個を活かすダイバーシティ資産運用のススメ - コンサルタントコラム608 | マーサージャパン

個を活かすダイバーシティ資産運用のススメ

ライブラリ / コンサルタントコラム一覧 / コンサルタントコラム608

個を活かすダイバーシティ資産運用のススメ
Calendar2013/10/17

組織が大きくなって機能が分化してくると、人事採用も、先に仕事の内容を定めてそれぞれにふさわしい人材を求める形にしたほうが効率的なのではないか、と思えてきます。しかし、募集をかける際、仕事の内容をあまり細かく規定しすぎると、「魅力的な」人材が集まらないということはないでしょうか。資産運用において運用機関を採用する場合にも、仕事の内容を細かく定めすぎず、その個性を尊重して、のびのびと運用できる適切な環境を用意することが、資産運用を成功に導くのではないかと考えています。

人にさまざまな個性があるように、運用機関もそれぞれに積み上げてきた個性を持っており、個性を発揮できる環境も、運用機関によって異なる場合があります。ごくわずかな評価軸の上に多様な運用機関を一度に乗せてしまうと、せっかくの個性が失われてしまうということになりかねません。

私は資産運用コンサルタントとしてさまざまな運用商品のご案内をいただいておりますが、たとえば、ある運用機関は、「A社は、その発行する株式に投資すべきであるが、B社はむしろ債券に投資すべき」といった、株式運用とも債券運用とも言えない運用手法を醸成してきました。もし、投資家が、株式は株式に特化した運用商品で、債券は債券に特化した運用商品で運用するという、「職種別採用」方針をとっていると、こういう運用商品はどんなに優れたものであっても、書類審査で漏れてしまうことになります。

食糧の効率的な生産・流通に資する上場企業を、世界中から選ぶことに血道をあげている運用チームもあります。世界的な人口増加と新興国の持続的な経済発展を見越してのことです。より全般的な市場の動向を表す世界株式指数と比べると、その投資銘柄には著しい偏りが生じることになります。このとき投資家が、「世界株式指数からの乖離を一定範囲に抑える」ことを要件として運用機関を募集すると、この運用チームは応募に二の足を踏むかもしれません。

学術的な裏付けのない投資アイディアを頑なに受け入れない運用機関は、「運用評価期間を原則として3年とする」という方針の下では本領を発揮できないかもしれませんし、厳正な人事評価による人材の質の維持こそが高い運用成績をもたらすと考えている運用機関も、「退職者の多い運用機関は採用しない」という採用基準の前には無力です。

もちろん、創業理念など譲れない経営方針に合わない人材を採用する必要がないように、大事な投資理念(哲学)を損ねてまで間口を広げる必要はありませんが、運用機関の採用が、単にその管理のしやすさを優先して行われると、運用機関の個性を活かしきれないことになるか、あるいは、そもそもごく平均的な運用機関しか採用できないことにならないでしょうか。低金利・低成長(貨幣量だけが膨張)の時代にあって、従来有効とされていた長期分散投資に限界が見られるようになってきたとすると、むしろ、運用機関の持つ多様な個性を偏りのないように組み合わせ、それぞれをうまく発揮させるような管理方法を考えることが、投資家や、そして私たち資産運用コンサルタントに、求められているのではないかと思います。


今井 俊夫

執筆者: 今井 俊夫 (いまい としお)
資産運用コンサルティング シニアコンサルタント

  マーサーニュースレター

隔週でマーサーのコンサルタントが執筆する記事をメールにて配信いたします。コンサルタントコラム一覧

購読フォーム
*必須項目