海外企業買収後の人材交流活性化に向けて~グローバル共通異動ポリシーの検討~

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海外企業買収後の人材交流活性化に向けて~グローバル共通異動ポリシーの検討~
Calendar2018/01/19

マーサーの任地生計費データ購入企業やグローバルの報酬サーベイ参加企業においては、海外売上高の拡大等様々な目的からクロスボーダーでの買収案件を経験している企業も多いだろう。その中で、PMI (Post Merger Integration) の一環で、海外に人材を派遣する際の処遇を規定した「海外勤務規程」をグローバルで統合した企業はどの程度あるだろうか。マーサーでは、ここ数年、海外企業買収をご経験された企業から、グローバル共通異動ポリシーの策定や、日本本社各種規程のグローバルでの共通化を見据えた改定のご支援をさせて頂く機会が増えている。

日本本社からガバナンスを目的として海外の被買収企業へ人材を派遣する際に、現行の日本本社の海外勤務規程が問題になる事例として以下のような話を耳にする。

マーサーの任地生計費データを取り扱う人事部の方には釈迦に説法だが、海外勤務者の人件費は任地負担が原則である。したがって、本社から派遣された海外勤務者の人件費を負担することになる被買収企業は、海外勤務者関連費用について日本本社に対し詳細な説明を求め、本社の人事担当者には説明責任が生じる。一方、非日系企業であった被買収企業の目を通じて、日本本社の海外勤務規程や海外勤務者の処遇を見直してみると、客観的に見て整合性の取れない非合理な内容や、日本では広く普及している処遇や福利厚生施策がグローバルにおいては必ずしも一般的なプラクティスではないことが判明し、受入側からの納得が得られないといったケースもある。

グローバルのプラクティスに照らして特異であるとみられる可能性のある処遇の一例が、単身赴任者処遇である。グローバルでは、配偶者の仕事や子女の教育環境等から単身赴任を選択することは「ファミリーイシュー(家族固有のプライベートな問題)」と捉えるため、一時帰国の頻度を増やす等、福利厚生施策で単身赴任者をケアする例が多い。その為、日本企業の様に単身赴任者に対して世帯分離のコストを補償する処遇体系を導入している企業は少ない。他にも、慶事や受験の特別休暇は一般的ではない等の違いが存在する。

買収を通じてこうした「日本」と「グローバル」の差異に直面し、日本本社の規程を見直すことになった場合、差異の文化的背景を理解した上で、譲れるものと譲れないものを見極めることが重要だ。たとえば、業界慣行として「慶事」は大切なので慶事の特別休暇を廃止しない等、個々の業界や企業の歴史や処遇に対する考え方に応じて、差異への対応は異なるはずだ。

また、今後想定される派遣パターンや派遣規模によっては、単に日本の規程を改定するのではなく、グローバル共通の異動ポリシーの策定の検討が望ましい。例えば、中国拠点の熟練技術者の他アジア新興国への派遣や、欧州の幹部人材の中東・アフリカへの配置等、三国間異動の活性化が進み、派遣元と派遣先パターンが複雑化すると、異動案件個別の対応では限界が生じる。同一拠点に複数国からの海外勤務者を受け入れる場合、受入国の人事担当者の混乱や、処遇の差異に対する不満を持たれるリスクを最小化する上で、グローバル共通異動ポリシーの策定が望ましい。

優秀な人材の海外への派遣に必要不可欠である「海外勤務規程」や被買収企業も含めたグローバルの人材の最適配置を実現するための「グローバル共通異動ポリシー」は、グローバルで事業運営していく上で欠くべからざる重要な人事インフラのひとつである。M&Aを機にしたグローバルでの人材の流動化や将来的なグローバルキャリアパス構築の下地作りを促進する為にも、今一度自社の規程やポリシーの内容を見直してみてはいかがだろうか。


大川 環

執筆者: 大川 環 (おおかわ たまき)
プロダクト・ソリューションズ コンサルタント

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