市場データの活用-サーベイデータを使ったベンチマーキングの薦め- - コンサルタントコラム 762 | マーサージャパン

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市場データの活用-サーベイデータを使ったベンチマーキングの薦め-
Calendar2017/06/16

最近、複数の企業様から立て続けに同じような照会を受けた。「ITセキュリティ人材が採用出来ない/どのように処遇すればよいか/どうすればリテンション(引き留め)できるのか…etc」。当方は主にハイテク産業を担当しているが、ハイテク系以外の企業様からも問い合わせがあったことから、業種に関わらず関心の高い話題と思われる。

5月中旬、世界各国で大規模なサイバーテロ攻撃が発生したのは記憶に新しい。日本企業も被害を受けており、他人事ではない事態と言える。また、3年後の東京オリンピックを控え、今後日本がサイバー犯罪の脅威に晒される可能性が増加すると想定するならば、やはり気にしない訳にはいかないのかもしれない。

もし世の中の多くの企業がITセキュリティ人材を求めたら・・・?需要と供給の観点から、そのような人材の価値は上がる。結果、報酬水準も上昇する傾向となる(ホットジョブ)。採用したいが適任者が見つからない、また見つかったとしても自社の雇用制度/賃金制度からかけ離れた報酬水準を提示しないと採用できない・・・。各企業様が同じような問題を抱えていて、ご相談を受ける機会が増えたのではないかと想像している。

上記の例は、実際にITセキュリティ人材の絶対数が(現在、企業に求められている数に比較して)少ないために起こっている事態だと思われるが、実態はどうなのだろうか?
マーサーは毎年、総報酬サーベイ(Total Remuneration Survey)という調査を実施している。昨年2016年は563社に参加いただき、従業員の方々の報酬データを収集→統計的なデータとして見ていただくことが出来るデータベースを構築している。

この総報酬サーベイの結果の一部を示したのが以下のグラフである。

(データ元) 2016 Japan Total Remuneration Survey(基準時点 2016年6月1日)
(抽出条件) All Data, Total Cash, Median値

同じキャリアレベル(グレード)で比較した場合、「Information Security」というジョブ(職務)は、確かに一般的な他のジョブの平均(「All Jobs」)と比べて、Medhian値ベースで若干高めの報酬水準となっていることがわかる。また、上記データの基準日は今から約1年前なので、現時点ではその差がより一層広がっていることも考えられる。

このように、サーベイのデータを活用して市場比較(ベンチマーキング)することで、感覚的だったり個別事例からしか判断できなかったりする事象について、客観的な分析と判断をすることができる。

上記の例のもう1つの観点として、ITセキュリティ人材を採用できたものの、どのように処遇すればよいか、また採用者の転職リスクをどうやって極小化するか、ということを考えた場合にも、サーベイのデータが役に立つ。

対象者の処遇について、全て報酬で報いるという前提であれば、他社に負けないためにも市場のMedian値は最低限確保したい水準だと考えられるし、また他社比高い競争力を持つ(転職リスクを抑える)ためには、例えば上位1/4の水準(75%ile値)を目指すということも考えられるだろう。そしてまた、採用時に対象者が報酬条件を提示した場合においても、その金額が妥当かどうか(足元を見られていないか?)を確認することもできる。

(データ元) 2016 Japan Total Remuneration Survey(基準時点 2016年6月1日)
(抽出条件) All Data, Total Cash, 25%ile値/Median値/75%ile値

なお、求める人材の適正報酬水準が決まったとしても、上記のようなホットジョブ人材を既存の雇用制度/賃金制度内で処遇できるかどうかは、また別の問題である。なぜなら、現在の日本においては、「職務内容」に加え「年齢」「勤続年数」「職能」といった要素も反映した報酬体系がまだまだ一般的であり、欧米のように仕事によって給与が決まる「職務給」の概念だけでは説明できないことが多いからだ。

「ITセキュリティの高いスキルを有する」という事実だけでは、自社内の既存人材より高い報酬水準で処遇するロジックとならないため、ここにジレンマが生じる。高い報酬水準を提示しなければ望むべき人材は採用できないが、既存の報酬体系のレンジからは上方に外れてしまう・・・。そうなると、そのようなプロフェッショナル人材専用の新たな人事制度を構築するか、既存の人事制度内で「職務給」の要素が強い給与のウェイトを増やすという対応が必要になるだろう。

※現時点で高いスキルを有する人材が、今後も中長期的に高いスキルを保持し続けられるかはわからないため(そのスキル自体が時間経過とともに陳腐化することも十分にあり得る)、個別に有期契約を結び高い報酬水準で処遇するという考え方も当然あると思われる。

いずれにせよ、「職務給」の概念を導入するためには、「職務」=「ジョブ」を明確に定義し、その役割の大きさに応じた報酬水準を決定しなければならない。

マーサーではInternational Position Evaluation (IPE)という役割評価のメソドロジーを用いて、職務や役割の大きさを評価する。またその役割の大きさを相対的な数値で示したポジションクラス(PC)という概念があり、このPCを用いることで自社内のポジションの比較/評価を行うこともできる。さらにPCに紐付いて抽出可能なマーサーの報酬サーベイのデータを用いて、自社の報酬水準と市場報酬水準の比較、自社の競争力評価等を行うことも可能となっている。

職務給の導入/見直しを検討される場合には、これらのデータやメソドロジーのご活用を検討いただければと思う。我々マーサーのコンサルタントは是非そのような皆様のお手伝いをさせていただきたいと考えているし、皆様のお役に立てれば幸いである。


薗田 真一

執筆者: 薗田 真一 (そのだ しんいち)
プロダクト・ソリューションズ シニア コンサルタント

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