許容可能な流動性リスクの検証 

06 1月 2021

日本の企業年金におけるプライベートアセット

長引く低金利環境の中、日本の企業年金においてもプライベートアセットの活用が進んでいる。こうした中、プライベートアセットの活用が先行している海外の年金や日本の金融法人と比較すると、日本の企業年金がプライベートアセットを活用する際、「オープンエンド型ファンド」への選好が強い点が大きな特徴として挙げられる。

オープンエンド型ファンド vs. クローズドエンド型ファンド

プライベートアセットでは、「クローズドエンド型ファンド」が主流であるが、コア・コアプラス型の不動産ファンドではオープンエンド型ファンドが主流である他、コア・コアプラス型のインフラストラクチャーでも一部オープンエンド型のファンドが存在している。日本の企業年金にオープンエンド型ファンドがより支持されている背景としては、安定的なインカム収入を生み出すこれら資産クラスの特性が、日本の企業年金が選好するリスク・リターン特性に合致したことも一因であろう。一方、低流動性資産に投資を行いながらも流動性リスクを取りたくないという漠然とした心理も、日本の企業年金の中でオープンエンド型ファンドがより支持される一因と考えられる。「運用期間が〇年以上のファンドは対象外」という声を聞くこともあるが、これはそうした心理の現れといえるのではないか。

流動性リスクの把握とプライベートアセット投資の関連性

オープンエンド型ファンドは定期的に一部解約を受け付けるものもあるが、根本的にファンドの解約期間とファンドの投資対象の流動性がマッチしている訳ではなく、経済危機が発生した際などの解約殺到時には解約制限も見られる。プライベート資産への投資の場合、オープンエンド型ファンドに投資を行う際も解約できないことを前提とし、ALM分析で許容できる流動性リスクの範囲内で資産配分を行うことが肝要である(図表1参照)。

 

【図表1】 年金基金の概念的なバランスシート

出所:マーサージャパン

許容できる流動性リスクの程度を確認した後には、具体的にどの資産クラス・サブ資産クラスに対してどの程度配分するべきかを検討した上で、特定した資産クラス・サブ資産クラスのベスト・マネジャーで構成されるポートフォリオを構築することが重要だ。間違ってもファンドのストラクチャー(オープンエンド型であることなど)を優先して、特定の資産クラスに集中的に投資を行ったり、マネジャーの質を劣後させるべきではなく、こうした状況を避けるためにも許容できる流動性リスクをしっかりと把握しておくことは、成功裏にプライベートアセットに投資を行うための重要な前提条件であると考えられる。
著者
細谷 弥穂

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