年金制度の国際比較 ~マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(2016年度)~ - コンサルタントコラム 740

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年金制度の国際比較 ~マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(2016年度)~

関根 賢治

執筆者: 関根 賢治(せきね けんじ)

年金コンサルティング プリンシパル
日本アクチュアリー会正会員・年金数理人・日本証券アナリスト協会検定会員・米国CFA協会認定証券アナリスト

マーサーは、2009年以来、グローバル年金指数ランキング「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(MMGPI:Mercer Melbourne Global Pension Index)」を作成しているが、本年も10月に2016年度MMGPIを公表した。当指数は、世界各国の年金制度を包括的に比較したもので、各国年金制度を横断的に比較し、多角的、包括的に調査した指数である。年金制度としては、公的年金に加え、企業が実施している企業年金、個人貯蓄なども含めた老後所得全般を対象としている。

評価指数は40以上の質問項目から構成され、「十分性(Adequacy)」、「持続可能性(Sustainability)」、「健全性(Integrity)」に大別され、それぞれの評価結果を、40%、35%および25%の割合で加重して総合評価を算定している。本年は、マレーシア、及びアルゼンチンも対象国に含め、世界27ヵ国、全世界の人口の60%近くをカバーした。

ランキング首位はデンマークで、2012年より5年連続で首位を堅持しており、同国と2位のオランダのみが最高ランク"A"の評価を得ている。十分に積み立てられた年金制度や、多くの加入者数、優れた資産構成と掛金の水準、十分な給付レベルおよび法令の整った個人年金制度の提供などが高評価の理由である。

では、日本の順位はどうだったであろうか? 日本のランキングは、残念ながら27ヵ国中26位と例年同様にかなり低い評価結果となっている。他国と比べ、日本の年金制度の何が見劣りしているのであろう?

下表は各国の総合評価結果に加えて、十分性、持続可能性、健全性、それぞれの評価結果を示している。27か国中の日本の評価結果は、十分性20位、持続可能性25位、健全性20位、であり、総合評価で相対的に重要視されている、十分性と持続可能性の評価が低いことが響き、結果的に、総合26位となっている。

マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(2016)
総合指数によるランキング

十分性が低い主要因は、年金給付による所得代替率(現役世代の年収と年金給付額の比率)が低いことである。日本政府および厚生労働省は、「所得代替率50%の確保」を目指しているが、この所得代替率はサラリーマンと専業主婦、という家族を一単位と見た時の目標である。一方、MMGPIが参照しているOECD(経済協力開発機構)による所得代替率はサラリーマン一人を一単位として計算しているが、日本の所得代替率は個人単位でみると35%前後とかなり低くなってしまう。また、老後所得の十分性を考える上で、退職後資金をどれだけ長い間、安定的に確保できるか、つまり、年金として受給し続けられるか、という観点も重要だが、日本はこの評価も低い。というのは、相対的に有利な退職所得控除の存在等により退職金の一時金での受給が普及していることや、多くの企業年金が終身ではなく一時金や確定期間の年金を支給しているからである。

持続可能性に関しては、なんといっても、少子高齢化に伴い高齢者人口割合が増加していること、平均余命の伸長により公的年金の期待支給期間(年金支給開始年齢後の平均余命)が長くなっていること、が評価を押し下げている。新聞等でよく取り上げられることだが、日本の高齢者割合(総人口に占める65歳以上の割合)は、現状24%程度であるのが2040年には36%程度に上昇することが予想されているし、65歳以降の平均余命も年々増加している。更には、政府債務残高が大きいことも、持続可能性の評価を押し下げている一要因である。

日本では他国よりも、かなり早いペースで少子高齢化が進行し、平均余命も伸長している。公的年金の原資は、基本的には、生産人口から徴収される社会保険料で賄われるわけだから、このような人口動態下で公的年金を維持していくためには、実質的な年金額の削減(実質給付額の削減や支給開始年齢の引き上げなど)の可能性は中長期的には否定できない。また、企業年金からの支給に関しても、グローバルベースでの競争力確保が求められる中、終身年金などの手厚い年金を提供することによる人件費や財務リスクの増加を避ける必要性に企業は迫られている。これらを踏まえると、老後の生活資金を確保するには、公的年金、企業年金から提供される給付を中長期的なトレンドも含め十分に理解し、更には、自身のキャリアプラン(どの位の収入を見込みながら何歳まで働くか)も考慮した上で、個人年金や貯蓄も活用した早めの資金準備がますます重要になってくると思われる。