人生100年時代、年金2000万円不足と言われる時代の年金の方向性

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老後資産2,000万円不足-
金融庁の報告書「高齢社会における資産形成・管理」は、様々な批判を浴びた。平均的な老後の生活費に対する所得の不足額が人生100年時代においては2,000万円程度にのぼるという。社員の漠然とした不安が増す中、退職金・企業年金制度運営において企業に求められることは何であろうか。

 

従来の終身雇用を前提とした雇用環境下では、退職金・企業年金は主として老後の所得保障、功労報償といった意味合いで提供されていた。安定的な人的資源の確保を目指す企業において、長期勤続者の支給率を有利にし、また中途退職者には減額率を設け、いわゆるS字の給付カーブとすることがベストプラクティスとして考えられ、定年まで勤め上げた社員は国の年金に加え、企業年金により老後の所得が保障されていたわけである。しかし、社会経済情勢の変化による終身雇用の事実上の崩壊や運用環境の悪化等により、DC(確定拠出年金)への移行等が起こり、老後の資産形成に係る責任が企業の手から社員ひとりひとりに転嫁されてきている。

 

寿命の伸長に加え、我が国の高年齢期における就業意欲は高いことで知られている。また、70歳までの雇用機会確保のための法令整備を進めていくことが骨太の方針でも盛り込まれ、また実際に「定年再雇用」から「定年延長」や「定年廃止」に向けて舵を切っている企業もみられる。定年が70歳あるいは定年廃止のような社会では、ある特定年齢で会社都合によって退職するのではなく、社員自らが自身の資産寿命を想定される寿命と照らし合わせ退職するタイミングを決める要素が強くなっていくであろう。そのため社員が老後資産を十分に形成していない場合はそれだけ退職年齢が後倒しになり、会社としての新陳代謝が損なわれるリスクを孕んでいる。

実際、定年のない米国において、マネジメント層の考えるDCにおけるリスクのひとつは、社員が十分に掛金の積立て、効果的な運用を行わず十分な資産形成ができないことによる退職時期の後倒し・従業員の高齢化の進展である。

 

我が国においても、老後の資産形成に係る責任が個人へと転嫁しつつあるが、今後定年延長・廃止が一般的となった場合、企業は社員自身が考え資産形成を行うことができるようサポートする責務を果たさないとビジネス上のリスクを負うこととなる。企業年金におけるマネジメント層の関心事はDB(確定給付企業年金)の財務リスクであったが、今後、DCにおける企業の責任がますますクローズアップされていくであろう。

DCは個人の責任のもと社員自らが運用指図を行うが、周知のとおり元本確保型の商品の選択率が高く、効果的・効率的な運営を行うことができていない。特に運用商品、投資教育等のサービス等が社員の運用成果に与える影響は大きく、それらを定期的に点検していくことはまず実施すべき企業の役割であろう(法令でも努力義務として定められている事項)。DBや退職一時金においても単に給付するだけのプロバイダーにならず、(DBでは法令義務の)制度の内容、予測給付額の周知に加え、ライフプランニング等の社員の自助努力を支援する体制を構築していくことを推奨したい。

執筆者:永島 武偉(ながしま ぶい)

年金コンサルティング部門 コンサルティングアクチュアリー

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