DEI

「バリューズ(大切にする価値観)-新しい価値の創造・個の尊重・社会への貢献-」に基づく「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進」 

イノベーションを支える多様性の文化

DEI ロールモデル対談 第1回

渡邉 夏海 様

株式会社リクルート リスクマネジメント室 リスクマネジメント推進部 部長

株式会社リクルート新卒入社。営業や企画職を経て、人事全般の業務を経験。その後、経営企画室にてR&D部門や海外子会社の企画統括及びグループ子会社に対するコーポレートガバナンス業務を担当。リクルートの会社統合プロジェクトをリーダーとして牽引したのち、21年4月の会社統合後は、リスクマネジメント部門にて、グループ全体のリスク分析や各施策を推進中。複数の子会社の監査役も担う。


インタビュアー:須藤実彩
組織・人事変革コンサルティング部門 アソシエイト

「自ら機会を創り、機会によって自らを変えよ」の言葉がターニングポイントに

渡邉様のこれまでのキャリアについて教えてください

2002年にリクルートに新卒で入社しました。当時は就職活動で、結婚したら仕事は続けますか?等、面接で聞いてくる会社もあり、まだ女性への差別が残るような時代だったのですが、リクルートは女性が社長を務めており、男女差なく能力が認められる会社だと思ったことが入社の決め手の一つになりました。営業を経て人事部へ異動し、新卒・中途採用から人事制度、労務、教育、システムまで人事領域における業務を一通り経験しました。その後は経営企画でR&D部門の企画統括、海外子会社のガバナンス等を担当し、2021年4月の国内7社統合のプロジェクトリーダーを担いました。

営業を経験した後、経営企画やR&D、人事など、様々なコーポレート部門を複数経験してきましたが、これは珍しいキャリアだと思います。背伸びし、挑戦する機会を沢山掴めたと思っています。創業者の江副が大切にしてきた「自ら機会を創り、機会によって自らを変えよ」という言葉があるのですが、とにかく自分に足りないもの、経験した方がいいものは何か、常に考えながら、機会を掴むことによってジャンプアップしていきたいと考え、上司や周囲に発信してきました。

 

若手時代のターニングポイントについて伺えますか

新人時代の上司との出会いです。新規開拓営業をしていたのですが、「出る杭は出ろ」というマネジメントスタイルの、自身の強みを引き出して磨いてくれる上司で、枠にとらわれず、「あなたはどうしたい?」が口癖のような方でした。また、上司は、失敗したら全部責任取るから、安心して飛び込んでいいぞ、といつも挑戦を後押ししてくれたので、のびのび仕事に取り組むことができました。

営業職も私に向いていたと思います。成果・数字で評価される世界なので、男女差や年次は関係ありません。その点が、自分の社会人スタートに非常に合っていました。

タイトルが付くことの意味を実感した管理職時代。メンバーに安心感を与え、一人ひとりが活躍するチームを構築するということ。

次に、初期管理職時代のターニングポイントについて伺えますか

リクルートの経理や人事、法務を担う子会社に所属していた時代に10数年続いていた給与計算のアウトソースの内製化を経営会議に起案したことです。マネージャーになる前後のタイミングで提案しました。一番印象に残っていることは、自分自身は変わらず、発言内容は同じであるのに、マネージャーという役職が付いた後は、その分、責任度合いが上がったという事で、その責任を持つ人の発言となり、周囲の人の動き方やサポートの仕方が変わった点です。重要な施策を前に進める上で、組織長という役割が、1つの武器になるという事、この点は、今でも自分が組織長として様々なテーマに挑戦し続けたいと考える理由です。

上級管理職のころのターニングポイントについても伺えますか

会社再編プロジェクトのリーダーとして社長直下の経営企画室で1年半かけて統合を実現しました。組織風土も制度も異なる7社を1つに統合するというもので、非常に難易度が高く、関係各所との調整や統合設計、推進は、かなり大変で、自分自身の力不足を感じ、悩む事も多かったのですが、当時の上司から、沢山の叱咤激励とアドバイスを貰いながら何とか形にする事が出来ました。上司がやった方が早い事も見守ってやらせてくれた、この事は本当に自分を成長させたと思います。

 

メンバーを率いて、これらのプロジェクトをリードされたと思いますが、メンバーマネジメントにおいて意識していることはありますか

自分がリーダーである以上、メンバーに安心感を与えるマネジメントを心掛けています。メンバーには評価を気にするのではなく、存分に自身の力を発揮してほしいので、報連相しやすい雰囲気作りには気を遣っています。困った時にすぐに相談をくれる関係性は非常に重要だと思っています。また、プロジェクト立ち上がり期に、メンバーにとってストレスがない環境を作るというのも、管理職の仕事だと思っています。

チームの関係性が良く一人ひとりの強みが発揮されていて、高い成果を上げている状態を常に目指しているので、周囲やメンバーから「いいチーム」と言われる事が一番嬉しいですね。

「個の尊重」とPay for performance を根幹に、制度や個人が選べる手段を整える。D&I施策は会社の経営戦略、という文脈の中で捉えることが肝要

渡邉様ご自身にとって良かったリクルートの仕組みや特徴などはありますか

リモートワーク制度です。コロナ以前の2015年頃から導入が進んでいたため、コロナ禍でもスムーズに業務を遂行できました。通勤時間が短縮された分、子育てに充てることができ、メリハリをつけられるので、とても働きやすいです。元々、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドのような「ミッショングレード制」に基づいて、ミッションの難易度に紐づくグレードと、そのミッションの達成に対して評価・報酬が適応されるというPay for Performance を徹底した人事制度もリモートワークとの相性が良かったのだと思います。

その他、働き方改革を全社的に行っていますが、制度面での改革も積極的に行っている点はリクルートの強みだと思います。マネジメントの立場からコメントすると、メンバーが残業する際は、本当にやらなければいけない必要な残業であるか、休日対応した場合は、必ず休暇を取得出来ているか、等を気にして見るようにしています。

次に、リクルート社のD&I推進施策についてお伺いできますか

リクルートグループでは創業当時から「個の尊重」を大切にしてきていて、D&I推進はその価値観を体現することそのものです。 会社の風土として「どのような人生を歩んでいきたいか」「何を実現したいか」「どうしたいか」という本人の「WILL」(意志)に寄り添うコミュニケーションが多いのも、その価値観が浸透しているからだと思います。また、競争力の源泉が「人」であるリクルートにとって、D&I推進は競争戦略の一環に位置付けられています。

このような位置付けの下、一つひとつの施策を現場の実態や課題感を踏まえた上で、社員が企画・運営をしています。それぞれの施策が圧倒的な成果につながっているのは、丁寧に現場社員の声を聞いており、その声を施策に反映するための予算獲得ややりっぱなしではなく、振り返りのPDCAもちゃんと回しながら力を入れているためだと思います。一度作られた施策も常にブラッシュアップし続けており、形骸化することがありません。

また、このようなD&Iに関する施策やイベントの参加は全て挙手制であり、社員の自発的な行動を引き出していることも強みだと思います。

 

リクルート社において、D&I施策が経営施策として捉えられている背景をお伺いできますか

リクルートグループは、グローバル化、デジタル化に伴い、事業環境やビジネスモデルが目まぐるしく変化しています。そのため、今までのマネジメントや、これまでの人材要件だけでは事業成長できないということが明確に分かっています。変革期の戦略に合わせた人材の確保が必要であるため、自己変容が出来、圧倒的な当事者意識を持つ人材が本当にその能力が輝く場所で活躍しないといけない、という考えが根底にあります。会社が進化するタイミングだからこそ、従業員ひとり一人に期待し続けるD&I施策の重要性が問われています。

キャリア形成に正解はなく、自分はどうしたいか、どう生きたいのかを問い続けることが重要。

最後に、これからのキャリアを切り拓いていく若手へのメッセージをお願いします

将来設計に関し、不安に感じる気持ちは分かりますが、究極的には、自分はどう生きたいのかが大事だと思っています。色々な制約や自身の思い込み、不安などを取り払った時に、どのように自分のキャリアを生きていきたいのか。プライベートも含めてですが、「自分はどうしたいか」を大事にして頂くとよいかなと思います。それに合わせて、会社の制度を活用していくと良いと思います。

特に、女性で管理職になることへ不安を感じる方もいるかと思いますが、仕事はチームで行うものですし、マネジメント側一人が完璧である必要はありません。本質的に私利私欲なく、目の前の仕事に取り組んでいれば、周囲の協力は付いてくるものです。きっと大丈夫。頑張れ、と強くメッセージを送りたいと思います。

 

2021年10月11日 対談実施

写真撮影のために一時的にマスクを外しています

【編集後記】

本インタビューでは、前段で渡邉様のキャリアを紐解き、後段で渡邉様のキャリアを支えたリクルート社の取組みについてお話を伺いました。
渡邉様が遂行された数々のプロジェクトのご経験から、常にチャレンジし続ける姿勢の重要性を学びました。また、渡邉様の温かみのある雰囲気からも「メンバーに安心感を与え、強みを引き出す」というマネジメントスタイルを実感することができました。

リクルート社の取組みにおいては、自社のバリューズ(大切にする価値観)-新しい価値の創造・個の尊重・社会への貢献-を体現することそのものであると定義されているのが印象的でした。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉に代表される個の尊重・Pay for Performanceといった創業当初からの強い企業文化を保持しながらも、グローバル化・デジタル化といった環境の変化に対応していくために、経営陣のみならず社員一人ひとりがなぜDEI推進に取り組むのか(Why)、どのように理想の姿に近付けていくのか(How)を考え抜きやり抜いている。競争力の源泉を「人」と明確に定義されているリクルート社の、DEI推進に対する強いコミットメントを感じることができました。

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