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働き方改革で考え直すべき福利厚生制度とは?

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働き方改革で考え直すべき福利厚生制度とは?
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日本の福利厚生制度は、正規従業員を対象に、「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」といった三種の神器に基づいて長年にわたって構築されてきた。その特徴は、「会社が一生従業員の面倒を見てくれる、画一的な制度」であり、主なメニューは社宅・住宅補助、退職金、資産形成支援、慶弔見舞金、保養所、レジャー、災害見舞金等の保険といった、「衣食住遊」をカバーする総花的な福利厚生制度であった。これらは、まだ日本型経営が十分に機能していた時代において、会社が優秀な人材を採用する目的、さらには企業内労働組合の要求により、従業員の満足度を高める目的で採用、維持されたものだが、他の会社よりも優秀な人材を採用するという人事の最大目的の一つを達成するうえでは非常に有効であった。

その後、バブル崩壊を経て、非正規従業員の割合が増え、雇用者数における正規従業員と非正規従業員が、直近では正規が約3423万人、非正規が約2036万人となり、比率ではおよそ6対4と非正規従業員が増えてきた。しかしながら、そうした中でも、福利厚生制度は、個々の会社による違いはあるものの、概ね大きな変更もなく、一種の正規従業員への既得権としてそのまま存続してきたといえよう。例外なのは退職金制度が、確定給付型企業年金から確定拠出型企業年金へと、自己責任のもと、従業員が一定の選択ができる制度に移行した会社が増えたことや、カフェテリアプランなど、従業員が自分のニーズでメニューを選択できる制度の導入が進んだことであろうか。

そして今、ワークライフ・バランス、ダイバーシティに続く、2019年からの働き方改革の施行である。

「同一労働同一賃金」では、非正規従業員の福利厚生改善が必要となり、正規従業員のみに与えてきた福利厚生制度の維持が、会社が負担するコストの面から非常に厳しくなってくると見込まれる。

一方、働き方改革は「長時間労働の是正」をはじめ、従業員がより柔軟な働き方が可能となる職場環境を整備することを新たに求めている。会社はダイバーシティをさらに発展させ、育児支援や介護支援のための勤務体制サポートだけではなく、通常の従業員にも在宅勤務を導入するなど、少子高齢化の人材難の時代において、従業員に選ばれる会社となるための一大変革が必要となるだろう。

そうした変革の時代に合った福利厚生制度とは、どのようなものであろうか?従来の画一的な衣食住遊中心のものから、多様なニーズ、多様な採用確保に向けた「自分で自由に選択できる」ものに変わっていくのではないだろうか。

2018年にマーサーが44か国、約7600名(うち取締役50人、経営幹部800人、人事担当1800人、従業員約5000人)を対象に行ったグローバル人材動向調査において、福利厚生に関する興味深い調査がある。

「組織で自分が成長していると感じている従業員」は、「職場は健康と福利厚生に重点を置いていると認識している」割合が77%と、成長していると感じていない従業員に比べて3倍高くなっていた。

他にも「キャリア形成の権限が与えられていると感じている」割合は75%で、そうでない従業員の10倍高いほか、「公正かつ競争力のある給与が支払われていると感じている」割合の81%も、そうでない従業員の5倍高いなどとなっているが、従業員が会社に求めているものに、福利厚生が一定のウエイトを占めていることは興味深い。その一方で、同調査で「今年の人材管理の優先事項は健康と福利厚生」と答えた経営層等は14%となっており、企業側の認識とのギャップが大きいことが伺えた。

日本の調査に限定しても、厚生労働省が2015年に実施した「転職者実態調査」において、現在の勤め先を選んだ理由として「技能・能力が活かせる」「仕事内容・職種が満足」に続いて3番目に「賃金以外の条件がよい」が来るなど、福利厚生の位置づけは従業員にとって小さくないという結果が出ている。

今後、「働き方改革」ならびに「時代に合った福利厚生制度」について、福利厚生制度コンサルタントとしての視点から考察を加えていきたい。

柳沼 芳恵(やぎぬま よしえ)

執筆者: 柳沼 芳恵 (やぎぬま よしえ)
保健・福利厚生コンサルティング Mercer Marsh Benefits プリンシパル

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