Plan for Unplanned: リモートワークでイノベーションを生み続けるために

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年初以来の新型コロナウイルス感染拡大により、我々の働き方は大きな影響を受けた。その代表的な例が、リモートワークの導入と活用であろう。

満員電車の密を避け、また学校や幼稚園、保育園等の休校休園に対応するため、従業員が自宅から勤務することは、そのメリット・デメリット含め、もはや我々の新しい働き方に欠かせないものになった。無論、自宅では対応できない業務も多々あることは承知の上だが、今まで「無理だ」と思っていたことが、実際にリモートでもやってみると案外できてしまった、という経験をされた方も多いのではないだろうか。

さてこのリモートワーク、そのメリット・デメリットは様々論じられているところではあるが、先日のプロフェッショナル対談第4回で、スクエア・エニックス・ホールディングスの松田社長が述べられていたことに思わず膝を打った。まさに私が危惧している、リモートワークの大きなデメリットとして、「イノベーションが生まれにくい」ということを指摘されていた。

イノベーティブな業種というと、シリコンバレー等のIT企業が思い付くが、それらの企業でオフィスに卓球台やビリヤード台、洒落たカフェテリアで無料の食事などを提供するのはよく知られている。これを優秀な人材の獲得、または引き止めるための施策として捉える向きもあるがそれはあくまで一面のみであり、本来の趣旨は、「自宅よりも居心地を良くし、オフィスに来て勤務してもらう」ということである。イノベーションを生み出す工夫、いわば従業員が仕事以外の時間を共に過ごすことで、逆に仕事に生かせるアイデアを生み出す仕掛けとして、そのような福利厚生制度を提供しているのである。そのため、例えばグーグルなどがコロナ以前は原則自宅勤務を認めていなかった、というのは有名な話である。

イノベーションは創造的破壊とも呼ばれるように、既存の枠組みから外れた発想をするため、既存の枠組みの中で予定(Plan)して生み出すことが難しい。逆にいうと、予期しない(Unplanned)ところから新しい発想が生まれるのだとすると、予期しない行動をより多くとってもらうことを推進・奨励することは可能(Plan for Unplanned)になる。上記のような福利厚生制度は、そのような仕掛けだとも捉えられるだろう。

ポスト・コロナの環境がどのようなものになるのか、誰にも明確には分からないものの、一旦リモートワークを経験してしまった従業員たちの大部分は、コロナ後も継続したいと考えているようだ(日本経済新聞「テレワーク実施率、緊急事態解除後に低下 民間調べ」(2020年6月11日)参照)。

だが、おそらく多くの方が経験されたと思われるが、リモートワークで会議等を設定する場合、明らかに業務目的の会議で目の前の仕事についてのみ協議されるため、前述の松田社長の言葉を借りると、「遊びが無い」ことを感じられたのではないだろうか。まさに目の前のタスクについてのみPlanして会議を行っているため、Unplannedの要素が極端に少ないと思わざるを得ない。

今回のコロナ禍は明らかにゲーム・チェンジャーである。ダーウィンの言を待たずとも、ポスト・コロナの環境にいち早く適応した企業のみ生き残りが可能となるだろう。我々マーサーも含め、知的財産が事業の大部分を占める企業などにおいては、今後どのようにリモート環境下で「Unplanned」の時間を意図的に作っていくかが、生き残りをかけた取り組みになっていくように思われてならない。

シリコンバレーで企業が従業員にオフィスに出勤することを、ある意味強いている見返りとして自宅以上の居心地を提供している、ということを上述した。日本においても、会社が交通費を支給するのは、「会社に物理的に出社して働く」ことが暗黙の了解であり、それを社員に強いることで生じる不利益に対する補填とも考えられる。だとすれば、今後リモートワークが一般的になるイコール、そのような不文律が無くなり、交通費の支給自体も徐々に無くなっていく可能性もあるのではないだろうか。

今まで当たり前、と思っていたことがこれから急激に変わっていく予感がする。

執筆者:北野 信太郎(きたの しんたろう)

グローバルクライアントマネージャー プリンシパル 英国アクチュアリー会正会員

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