23,927社の海外現地法人をグローバルモビリティの視点でどう考えるか - コンサルタントコラム 680 | マーサージャパン

コンサルタントコラム 680

23,927社の海外現地法人をグローバルモビリティの視点でどう考えるか

2014年に実施された経済産業省「海外事業活動基本調査」の結果が先頃公表された。本調査によると日本企業の海外現地法人は23,927社にのぼる。日本企業のグローバル化を組織・人事領域から支援している筆者は、この数値に興味を持ち、その推移を辿ることにした。本調査は1997年まで遡ることができ、以下図を作成した(図1)。

図1:日本企業海外現地法人数推移(全地域)

出所:経済産業省「海外事業活動基本調査」から筆者作成

日本企業の海外現地法人数は、2001年にやや減少するものの、その後一貫して増加している。詳細な数値を確認してみると、直近10年(2003年 - 2013年)の間に約7割増加している。日頃クライアントから「駐在員が不足している」という声を聞くことがあるが、海外現地法人がこのペースで増加しているならば、その声も頷ける。

本調査は日本企業全体の傾向を調査している。したがって個別企業の実情には当てはまらない場合もある(海外現地法人の統廃合によりむしろ減っているという企業もある)。ただし、全体の傾向でこれだけ増加していると、海外における競争環境やビジネスプロセスは変化するはずであり、その変化対応をリードするのが日本から派遣される駐在員であるならば、駐在員が不足するということも頷ける。
更に地域別推移も辿り、以下図を作成した(図2)。

図2:日本企業現地法人数推移(地域別)

出所:経済産業省「海外事業活動基本調査」から筆者作成

2000年前までは北米にある現地法人数が最も多かったが、2002年に中国がその数を超え、2008年にはASEAN4がその数を超えている。また、別途ベトナムやインドの現地法人数を個別に辿ってみたが、ここ10年間で、ベトナムは約4倍、インドは約3倍に増加している。拡大する海外事業の主戦場は中国やアジアにおける新興国であることを再確認した調査であった。
では、急速に拡大する中国・アジアを中心とした海外展開を誰が担うのであろうか。
日本企業である限り、最初に白羽の矢がたつのは日本から派遣される駐在員であろう。ただし、先ほども触れている通り「駐在員は潤沢にいます」という企業は少ない。駐在員の不足に対応するために、駐在経験のある社員を2回、3回と派遣するケースもある。しかし、駐在員の数自体は増加しないので、根本的な問題解決にはならない。事業拡大地域が中国・アジアであるならば、欧米の駐在員を中国・アジアに投入するか。否、欧米の事業が縮小しているわけではないので、このアプローチも難しい。
結局以下3つの方法で、この課題に取り組むことになるのではないか。

1. 駐在員を増やす -人財育成-

海外(特に新興国)で戦える駐在員(企業によっては「グローバル人財」と呼ばれている場合もある)を一人でも多く確保するために育成施策を講じる。ただし、これまでと比べてその育成対象は広がることになる。海外における事業展開の方向性にもよるが、これまで「海外」とは全く無縁という部署も海外展開が必要になってきているケースがある。それら部署に所属する社員も新たに駐在要員として育成の対象になる。また、量を確保するために先行投資として若手社員も駐在要員として育成対象になるであろう。

2. 駐在員ニーズを減らす -現地化推進-

もし、海外現地法人が現地社員のみでその役割・機能を果たすことができれば駐在員を派遣しなくてもよくなる。つまり、「現地化」によってこの課題を解決する。「現地化」が進展すれば、駐在員は必要なくなり、駐在員不足という課題も解決する。駐在員を派遣するにしても現地化推進を目的として派遣にすれば、中期的に駐在員不足という課題も解決する。
「現地化」の必要性は様々な文脈で議論されるが、駐在員不足という課題解決においても重要な取り組みとなるであろう。

3. 駐在要員を他国で確保する -三国間異動-

日本本社に人財がいなければ、海外現地法人の社員を活用するという方法である。
冒頭より参照している「海外事業活動基本調査」では日本企業が海外で雇用している社員数も調査されており、その数は552万人にのぼる。その中でも中国は171万人、ASEAN4で143万人が日本企業で就業している。もちろん、この数値は調査対象全体の数値なので、個社の実情には当てはまらない。しかし、個社の状況において本社日本の社員より、海外現地法人の社員の方が多いという企業は多くなっているはずである。現地法人社員をグループの人的資源として捉え、海外派遣に活用できるとなると課題解決も見えてくるのではないか。
また、この方法は海外現地法人の社員・幹部候補生の育成という視点においても重要な取り組みとなる。「2.」で述べている「現地化」が進展している企業では、本格的に検討・実施されており、海外現地法人の社員・幹部候補生が第三国で活躍し、国境を跨いでキャリアアップを目指している姿も散見されるようになってきた。
上記3つの方法をもって駐在員不足に対応するというのがいう筆者の主張であるが、実行するとなるとそれなりの困難を伴うことになる。また機会があれば、上記3つの方法を個別に深堀してみたいと思う。

今回、日本企業の海外現地法人数が公表されたことをきっかけとして、日本企業の拡大する海外事業に思いを寄せてみた。結果として、「日本から派遣される駐在員だけで足りるのか、間に合うのか」という筆者の課題意識を再確認した。
そして、駐在員不足を解消し、海外事業を更に拡大していくためには以下項目を早急に可視化するべきである、という認識を強くもつこととなった。

  • 自社の海外現地法人はどの国で、どう増加/減少していくのか
  • 駐在員は足りるのか、どう確保していくのか
  • 各海外拠点において現地化はどのくらい進展しているのか
  • 第三国に派遣ができるような社員はどのくらいいるのか
  • 海外に幹部候補として育成すべき社員はどのくらいいるのか
  • そもそもどの国に、どの程度の役割を担うことができる社員が、どのくらいいるのか etc.

育成を通じた人財の確保は時間を要するため、いち早く取り掛かることが必要だということも今頭によぎっている。