今こそ年金ガバナンス体制の強化が必要である3つの理由 - コンサルタントコラム676 | マーサージャパン

コンサルタントコラム 676

今こそ年金ガバナンス体制の強化が必要である3つの理由

小野 健史

執筆者: 小野 健史 (おの けんじ)

資産運用コンサルティング シニア コンサルタント 日本証券アナリスト協会検定会員

「年金ガバナンス体制の強化」というのは、古くて新しいトピックである。市場急落時やその直後には口の端に上ることが多いものの、それらのタイミングでは運用そのものにおける対応の検討に時間をとられ、ガバナンス体制の強化、見直しという点については後回しになりがちである。一方、市場が好調な際には、ガバナンス体制に問題意識をもち再検討することは少ないと考えられ、結局手をつけられないまま今に至るというケースも多いのではないだろうか。では、年金ガバナンス体制の強化はいつすべきなのか。実は「今」がそのタイミングである。その理由を以下に3つ挙げる。

理由その1:投資機会の捕捉

サブ・プライム問題、リーマン・ショック、世界金融危機と続いた市場の混乱に対し、各国中央銀行は大規模な金融緩和で対応してきた。供給された資金が主に向かったのは上場株式やクレジット債券など、主に証券会社を通じて販売され、手に入れることも容易な資産であるが、今年2月に日経平均がリーマン・ショック前の水準を回復するなど、これらの資産は危機直後の割安状態を既に脱したものと考えられる。したがって今後は、一般には手に入りにくい、相対で取引されるような資産、例えば、プライベート・エクイティ、私募リート、メザニン証券など、流動性リスクをその収益源の一つとする非公開(プライベート)資産などが投資機会として挙げられることが多くなるだろう。このような、これまでなじみがなく、また投資可能なタイミングも限られる資産へ投資するにあたり重要なのは、より効率的に情報を収集・分析するとともに、柔軟で機動的な意思決定ができる組織をつくることであり、それは即ち、運用プロセスの見直しや権限移譲の明確化などの年金ガバナンス体制の強化が必要であることを意味する。

理由その2:市場混乱への備え

足元のグローバルでの景気回復は、米国は比較的好調ながら、欧州と日本は道半ば、多くの新興国で指標が停滞しているという状況であり、依然予断を許さない。2014年10月の株式市場の急落は、米指標の弱含みを伝えるニュースが一因とも言われており、割安状態を脱した市場は現在、このような悪いニュースにネガティブに反応しやすい状況であると言える。経験された方には実感を持って同意いただけると思うが、市場の混乱時において最も避けるべきなのは思考停止状態に陥ることである。そのためには、どのような状態に陥っても理性的に対応可能な意思決定プロセスやルールを構築することが重要であり、それは即ち年金ガバナンス体制の強化が必要であることを意味する。

理由その3:ステークホルダーの要請

公的年金の運用改革、厚生年金基金制度の事実上の廃止、年金制度の情報をより反映した企業会計制度への移行等を背景に、企業年金への注目度は年々高まっており、この傾向は強まることはあっても弱まることはなさそうである。コーポレート・ガバナンスの強化が叫ばれる昨今、その一環として、年金ガバナンス体制の強化にも取り組むことが、年金制度の加入者・受給者、株主などのステークホルダーの要請だと考えられる。

以上、今こそ年金ガバナンス体制の強化が必要である理由として3つ挙げた。このうち一つでも納得いただけたなら、年金ガバナンス体制の強化について検討されてはいかがだろうか。なお、個々の年金基金・企業年金の状況に応じて、ガバナンスのあり方は異なりうる。マーサーでは、様々なクライアントに対して年金ガバナンス体制強化に関するアドバイスを行ってきているので、ご関心の向きは照会願いたい。