が違うからこそ得られる醍醐味や成長もありそうです。

鈴木:日本では人事部の方々を経由して経営層と議論することが多いですが、海外では、拠点長などクライアントのビジネスサイドから直に相談を受けるのが一般的な点は驚きました。また、日本にいた頃は、コンサルタントとしてのプロジェクトデリバリーが仕事の中心でしたが、タイではプロジェクトデリバリーにとどまらず、マーケティング、営業、ソリューション開発、日系企業支援チームのケイパビリティ向上やマーサーの他拠点支援等が求められ、業務が多岐にわたりました。さらに、マーサータイランドのオフィスがあるバンコクから往復4~6時間ほどかかる工業団地に拠点を持たれているご支援先(製造業)に出向くのが週に3~4日。移動時間が多く、なかなかまとまった時間を確保することが難しかったです。タイトなスケジュールの中で業務を遂行する力は磨かれたと思います。

西田:海外勤務はいろんな意味で逞しくなれそうですね(笑)。仕事以外の、プライベートはいかがでしたか?

鈴木:地元の人しか知らないお店にもよく連れて行ってもらったなあ。お酒の文化が違うのも面白かったですよ。バーでジントニックを頼むと、日本のようにロンググラスに氷とライムが入ったものは出てはこない。ジンは香りを楽しむお酒だから、ワイングラスで出てくるんです。トニックウォーターの種類も多くて驚きました。それも発見(笑)。彼らとは今でも連絡をとりあっています。各国のマーサーの同僚たちともネットワークを築けたので、これからの仕事に生かされるだろうと思います。

西田:世界が広がりますよね。事業会社、かつ先進的な取り組みをしているベンチャー企業に出向したことで、組織マネジメントについての考えの幅や深さ、想像力が増したように思います。また、マーサーにいながらにして違う環境の中で経験のない業務にチャレンジし、自分の得意・不得意や志向性をあらためて考えることができたのは、個人的にもすごくいい時間だったと思っています。新卒でマーサーに入社した私にとっては、とても貴重な機会でした。

鈴木:世界が広がったし、考え方も変わりました。日本で仕事をしていた頃は、日本での最適化・日本で通用する人材マネジメント=世界のスタンダードだと思っていたんです。でも、まったくそうではなかった。また、タイで働いてみて、日本と海外拠点では、違うアプローチが必要だということを痛感しました。

経験を活かした未来へのチャレンジ

西田:そうしたタイでの気づきや発見を通じて、日本での仕事に取り入れたいと思ったことはありますか? 私は海外勤務がないので、とても興味があります。

鈴木:ひとつは、制度面ですね。人材流動性が高いタイでは、「外部から人を調達する」という前提で会社が成り立っているので、労働市場の報酬水準を細かく検証し反映しています。一方、在タイ日系企業は、外部から人材の採用を検討しても、どうしても内部公平性の担保を優先してしまい、結局は今後の事業展開に必要な人材を確保することが難しい自社の水準でのみ報酬を検討しているところが少なくありませんでした。また、外部競争力の問題でせっかく育てたマネージャー層が他国の企業に引き抜かれることも起きていました。日本も、「1社でキャリアを積んでいく」という考え方から、「いろいろな会社を経験してキャリアを積んでいく」という考え方が一般化しつつありますし、特にデジタル領域などでは、外部労働市場をうまく活用しなければならない状況になってきているで、タイのような考え方を根付かせていくことも必要だと思っています。また、国内だけの最適化ではなく、海外拠点でも通用するような拡張性のある提案をして、クライアントのビジネスに貢献していきたいと思っています。

西田:私は出向の経験を活かして、今後はスタートアップ業界などの支援に携われたら良いなと思っています。今日鈴木さんのお話を伺って今後は海外勤務にもとても興味が湧いたので、それも視野に入れつつ、まずは一つ一つのプロジェクトの中でしっかり実力をつけて伸ばしていきたいですね。鈴木さんは、ご自身の夢を叶えるために、なにか取り組まれていることはありますか?

鈴木:欧米の書物を読んでいます。欧米の書物は事例がふんだんにあるのがいい。とくに、著者である大学教授は企業と一緒に研究・調査をしていることが多く、メッセージにデータの裏付けがあり、具体的な事例が本に落とし込まれているんです。これは諸外国でも通用するプラクティスでもあるので、積極的に読んでいます。また、マーサーの他国のオフィスの同僚たちとも定期的にコミュニケーションをしており、各地域のタレントマネジメントの動向やプラクティスについて情報交換しています。

恵まれた成長環境

西田:自分が希望すれば意志に応じて道が拓けるマーサーの環境は、とても恵まれていますよね。もちろん、そのためには自己研鑽も必要ですが、成長しながら道を切り拓きたいという方には、すごくよい環境が用意されていると思います。女性視点でいえば、子育てをしながら活躍している女性コンサルタントのロールモデルもたくさんいます。組織の文化としても、性別を気にすることなく「自分が何をやりたいか」というところを基点にして考えられると思います。

鈴木:確かに、マーサーはグローバルCEOもリージョナルCEOも女性なので、西田さんにとってのロールモデルも多いでしょうね。私が他社からマーサージャパンに転職したのは、組織・人事コンサルタントのリーディングカンパニーであり、優秀な人材が集まっている環境で自分を磨きたいと思ったからなんです。

西田:加えて、社員同士のいい関係性も築けていると思います。また、早いうちから活躍の場を広げられるのは大きな魅力ですね。プロジェクトチームが3~4人と小規模なものが多く、ジュニアレベルでも自分の意志と実力しだいで裁量の大きな仕事を任せてもらえます。ところで、鈴木さんは、また機会があれば海外勤務されたいと思いますか?

鈴木:したいですね。機会があればどこでもいいので。

西田:どこでもですか?(笑)。

鈴木:はい! 外国で生活の基盤を築く過程も面白いし、仕事も両立させるのは、なかなかハードだけど楽しいものなんです。なにより、それが今、仕事に大いに役立っていますから!