アンコンストレインド債券運用の採用におけるポイント - コンサルタントコラム 686 | マーサージャパン

アンコンストレインド債券運用の採用におけるポイント - コンサルタントコラム 686

コンサルタントコラム 686

アンコンストレインド債券運用の採用におけるポイント

執筆者: 小野 健史(おの けんじ)

資産運用コンサルティング
シニア コンサルタント
日本証券アナリスト協会検定会員

年金運用の世界で最近話題になることが多い運用戦略の一つに、アンコンストレインド債券運用がある。「アンコンストレインド」を和訳すると「制約のない」という意味になり、国債を含む様々な債券へ、運用機関の裁量で機動的に投資する運用戦略である。
「国債金利が低位安定し、また今後は上昇も見込まれるという環境下、国債以外の債券へも投資対象を拡げたいが、いつ、どのような債券へ投資したら良いか分からないので、その判断を運用機関に委ねたい」と考える投資家のニーズを満たす。そのような運用戦略を採用する上でのポイントを以下に3つ挙げる。

POINT 1: ポートフォリオにおける位置づけ

まず、リスク・リターン特性を確認する。

図1: リスクとリターンの比較(2015年3月までの17年間)
*国内債券:Nomura-BPI、国内株式:TOPIX、外国債券(ヘッジ):CGWGBI ex Japan(円ヘッジ)、外国株式:MSCI Kokusai
出所:野村證券、Thomson Financial Datastreamのデータを基に当社にて算出
*アンコンストレインド債券運用は、同カテゴリでのマーサー・ユニバース登録プロダクトの中央値
ドルベース・リターンをもとに、為替ヘッジコスト相当分をマーサーで控除

図1で確認できるように、過去のリスク(横軸)は、債券(主に国債)と株式の中間的な特性を持つ。これは、アンコンストレインド債券運用において、国債に加えてハイ・イールド債券やエマージング債券など、よりリスクの高い、いわゆるクレジット債券へ投資を行うことと整合的である。またリターン(縦軸)の観点でも、90年代後半以降日本がデフレ経済に陥ったという特殊要因が影響していると考えられる国内株式を除き、概ね同様の(=中間的な)特性となっている。

これらのことから、アンコンストレインド債券運用は、ポートフォリオにおいて債券と株式の中間的な位置づけとして管理すべきであることが分かる。従って、例えばポートフォリオを内外の債券株式およびオルタナティブの5資産で構築している投資家であれば、そのような特性が前提となっているオルタナティブのカテゴリーで運用を管理することをまず検討すべきだろう。

また、マーサーでは、ポートフォリオを図2のように、負債ヘッジあるいは資産保全を目的とする「ベース・ポートフォリオ」と、資産成長を目的とする「収益追求ポートフォリオ」の目的別二層化で構築することを推奨している。

図2: 目的別二層化ポートフォリオ

アンコンストレインド債券運用においては、いわゆるリスク・オフ時にボラティリティが高まるクレジット債券へも多く投資するケースが大方であることから、目的別二層化ポートフォリオで運用を行う場合には、安定運用を目的とするベースポートフォリオではなく、収益追求ポートフォリオのカテゴリーで運用を管理することが適切と考える。

POINT 2: 運用プロダクトの選択

運用上の制約がない(もしくは少ない)運用であるため、プロダクト毎の特性の差異が大きく、従って特性の把握が極めて重要である。以下、運用プロダクトの特性を把握する上でキーとなる項目を挙げる。

  • ベンチマーク(= 運用上でターゲットとなるインデックス(指標))
    多くはキャッシュ・リターンをベンチマークとしているが、債券系のインデックス、例えばバークレイズ・グローバル総合をベンチマークとしているプロダクトもある。運用のコンセプトとして「制約のない」ことを標榜している運用戦略であることから、運用にあたってベンチマークを意識することはそれほどないと考えられるが、運用者の運用目的が投資家の期待と合致しているかの確認は重要である。「定期レポーティングにおいて、パフォーマンスの要因分解は何をベンチマークとして実施されるのか?」という問いが、運用機関とディスカッションを開始するにあたって有効だろう。
  • 投資対象となる債券資産とその配分割合
    どのような債券へどの程度投資するのか、特に、流動性が低い債券やキャッシュへの投資の有無、および過去の配分割合変化の度合いの確認が重要であり、またそれらが投資家の期待に沿うものであることも確認する必要がある。
  • デュレーション(= 金利感応度)
    多くはロング(= 買い持ち)のみの戦略であるが、デュレーションについては先物を用いて機動的に変更する戦略もある。投資家が当戦略を採用する主目的が「金利上昇時に、マイナス・リターンを抑制、できればプラス・リターンを計上してもらいたい」というものなら、デュレーションをある程度機動的に動かすプロダクトが望ましい。

なお、比較的新しい運用戦略ということもあり、トラックレコードが短い、例えば2008年のグローバル金融危機以降に設定されたプロダクトも散見される。この場合に注意したいのが、市場のストレス局面への耐性がパフォーマンス上で確認できないことであるが、その場合には、比較的最近のストレス局面、例えば2010年5月の欧州ソブリン危機時などにおける運用内容とそのパフォーマンスを確認することがプロダクト特性の理解の一助となろう。

POINT 3:運用モニタリング

「制約のない運用を委託することから、運用モニタリングにおいて何をチェックすれば良いのか分かりづらい」という声も投資家からよく聞く。キーとなるのは採用の目的であろう。採用の目的と合致した運用が行われているかチェックすることが、運用モニタリングを行う本来の目的である。例えば、アンコンストレインド債券運用に長期的に国内債券を上回るリターンを求めるのであれば、短期的なパフォーマンスの優劣を気にするのではなく、採用プロダクトの投資債券の利回りが国内債券の利回りを一定程度上回っていることや、平均格付けが一定までに抑制されていることの確認がより重要となろう。なお、プロダクト毎の個別性が高いことから、他プロダクトとのパフォーマンス比較は参考程度に留めておくべきである。

アンコンストレインド債券運用は、各種債券への配分割合の判断について、投資家から運用機関へ権限移譲を行うプロダクトだという見方もできる。そのような観点からも、採用の是非の検討やプロダクト間の比較を実施する上で、これまで挙げたようなポイントを是非参考にしていただきたい。

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