2020年のM&A市場の振り返りと2021年の展望

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日本におけるM&A市場の概観(2019-2020)

 

2020年はCOVID-19の世界的な感染拡大に翻弄された1年であった。多くの企業で、新規のM&A案件が延期あるいは凍結になったケースもあったと耳にする。

この機会に、2020年のM&A市場(日本)を振り返ってみたい。

M&Aの件数は対2019年で、微減となっている。2019年:4,088件、2020年:3,730件(図1参照)。一方で、M&Aの投資金額は対2019年で、17.2%の大幅減少となった。2019年:17兆8,358億円、2020年:14兆7,741億円(図2参照)。

 

図1:M&A件数の推移

出典:https://www.marr.jp/genre/graphdemiru 

 

 

図2:M&A金額の推移

出典:https://www.marr.jp/genre/graphdemiru 

 

 

内訳は以下の通りである。

In-In(日本企業による日本企業のM&A)の件数は、2019年の3,000件、2020年の2,944件と、ほぼ横ばいとなっている一方で、金額は2019年の6兆479億円から、2020年の3兆3,915億円へ43.9%減少した。件数は2019年と同様であったが、大規模なIn-InのM&Aが比較的に少なかったといえる。最も影響を受けたのはIn-Out(日本企業の海外企業のM&A)である。過去最多だった2019年の826件から2020年は557件で、32.6%減少した。2020年の金額は4兆4,344億円で、前年の10兆3,500億円を大きく下回り、57.2%の大幅減少となった。

逆にOut-In(海外企業による日本企業のM&A)については、2020年は229件と2019年の262件から33件、12.6%減少しているが、金額は6兆9482億円で、2019年の1兆4379億円から4.8倍に拡大している。日本企業の立場からすると、グローバル展開における日本企業の事業売却戦略の動きが本格化しつつある、といえる。

 

2020年後半以降、M&Aを取り巻く変化の兆し

このように、COVID-19の世界的な感染拡大により、M&A市場にも大きな影響が及んだが、2020年後半になり、潮目が変わりつつある。Private Equity FundはグローバルレベルでM&Aに積極的に投資を進めており、特に欧米ではその傾向が顕著となっている。また、事業会社においても引き続きM&Aには積極的であり、事業再編・売却を目的としたIn-Inを進める動きもみられる。In-OutのクロスボーダーM&Aについては、タイミングをうかがっている最中であり、今後のワクチン浸透と、渡航制限の緩和を様子見という状況にある。

2021年1月現在、日本だけでなく、欧米においてもCOVID-19の感染拡大の最中ではあるが、一部の事業会社ではポスト・コロナを見据えてアクションを起こしつつある。では、2021年におけるM&Aの展望はどのようなものになるだろうか。

 

2021年、M&Aの展望と成長可能性

M&Aは成長戦略のために実施してきたものの、COVID-19以前、日本企業は、買収対象会社をStand Aloneでマネージする傾向が強かった。買収後も旧経営陣に経営を任せ、間接統治を行なうスタイルが多くみられた。しかし、買収先会社が当初の事業計画通りに業績を達成していないという話をよく耳にする。さらには、買収先会社が巨大な赤字を出す等、連結決算に多大な影響を与えるケースも散見されるようになった。

日本企業では、そもそも「事業を売る」ことに対する抵抗感が強い。当該事業を立て直すべく、現地でのビジネスに精通している買収先会社経営陣の意見を受け入れ、さらなる追加投資を行うケースもあった。しかし、買収後、事業投資計画を一度も達成していない会社が、V字回復を実現するケースはほとんどみられないのが現実だ。

ポスト・コロナ時代においては、これまで先送りしてきた課題に対して正面から向き合わないと、生き残ることができない。欧米のグローバル企業に比べて、日本企業は子会社の数が圧倒的に多い。また買収した会社はスタンドアローンで子会社になるため、M&Aの件数が増えれば、子会社が増え続ける状況にある。会社数が多い分、間接部門の人員も増え、経営効率は悪くなる。グループ内の子会社再編、事業再編、経営基盤の統合(シェアードサービス化含む)、コスト削減はこれからの日本企業にとって大きな課題となるといえる。

また、当初の事業計画通りの業績を達成できていない買収先会社については、抜本的な改革が不可欠である。経営者の交代を含め、買収先企業の経営を変革するだけでなく、既存事業との統合または事業の売却等まで踏み込んだ対策が不可欠となる。その意味で、2021年は、将来の事業の成長戦略実現に向けた、構造改革の年として位置づけられるのではないかと考える。

問題の先送りをせずに、COVID-19を一つの契機・好機と捉え、抜本的な改革・変革をやり切るかどうかが、今後の日本企業の成長の可否を分ける鍵となるだろう。

執筆者: 鈴木 康司 (すずき こうじ)

マルチナショナルクライアントセグメント代表 M&Aアドバイザリーサービス部門代表

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