資産運用コンサルタントの専門性を考える - コンサルタントコラム 619

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資産運用コンサルタントの専門性を考える
Calendar2014/01/31

企業年金では、積立金の運用担当者が、そのマネジャー(管理職)としての経験や見識を活かして、銘柄選択の専門家である運用機関を採用し、それぞれに予算を配分し管理しています。私たち資産運用コンサルタントは、マネジャーである運用担当者と、銘柄選択の専門家である運用機関の間に割って入って、運用担当者のお手伝いをしているのですが、そんな私たちの専門性は、いったいどこにあるのでしょうか。

ひとことで言うと、「コンサルティングのプロ」だと思っています。少なくとも私はそうありたいと願い、その「専門性」でお客様のお役に立ちたいと考え、日々お客様と接しています。

コンサルティングは、課題を特定するところから始まります。お客様の資産運用体制やポートフォリオがどのような特徴を持っていて、だからどんな課題があるのか明らかにしていくことですが、すべてのお客様に万能な答えなどありません。そのようなものがあれば、それと比べてここが違う、だからこうしよう、という提案ができるのですが、そもそもそれは受け入れられるものなのか、お客様によって感じ方が違うものです。お客様が優れたマネジャーであればあるほど、お客様が「受け入れられない」と感じれば、それは「会社が受け入れない」ということにほかなりません。実現できない提案はコンサルティングとして体をなしていません。

ですから、心がけているのは、よくお客様の話を聞くことです。課題はお客様自身がお持ちで、場合によってはどう解決すればよいかということまで、おおよその形をイメージされていることがあります。会話を通してデッサンが浮かび上がってきたら、これに輪郭を与え彩色を施していくところは、もちろんコンサルタントの仕事ですが、お客様とともにデッサンを描いてみることにもまた、コンサルタントとしての「専門性」が反映されると思っています。

さて、こうして課題が解決されたポートフォリオも、市場環境の変化によって、再び課題が生まれることがあります。ここには、課題が生じたことに気づかないリスクがあります。コンサルタントとしては避けたい事態です。しかし、こんなリスクを軽減してくれるのも、実はお客様です。ありがたいことに、多くのお客様と仕事させていただいていると、どなたかが気づかれて、ご相談いただけることになります。そしてその課題認識は、往々にして、形は違ってもほかのお客様にもあてはまるのです。そこでまた必要なコンサルティングをお届けすることができます。

たとえば、このところ、先進国株式の好調ぶりと比べると新興国株式の低迷が目立っています。分散投資をしていればこういうこともある、という程度にしか構えていなかったのですが、「このまま投資を続けてよいのか」というご相談をいただくようになって、これを課題と考えられるお客様にとってどのような対策を検討できるか整理を始めたということがあります。この整理は、新興国株式の低迷を一時的ととらえ課題とは認識していなかったお客様にとっても、新興国投資の位置付けを再確認するうえで有用なものとなりました。

幾何の問題を解くときに「補助線の引き方」が難しいように、「お客様の立場に立って考えること」も、「勉強の積み重ねによる情報発信」も、自分一人の力には限界があると認識しています。ですから、できるだけ多くのお客様とお話しすることを心がけています。取引のあるお客様だけではなく、営業の名目で取引のない先様まで出かけて行って、お話を聞いて帰ってきます。こうして、いち早く課題の発生に気づくことができるようになったとき、コンサルタントとしての「専門性」が高まったと言えるのではないでしょうか。

ここに挙げたことのほかにも、お客様の社内を説得して提案を実現していくために要求される専門性など、資産運用コンサルティングという仕事もやはりコンサルティングなのだと感じます。
もっと明確に言えば、資産運用ではない、ほかのコンサルティングにも通じる、そういう「専門性」でお客様のお役に立ちたいと思っています。必ずしも、資産運用の専門知識でお客様や運用機関と勝負しようということではないのです。

もちろんマーサーにはいろいろな考えを持ったコンサルタントがいることを付記しておきます。そうしたコンサルタントとの意見交換もまた、豊かなコンサルティング・アイディアの源泉です。


今井 俊夫

執筆者: 今井 俊夫 (いまい としお)
資産運用コンサルティング シニアコンサルタント

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