NISAよりお得な積立方法 ~ 年金制度の活用 

28 7月 2022

「NISAで投資信託を10,000円購入する度に2,000円キャッシュバックする」と言われたら信じるだろうか。

 

ご存知の通り、NISAとは投資に関する税の優遇制度である。通常、投資で得た収益には約20%の税金が掛かる。ただし、NISAを使った投資では一定期間、投資に掛かる収益を非課税で受け取ることができる。投資信託の売却益だけでなく、運用期間中の配当も非課税となる。NISAとは、運用期間中も受取時も非課税というお得な運用方法なのだ。

DCに加入した場合のメリット

冒頭の質問に戻るが、「NISAで投資信託を購入する度にキャッシュバックをする」と言われたらどうだろう?そんなうまい話はないと考えるべきだ。ただし、これと同じようなことが確定拠出年金(以下、「DC」)を使うと実現できる場合がある。それが、マッチング拠出やiDeCo(個人型確定拠出年金)といったDCの従業員拠出制度である。

DCは、NISAと同様に運用期間中は非課税である。厳密にはDCの運用期間中、特別法人税(DCの残高に1.173%の税金)が掛かることになっているが、DC制度創設前の1999年より課税が凍結され、この20年以上課税されていない。実質的には非課税と言ってもいいだろう。

DCは受取時においても、大幅な税軽減措置がある。DCにおいて残高を受取る際は退職所得として税金を計算する。退職所得は以下の通り計算され、この退職所得をもとに課税される。

 

(退職所得)=(収入金額(退職金やDC残高受取額)-退職所得控除額)/2

 

つまり、退職金等が退職所得控除額以下であれば税金は掛からず、超えたとしても超えた額の1/2しか課税対象にならないのである。退職所得控除の計算式は割愛するが、新卒で入社し60歳まで勤めていれば2,000万円以上の控除枠となる計算だ。NISAと同様に受取時は非課税となるケースも多くあるだろう。

NISAと大きく異なるDC拠出時の税制

拠出時の税制についても触れておきたい。この点がNISAと大きく異なる点だ。DCの従業員拠出は、その年度中にDCに払った金額を所得控除として課税所得から控除できる。所得税および住民税は、総所得から所得控除額を差し引いた課税所得をもとに計算される。日本は累進課税制度であるため、課税所得が高ければ、高い税率が適用されることになる。

では、具体的に、所得税および住民税の税率が合わせて20%の事例から考えてみたい。この時、DCに1万円を拠出すると課税所得が1万円減る。税率が20%であるので支払うべき所得税等が2,000円(=1万円×20%)減少することになる。つまり、従業員がDCに1万円拠出すると、NISAと同様に運用益非課税のメリットを享受しながら、課税所得減少分の2,000円キャッシュバックされたことと同じと言える。

先の例では税率20%と仮定したが、年収が高いとそれに伴い所得税の税率も上がっていく。10,000円の支払いに対し、係長なら2,000円、課長なら3,000円、部長なら4,000円のキャッシュバックを受けられる、と想像してみてほしい。このように考えると非常にお得に思えるのではないだろうか。

10月1日の改正によせて ~ 経済財政運営と改革の基本方針 2022

なお、iDeCoは2022年10月に改正が予定されている。企業型DCに加入している場合は、規約でiDeCoへの加入を認めていないとiDeCoへの加入ができなかったが、2022年10月1日からは企業型DCに加入している人でも原則iDeCoに加入できるようになる。

また、政府の骨太方針2022(経済財政運営と改革の基本方針 2022)では、iDeCoの改革やNISAの拡充を含めた「資産所得倍増プラン」を本年末までに策定する事とされている。今後もさらなる使い勝手の向上が期待できると言える。この機会に、一度、ご自身がどの程度DCへ拠出できるのか確認してみてはいかがだろうか。

著者
寺澤 恭輔
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