ゲーム関連業界における変化:報酬サーベイ活用の広がり 

17 11月 2021

はじめに

2021年、マーサーが実施しているハイテク報酬サーベイにおいて、ゲーム関連業界で大きな変化が生じた。ベンチマークニーズの機運が高まった結果、業界内でお声掛けをいただき、従来3社だけだった当該関連企業のサーベイ参加社数が一気に11社まで増加したのだ。本サーベイには、任意の企業を最低10社以上ピックアップし、そのグループ内で報酬比較ができるピアグループという機能がある。今回11社のゲーム関連企業が参加したことで、このピアグループ機能を同業界群で活用できるようになり、より精緻なベンチマークの実施や、取得するデータの具体性/納得性が高まったといえる。本コラムでは、各社のサーベイ参加における背景や目的、実際のサーベイの調査結果から読み解く分析例を紹介したい。

 

報酬サーベイ参加の背景/目的

今回ゲーム関連企業からヒアリングを行ったところ、サーベイ参加の一番の目的は ”自社の報酬競争力の可視化“ であった。これまでは、自社の報酬水準が低いという漠然とした声が社内で挙がっている一方で、比較したい企業が含まれている適切なベンチマークデータがないため、マーケットにおける自社の立ち位置を把握することが困難であった。

また、ゲーム系職種の人材流動性は高いものの、採用時には応募者/人材斡旋業者からの言い値になっている例も複数見受けられ、ゲームディレクターやエンジニア、3Dスキルなどの専門スキルを持った人材などについては、希少性や報酬水準も高いため、個別ポジションでベンチマークをしたいという声も大きかった。

昨今、国内においてジョブ型人事制度を検討する企業が増えてきている中で、内部公平性を重視する考え方から外部競争力を意識した報酬水準の設定をする企業が増加しており、加えて、職務(ジョブ)に対してプライシングをするという考え方も徐々に広まっている。これらの人事を取り巻く環境の変化が後押しとなって、自社報酬競争力の可視化や個別ポジションのベンチマークニーズがより高まったと推察される。ゲーム系職種の人材については、自身のキャリアパスやスキル/職務内容が明確になっているケースが多いため、ジョブ型との親和性も高く、これらの動きは今後も加速していくことが予想される。

ゲーム系職種のみならず、デジタル系人材やコーポレート系職種のベンチマークニーズも高く、GAFAをはじめとした企業が参加している国内最大級のマーサーのサーベイを活用した報酬分析の取り組みも進んでいくと思われる。

 

報酬サーベイを用いた自社の報酬競争力の可視化イメージ

このグラフでは、縦軸に報酬水準、横軸に役割の大きさを表すポジションクラス(=ジョブサイズ)を取っている。赤いトレンドラインが自社の水準、黒いプロットが自社実在者の水準を示しており、青いトレンドラインがマーケットの水準を表している。赤く囲んでいる実在者群がマーケット値から外れた人材群であり、可視化を通じてこれら人材群に対する人事施策を検討するための土台として活用できる。

 

個別ポジション(ジョブ)ごとの報酬ベンチマークイメージ

マーサーでベンチマークできるゲーム系職種の一例

Overall Game Design (Media & High Tech)
General Game Art (Media & High Tech)
Game Audio/Sound Effects (Media & High Tech)
Game Content/Plot Design (Media & High Tech)
Overall Game Production (Media & High Tech)
Game Animation (2D/3D) (Media & High Tech)
Game User Interface (UI) Design (Media & High Tech)
Game Art (3D) (Media & High Tech)
Game Development Management (High Tech)
Game Server Development (High Tech)

 

ハイテク報酬サーベイの分析一例

次に、実際のハイテク報酬サーベイの結果から読み解く分析の一例を紹介する。以下のデータをご覧いただきたい。ベンチマークポジションは、「Game Development & Testing - Manager (M3)」 、報酬水準項目はTotal Cash Compensation(年収相当額:基本報酬+諸手当+短期インセンティブ)を掲載している。Game Development & Testingとは、マーサーの中分類の職種*で、ゲームのコンテンツの設計、開発、テストを担当しており、Manager (M3) レベルとは、評価責任のある部下を持つマネージャークラスを指している。

このデータでは、マーケットで優秀とされている人材には高値がついているため、同一職種内であっても50%ile(中央値)の水準と75%ile/90%ileの水準を比べると大きなギャップが確認できた。以下の例では、中央値と90%ileの水準値でおよそ45%のギャップがある。まずはこのマーケットギャップを認識していたかどうか、また、経営判断を通じて、上位水準の優秀とされる人材が自社に必要な人材かどうか、獲得すべき人材かどうかを議論する必要がある。その上で、自社としての方向性を検討していくことになるが、この報酬サーベイでは、貴社の意思決定をするためのサポートツールとしてご活用いただけると幸いである。

* 職種を詳細に分解すると、ゲームまたは関連システムの要件分析とハイレベルなデザイン/モデリングの実施、ゲームの全体的なソフトウェア構造、コア要素、プロパティの設計と指定、プログラミング言語を使用したソフトウェアコードの記述、ゲームの評価とテストの計画と実施などが含まれる。

 

Game Development & Testing - Manager (M3) の年収水準

Data Source:2021 日本ハイテク産業サーベイ(TRD)

 

おわりに

上述したように、ゲーム関連企業では、外部マーケットにおける自社の報酬水準値の把握や、個別ポジションにおける詳細なベンチマークなど報酬ベンチマークのあり方が変容してきている。これらは、国内のジョブ型潮流と相まって、今後も加速することが予測され、サーベイへの参加企業数も増えることでより精緻なベンチマークが可能となる。現状ではまだ道半ばではあるが、マーサーの報酬サーベイによってゲーム系職種におけるジョブプライシングのマーケットが形成され、さらなるゲーム業界の発展に寄与できれば幸甚である。

著者
山崎 悠真

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