コンサルタントコラム 674
マクロ経済スライドとは?
永島 武偉

執筆者: 永島 武偉(ながしま ぶい)

年金コンサルティング アソシエイト コンサルティング

春は出会いと別れの季節とよく言われる。
筆者は初めてお会いする方に、自身の職業について説明をすると以下のようなやり取りになることがある。

筆者「年金の部署で働いております。」
Aさん「年金って難しそうですね。年金って今後減っていくのですか?」

「年金」と聞くと公的年金 (1・2階部分) を想像される方が多い。「公的年金ではなく、企業年金を扱ってます。企業年金とは~」と自身の仕事について語るのも良いが、公的年金について一からアツく語れる知見は持っておきたいものである。

最近では個人型DCの対象範囲の拡大等の3階部分に関するニュースが多かったが、今回は、1・2階部分に関するニュース、2015年4月から適用された「マクロ経済スライド」について解説を行う。
(ご参考:ニュースレター第22号: 確定拠出年金の加入対象者拡大等について)

公的年金の年金給付額は、物価・賃金の上昇・下落に合わせて、年度毎に年金給付額の改定を行っている。(上昇(下落)時:年金給付額を増(減)額) マクロ経済スライドとは、その名の通り、マクロ経済(「被保険者数の減少」「平均余命(65歳)の上昇」)の実態に合わせて、年金給付額のスライド(主に減額)を行うものであり、人口の高齢化で全体の年金給付費が増えるのを抑え、年金財政の悪化を防ぐのが狙いである。

マクロ経済スライドが初めて発動する2015年4月からの年金給付額の改定率は、次のように求められる。
基本となる2014年の物価・賃金の上昇が+2.3%(物価・賃金の上昇率の低い方)から被保険者数の減少率(▲0.6%)、平均余命(65歳)の上昇率(▲0.3%)から特例水準の解消1(▲0.5%)を総合して、0.9%の増額となる。

1) 過去、物価下落時に年金給付額を減額せず据え置く、という特例措置を設けたこと等で、あるべき年金給付額より2.5%高い水準となっていた。2015年4月の改定(0.5%減額)で特例措置分すべてを解消することになる。

2015年4月からの改定率

項目 改定率
物価・賃金の変動 + 2.3%
被保険者数の減少率 ▲0.6%
平均余命(65歳)の上昇率 ▲0.3%
特例水準の解消 ▲0.5%
合計 + 0.9%

2014年は物価・賃金の変動が+2.3%であったため、マクロ経済スライドが発動するが、厚生労働省が示した見直し案は、物価が下落した場合ではマクロ経済スライドは発動させないこととしている。(マクロ経済スライドの下落分は翌年度に繰り越して調整。翌年度もデフレが続いた場合は翌々年度に繰り越しとなる。また、物価・賃金のプラス変動がマクロ経済スライドの下落分を下回る場合は、改定率をゼロにすることとしている。)

ケース1: 物価・賃金の上昇がマクロ経済スライドの調整率を超える場合

 

ケース2: 物価・賃金の上昇がマクロ経済スライドの調整率を超えない場合

マクロ経済スライドの調整率が点線のように算定されても物価・賃金の上昇を上回る場合は年金給付額の改定率はゼロとなる。

ケース3: 物価・賃金が下落した場合

物価・賃金が下落した場合は、その下落分は年金給付額を改定するが、マクロ経済スライドの調整は行わない。

マクロ経済スライドの影響から、公的年金の年金給付額は物価・賃金のプラス変動より低い改定率となるため、実質的な金銭価値の下落が見込まれ、3階部分である企業年金による老後所得がますます重要になってきている。日本の年金制度が変化していく今こそ、個人・企業による老後の所得形成の重要性を強く認識していきたいものである。

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