コンサルタントと読書 - コンサルタントコラム 720 | マーサージャパン

コンサルタントコラム 720

コンサルタントと読書

甲斐 佑太

執筆者: 甲斐 佑太(かい ゆうた)

年金コンサルティング アソシエイト コンサルタント 日本アクチュアリー会 準会員

書店に足を運ぶと、「〇〇の読書術」「本を早く読む方法」といったような趣旨の書籍が平積みになっているところを見かける。英語学習やダイエットと同様に、読書も現代人を惹きつけ続けるトピックであるようだ。また、このような書籍が販売され続けるということは、読書の習慣化にチャレンジするも継続できない人が多いことを逆に示唆してもいる。

そのような状況を踏まえて、本稿では、筆者が実践しているいわゆる読書術についてご紹介する。

自己研鑽における読書の重要性は論を待たないと思うが、筆者の経験を通じてもやはりそのように実感する。現在、筆者は企業の退職給付制度に関する数理計算やコンサルティングの業務に携わっているが、クライアントに真にご満足いただけるサービスを提供するためには、時々刻々と変化する会計基準や法令、進化するリスクマネジメントの手法、変わっていく従業員の働き方・人事のあり方・経営のあり方などの広い範囲の情報にアクセスし、絶えず知識をアップデートしていく必要があると考えている。そのための方法として、読書は有効かつ費用対効果が高いのである。

とはいえ筆者も今でこそ読書習慣を維持できているが、労なくそうなったわけではない。もともと本を読むことは好きで、学生時代は大学院の図書館を定期的に利用するほどであったが、社会人になり明らかに読む本の数が減ってしまった。仕事の知識を取得するため等必要に迫られる読書を除いては、時間をインターネットやSNSに使ってしまう癖がついてしまっていた。よくある話である。

コンサルティング業界に転じる前、コンサルタントは勤勉で読書家なのではないかといった先入観があった(実際は、周囲を観測する限り必ずしも読書家ではないが勤勉で情報収集に余念がなく好奇心旺盛な人が多いといった印象である)。当社への入社を機に生活を改め、一人前のコンサルタントとなるべく読書の習慣化を目指そうと決意したのである。

さて、前置きが長くなってしまったが、筆者が実際に試して成功したと思っている読書術は以下のとおりである。もちろん読者それぞれのライフスタイルによって合う合わないがあると思うが、読書が捗らないという方は参考にしていただきたい。

本を読むための環境を整える

本というものは読みたい時もそうでない時もあるものである。何事もはじめの一歩が肝心というように一度読み始めると結構捗るものでもあるので、読みたくなった時を逃さず読めるように環境を整えることが有効である。筆者は少しでも気になった本は購入し、トイレや枕元など家中にバラバラと置くようにしている。また移動する際は数冊鞄に入れて持ち歩いたりもする。エクスポージャーを大きく取る作戦である。こうすると言わば家中の至る所に本がある状態になり、ふとしたスキマ時間を自然に読書に充てられるというわけである。

この状態にはいつでも本にアクセスできるというメリットがあるが、本の散らばりが特定の本を死蔵化させてしまうリスクがデメリットとして存在する。新陳代謝させるための工夫が必要である。筆者はどこに置くにせよ背表紙が必ず目につくようにし、あまり読めていない本はたまに場所替えをするようにしている。

何でも良いのでアウトプットする

アウトプットの重要性はよく言われるにもかかわらず多くの人が実践していないであろうことの1つかと思うが、必ずやるべきである。琴線に触れた一行を書き写すだけでもいい。 アウトプットベースの読書の1番の利点をあげるとすると、筆者の経験上、不思議と眠くならないということがある。小説等の引き込まれるタイプの本は別にして、一般のビジネス書や専門書を漫然と受け身で読むとすぐに眠くなってしまうのは読者にも覚えがあるところかと思う。

一方、何をアウトプットにしようかと考えながら文章を追っていくと、一文一文に「アウトプット=成果に値するか」をジャッジする主体的な目線が入り、頭を働かせながらのインプットになるので眠くなりにくいのだと思われる。文章の強弱を見極めながら読んでいくことになるので結果として記憶への定着も良くなるような気もする。さらに、アウトプット(筆者は1冊のノートにメモ書きしている)の累積が次第に成功体験のように感じられて次の本を読む活力になる。まさに一石三鳥である。

これらの方法によって、今のところ読書を生活に組み込むことに成功している。読書が万人にとって有益なものだと言うつもりはないが、筆者の方法が今度こそ本を読む習慣をつけようとお考えの読者の一助となれば幸いである。

ちなみに今筆者が自宅で本稿を書きながら手を伸ばした範囲には次のような書籍があった(いずれも積読)。

  • 「イールドカーブ分析」 モーラッド・ショウドリー 著
  • 「経験論から言語哲学へ」 勢力 尚雅、古田 徹也 著
  • 「仕事の人類学 ‐ 労働中心主義の向こうへ ‐」 中谷 文美 編

思いつくままに手を伸ばして本を読める(部屋が狭く散らかっているということでもある)今の生活は、思ったより幸せなものなのかもしれない。