キャリア考 - コンサルタントコラム 741 | マーサージャパン

コンサルタントコラム 741

キャリア考

執筆者: 小林 明子(こばやし あきこ)

組織・人事変革コンサルティング シニアコンサルタント

2016年も終わろうとしている。今年もいろいろなことがあった・・・しみじみとそのようなことを思う季節になった。皆さんはこの一年をどのように過ごされただろうか。

毎日のめまぐるしい仕事、家族や友だちとのたわいないおしゃべり、旅先でのうれしいハプニング。個人としての私たちはさまざまなことに囲まれ、出会い、日々を過ごしている。

私たちビジネスパーソンにとって、仕事は大きな比重を占めている。生きるための収入源であり、チャレンジであり、喜びでもある。

マーサーはこれまで、人材マネジメント体系の中核を「仕事」に置き、その関連性の中で様々なサービスを提供してきた。現在は、この中核を「キャリア」に置き換えて議論することが多い。個人にとってのキャリアを中心に据え、人材マネジメントを「仕事」と「人」の両側面から、さらに包括的に考えていこうというアプローチである。

では、キャリアとは何か。

「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。

出典: 厚生労働省職業能力開発局. "「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書". 2002年

すなわち、私たちの生活の大部分を占める「仕事」を重ねること、その結果、個人が力を積み上げていくことであると説かれている。キャリアマネジメントとは、これを効率的に管理・活かしていくプロセスである。

キャリアをめぐる動きは年々大きく変わってきている。以下の図は、マーサーグローバルの観点からキャリアマネジメントの変遷を示したものである。

上段は会社、下段は個人、年代により会社と個人にとってどのようなメリットがあるのかを信号形式で表している。以下、マーサーの見解を簡単にご紹介する。

(注) グローバル全体のトレンドとして示したものであり、日本に限定されるものではない。

かつて、個人にとってのキャリアマネジメントは、好むと好まざるとに関わらぬ異動、空ポジションがなくキャリアアップが阻害されるなど、硬直的であった。会社もまた、管理的に人材を動かす傾向にあった。

その後、個人はより能動的にキャリアをつかむようになっていく。キャリアアップの余地がなければ、個人は他社に可能性を求めて転職する。結果として、会社は優秀な人材を失い、また離職・採用に伴うコストに悩まされてきた。

現在から将来的にかけて、キャリアマネジメントは会社、個人それぞれにとってメリットを生むような、共に能動的かつ柔軟なプロセスに変わっていく。個人にとっては、社内外を問わずキャリアを高め、成長の可能性を求めることができる環境が、会社にとっては、人材を継続的に流動させながら、優秀な人材を惹きとめ、育て、離職・採用コストを抑えることができる環境が生まれていく。

今後のキャリアマネジメントのポイントは、個人、会社ともに、多様な選択肢を持つことだ。私たち個人は、どのように選択肢を選んでいけるのか。

自らの関心や経験と、用意された仕事・環境がマッチすれば、キャリアが決まるというのが、これまでの考え方ではなかっただろうか。選択肢は限りなくわかりやすく、想定しやすいものであった。たとえば、ジグソーパズルのお手本通りに、ピースをはめるイメージに近いかもしれない。

しかし、実際の生活を振り返ってみれば、ベストオプションと思って選んだはずが、全く想定外になるようなことはある。不確実性の社会といわれる昨今、選択肢の可変性はさらに高まると考えられる。バラバラなピースが不意に組み替えられ、お手本とは違った、新しい風景が生まれていくようなイメージかもしれない。

J.D.クランボルツは、Planned Happenstance理論の中で、個人のキャリアの大方は予期していなかった偶発的な事象によって決まると説いている。すなわち、何が起こるか分からない世界で、私たちは難しい意思決定と実行を日々繰り返していかなければならない、ということだ。

では、そのハードルをどうクリアしていこうか。

仕事や人生を前に進めるような予想外の出来事が起き、それが本物のチャンスに変わるときには、その人自身が重要な役割を果たしている。環境の変化をつかめるよう、常に目と心とオープンにし、失敗をおそれずに、ベストを尽くそう。さまざまな活動に参加し、好きなこと嫌いなことを発見しよう。そのような行動が、想定外の幸運を生み出していく。

出典: J.D.クランボルツ, A.S. レヴィン. "その幸運は偶然ではないんです!". 2005年

個人にとってのキャリアとは、私たちが選んだ(または選ぶことになった)選択肢に前向きにチャレンジし、また次のきっかけをつかんでいく、一連のサイクルであるといえよう。

おわりに・・・キャリアにおける選択肢とは、イコール、「仕事」なのだろうか。

確かに、私たちビジネスパーソンは、日々の大半を仕事に費やしている。しかし、家族をはじめとする周囲との関係性やライフイベント、突然のハプニングにより、仕事、その連関であるキャリアが思いもよらない道をたどることは、往々にしてある。

S.S.ハンセンは、Integrated Life Planning理論の中で、仕事の選択という狭い枠を超えて、キャリアを統合的にとらえるべきと説いている。

私たちの人生を構成する要素、Learning (学び)、Leisure (楽しみ・仕事から離れて従事する活動)、Love (愛情・家庭)、 Labor (仕事)という、4つのLに視点を置いて、人生全体の文脈の中で優先順位を決めていく。ライフイベントにおける自分自身の状況、価値観、4つのLの関係性の変化を認識しながら、その時々において重きをおくべき・おきたいことを選ぶことが大切である。

出典: S.S. ハンセン. "キャリア開発と統合的ライフ・プラニング". 2013年

個人がキャリアを築いていくということは、周囲の人たち、社会、自らの人生と深くかかわりあいながら、変化の中で様々な選択肢を楽しみ、幸運をつかんでいく喜びのプロセスであると考えたい。

来年はどんな年にしていこうか。様々な可能性を思い描きながら、来る2017年を考えてみたい。