過去と将来のパフォーマンスの関連性|マーサージャパン

過去と将来のパフォーマンスの関連性

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過去と将来のパフォーマンスの関連性
Calendar2019/04/12

「過去のパフォーマンスは必ずしも将来を示唆・保証するものではなく、ファンドへの投資は損失のリスクを伴う」という主旨の文言がある。運用会社のファンド商品説明資料でお馴染みの文言だが、実際にはファンドを選定する場において、過去のパフォーマンスが意思決定に大きく影響している場合が多いのではないだろうか。更に言えば、機関投資家の意思決定ではベンチマークに劣後しているようなファンドは資産運用委員会等のファンド選定を決定する場はおろか、そもそも事務方でショートリストに絞り込む段階の俎上にすら載らない場合が多いように見受けられる。明快で分かり易い過去のパフォーマンスに着目してファンドを選定することは、意思決定のプロセスを前に進めなければいけない事務方にとって動機があるが故と察することができる。しかし、実際に過去のパフォーマンスに基づいて選定したファンドはどのような結果をもたらすのであろうか。簡単に過去と将来のパフォーマンスの関連性について考えたい。

過去と将来のパフォーマンスの関連性を考えるにあたり、簡単な検証を試みた。まず、対象とするファンドをMSCI Worldをベンチマークとするグローバル株式運用として、マーサーが保有する運用機関のデータベース(Global Investment Manager Database : GIMD™)から約1,100件のファンドについて、過去30年分の時系列パフォーマンスデータを抽出する。その時系列パフォーマンスデータを5年刻みに6期分の累積パフォーマンスを算出し、任意のt期を過去のパフォーマンス、t+1期を将来のパフォーマンスと見做して比較する、というものである。なお、生存バイアス(何らかの理由でファンドが清算されると、そのファンドはデータが提供されずに集計もされないので結果が実態より上方に出る)が考えられること、そして5年という期間がパフォーマンスを測定する期間として適切か否かについては検討の余地があることには留意したい。また、パフォーマンスが5年に満たない場合は比較対象外とする。

図表1はt期のパフォーマンスをアンダーパフォーム(ベンチマークに劣後)したファンドと、アウトパフォーム(ベンチマークより優位)したファンドに分けて、それらのファンドがt+1期にはアンダーパフォーム/アウトパフォームのどちらであったか、その比率を6期にわたり算出して平均値を示したものである。結果として、前述の通り、若干の生存バイアスが推測されるが、 t期にアウトパフォームしたファンドを選定しても、t+1期もアウトパフォームするかどうかは概ね50%、つまりコイントスと同じランダムに近いという結果であった。逆にt期にアンダーパフォームしたファンドを選定しても、ほぼ同様の結果である。図表1ではパフォーマンスのベンチマークに対する「方向」を示したが、次の、その「大きさ」を確認したい。

図表1:任意のt期とt+1期のパフォーマンスの比較

 

図表2は、図表1と同じ条件・データに基づき、t期のパフォーマンスを四分位ごと分けて、t+1期のパフォーマンスのパーセンタイルランクの平均を示したものである。結果は、t期のパフォーマンスのいずれの四分位も、t+1期のパフォーマンスでは概ね中央値に収斂するというものであった。t期のパフォーマンスが上位25%であっても下位25%であっても、t+1期には平均的なパフォーマンスとなるのである。

図表2:任意のt期とt+1期のパフォーマンスの四分位別比較

 

上述の検証は素朴だが過去のパフォーマンスという基準でファンドを選定することへの危険性を示唆するには十分なものではないだろうか。ではどうすれば良いか。まず上述の検証が持続的にアウトパフォームするファンドの存在を否定するものではないことに注意したい。その上で、過去のパフォーマンスに依拠したいという誘惑を抑えつつ、ファンドの投資アイデア、ポートフォリオの構築、執行、そして運用会社の安定性といったポイントについて、内部・外部のリソースを用いながら情報収集を行い、高い確信度を持てるファンドを地道に発掘していくことが求められる。更には、ファンド単体だけではなく、自らのポートフォリオにはどのようなファクターを持つファンドを補完すべきなのか、その際にはどのような実装が考え得るのか、といった運用機関構成も並行して検討する必要があろう。


辰己 有

執筆者: 辰己 有 (たつみ ゆたか)
資産運用コンサルティング
コンサルタント


 

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