執筆者: 尾西 博樹(おにし ひろき)
インフォメーション・ソリューションズ シニア コンサルタント
筆者の前回コラムでは、海外派遣者報酬を購買力補償方式で計算する場合の本国生計費関数が自然対数を含む式で表されていることについて述べたが、今回は本国生計費関数を推計する回帰分析という手法を本コラムで説明したいと思う。
暑い季節はビールが美味しい。汗で体から水分が失われる季節ほどビールを美味しく感じるのだろう。あるビールメーカーのホームページを見てみると、月別のビール類販売量が掲載されている。 そこで、実際暑い季節ほどビールが良く売れるかを見るために、あるビールブランドの月別日販量と、東京の月別平均気温と並べてみると、以下の表 1 となる。また、それを散布図で表したものが図 1 である。
* 1 箱=633ml (大びん) x 20本換算
この図表を見ると、忘年会シーズンの12月を除けば、概ね気温が高くなるほど、ビールが良く売れる傾向にあるようだ。 さらに図 1 の散布図を見ると、気温とビール販売量の関係として、右上がりの直線を引けそうに見えると思うが、その直線の数式を求める手法を回帰分析という。 回帰分析により、気温 (x) とビール販売量 (y) の関係についての回帰式を求めるには、最小二乗法という手法を用いるが、計算がやや複雑であることから、本コラムでは詳細説明は省略する。
しかし、マイクロソフト・エクセルを用いると簡単に回帰式が求められるので以下に説明すると、
以上で、回帰式を簡単に算出できる。
結果は以下の図 2 となる。
ここでは、回帰式 y = 0.3855x + 22.06 と算出されたが、これは、平均気温が 1 ℃上がるごとに、ビール日販量が 0.3855万箱増加する傾向があることを示している。
ここでは気温とビール販売量の関係を直線で表す方法を説明したが、前回コラムでは本国生計費と年収の関係について、年収の増加分ほど本国生計費が増えないことから、上に凸の曲線で表わされていることを説明した。年収と本国生計費の関係のように、自然対数を含む回帰式で表すことが適切である場合があり、以下では平均気温 (x) とビール販売量 (y) の例を用いてその方法を説明する。
先ず表 1 の数値を自然対数の底を用いて対数化する。(表 2 の右側 2 列)
* 1箱=633ml (大びん) x 20本換算
(マイクロソフト・エクセルで、数値を対数化するには関数「Ln ( )」を用いる。)
この x (平均気温)、y (販売量)を対数化した数値 Ln (x)、Ln (y) により、回帰式を求めると以下のようになる。
この回帰式 Ln (y) = 0.2572 * Ln (x) + Ln (13.83083) を、対数化する前の x、y で表示すると以下の図 4 のようになる。(対数化した数値を元に戻すには関数「exp ( )」を用いる。)
年収と本国生計費の関係のように、上に凸の曲線が表現できたことが見て取れる。
このように、マイクロソフト・エクセルでは、直線回帰の他にもいろんな回帰分析ができる機能が備わっているので、試して頂ければ面白いと思う。
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