海外勤務者へのストレスチェックとメンタルヘルス支援 - コンサルタントコラム 650 | マーサージャパン

コンサルタントコラム 650

海外勤務者へのストレスチェックとメンタルヘルス支援

執筆者: 花田 誠治(はなだ せいじ)

プロダクト・ソリューションズ
コンサルタント

既に何等かの形で海外勤務者のメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業は多いかと思いますが、2014年6月19日の衆議院本会議において「労働安全衛生法を一部改正する法律案(通称:ストレスチェック義務化法案)」が可決・成立し、従業員50人以上の事業体に勤務する社員への一年に一度のストレスチェック実施が義務化されたことをうけ、日本国内の労働安全衛生法が適用されない海外勤務者に対する各企業の今後の対応が注目されています。

国内勤務者への対応についてはマーサーの保健・福利厚生コンサルティング部門がメイン担当ですのでここでは触れませんが、海外勤務者に対して国内勤務者と同様にストレスチェックを行う場合、海外勤務者が医師との面接を希望した場合の対応(交通費、宿泊費などの取扱い)や面接指導の結果に基づく措置などに関する整備等が必要となるでしょう。

海外勤務者が抱えるストレス

多くの日系企業では、ビジネスの更なるグローバル化とマネジメントのローカル化推進という経営課題のもと、海外勤務者の生活勤務環境が多様化・複雑化しており、そのメンタルヘルス支援にも様々な工夫が求められています。

海外勤務者のストレス要因例
  • 異なる言語でのコミュニケーション
  • 気候・風土、生活環境への順応
  • 文化、生活習慣への適応
  • 安全の確保
  • 現地社員のマネジメント
  • 本社からの指示への対応
  • 出張者の応対
  • 帯同家族のサポート
  • 現地での邦人社会との関わり

 

海外勤務時のストレスは、国内勤務時とは性質が異なるため、慣れないストレスに翻弄され続け、本来の自分の力を発揮できずに赴任期間を終える海外勤務者も少なくありません。弊社が過去に行った調査においても、任期終了前に帰国を余儀なくされるなどのいわゆる「駐在の不首尾」の主な原因として、「駐在員の任地への不適合」を挙げた企業が最も多くなっています。

「駐在の不首尾」の原因 ≪日本企業137社・複数回答≫



ストレスへの対処

海外勤務者が感じるストレスは、勤務地や勤務先の事業規模、さらに赴任形態など個々人の状況により千差万別ですが、ストレスを溜め込まないためのセルフケアを行い、時として歯を食いしばりながら現地の生活勤務環境に適応するための努力を続けているということは、ほぼ共通していると思われます。

ストレスに対するセルフケア例
  • 物の見方を変える
  • 旅行
  • 他者との交流
  • 現地文化に触れる
  • 家族との時間
  • 運動
  • 食事
  • 仕事のやり方を工夫する
参考資料:「日本企業中国駐在員のメンタルヘルス」一般財団法人 海外法人医療基金

一例ですが、筆者が前職でフィリピンに駐在していた際は、現地の芸能界に関する情報を収集し、現地社員とのコミュニケーションに活用していました。現地の芸能人同士が付き合っているだの別れただのを知ったところで、仕事上のストレスは無くなりませんでしたが、現地社員と共通の話題があることで、自身の指示を彼らが理解し易い方法で伝達することが可能になり、イライラが減ったことを憶えています。

本社・人事部門ができること

海外勤務時のストレスに対するセルフケアのテクニックは、通常、海外勤務者自身が試行錯誤のうえ習得するものであり、海外勤務者間で共有されることはあっても、本社の人事部門がそのノウハウを蓄積しているケースは少ないのではないでしょうか。

そこで筆者は、前述のストレスチェックを海外勤務者に対して行う場合、併行して海外勤務者が困っていることや、ストレスを解消・回避するために行っている活動に関する調査を本社の人事部門が行い、ストレス要因やストレスに対するセルフケアのテクニックをデータベース化したうえで、海外勤務者への支援に活用することを提案します。

勿論、セルフケアに関する一方的な情報提供は、それが上手く出来ない海外勤務者を追い詰めてしまう可能性があるため、提供する情報の内容や提供のタイミングにつき医師・保健師等の監修のうえ実施することが重要であることは言うまでもありませんが、外部委託によるホットラインといった一般的なメンタルヘルスサポートに加え、彼らの状況を把握しながらストレスの対処方法に関するヒントを提供することは、人事部門が海外勤務者のメンタルヘルス保全に関してできる最も大きな支援の一つとなり得るのではないでしょうか。