OCIOの本質:運用委託というよりは専門性とガバナンスの向上

年金運用におけるガバナンスの重要性はこれまでも指摘されているが、直近では2017年11月に厚生労働省より確定給付企業年金制度に関連する省令等の公布が行われ、2018年4月1日からは「運用の基本方針及び政策的資産構成割合の策定義務化」と「確定給付企業年金に係る資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインの見直し」について適用が開始された。いずれも年金運用においては極めて大切な指針であり、ガバナンスの観点からも真摯な取り組みが必要であるのは勿論の事、何よりその重要性が増してきており、注目されている。

しかしながら、ガバナンスへの取り組みには課題があることが以前から指摘されている。多くの年金運用関係者にとって、ガバナンスの重要性は理解できる一方、年金運用の運用主体や関係者に係る人的・経済的な負担が懸念され、理想とギャップの板挟みになっているのが現状だ。

実は、OICOを先進的に導入してきた欧米の機関投資家も同様の課題に直面してきた。欧米の機関投資家は以下5つのガバナンス・モデルを活用し、ガバナンスの策定と実行を進めてきた。

(A)インハウスモデル
資産運用に関するツールの活用を許容するものの、原則、全てのプロセスは自ら取り組むモデル。機関投資家が十分なリソースを確保できれば最も柔軟性の高いモデルだが、当然、多額の投資と組織管理が必要となるため負担が大きい。また、資産運用のリスクだけではなく、インハウスチームの組織運営次第では人材を失うリスクが伴う。

(B)投資助言モデル
機関投資家が目標の設定から運用機関の調査までの上流~中流の工程について、戦略上の助言や調査で資産運用コンサルタントを活用するモデル。資産運用コンサルタントを活用することで機関投資家の不足するリソースの補完だけではなく、高い専門性として、特に、資産運用に関する知見、或いは、運用機関の調査では高い水準が期待できる。しかし、最先端、または、高度で複雑性の高い資産運用戦略の設計ができたとしても、あくまでプランに留まるため、導入時の実現可能性の点で問題が生じる場合もあり、「絵に描いた餅」となるリスクが伴う。

(C)マネージャープラットフォームモデル
機関投資家が運用機関の調査、運用商品の選定、そして運用商品の導入までについて、外部の運用機関と協業、または、一部委託をするものの、意思決定は自ら行うモデル。主に中流の工程を外部のプロバイダにアウトソースするモデルなので、リソースをより上流工程に集中させることができるが、下流工程での負担が残るため、追加的な対策が求められる場合が多いモデルでもある

(D)部分的アウトソースモデル
機関投資家が目標の設定と運用戦略の設計における意思決定は行うものの、以降のプロセスは自らの裁量の委譲に対する許容度や予算に応じて、プロセスごとに自ら意思決定する、または、外部のプロバイダにアウトソースするモデル。機関投資家は自らフォーカスしたいプロセスにリソースを集中できるので非常に柔軟性が高く、少ないリソースでもガバナンスを確立しやすいモデルと言えるが、リバランスとキャッシュフロー管理のような、単一の外部のプロバイダへのアウトソースが困難なプロセスでは引き続き機関投資家のリソースが必要となる。

(E)完全アウトソースモデル
機関投資家が目標の設定についてのみを外部のプロバイダと協議しながら意思決定するものの、その他は全てアウトソースするモデル(このモデルにおいて、外部のプロバイダはOCIO:Outsourced Chief Investment Officer、または、Delegated Managerと呼ばれる)。機関投資家は資産運用委員会や投資委員会といったような重要な意思決定のみに注力し、外部のプロバイダを実質的にインハウスチームのように活用するので、一般的にはコストが高くなる傾向があるが、総合的なコストでは外部のプロバイダのスケールメリットがあることから、インハウスモデルや部分的アウトソースモデルよりもコスト抑制に繋がるケースもある。


辰己 有

執筆者: 辰己 有 (たつみ ゆたか)
資産運用コンサルティング
コンサルタント