厚生年金基金制度改革法について | マーサージャパン

厚生年金基金制度改革法について | 年金ニュースレター第20号

年金ニュースレター第20号

厚生年金基金制度改革法について

奥平 剛次

執筆者: 奥平 剛次(おくひら たけつぐ)

年金コンサルティング シニア アクチュアリー

 2013年6月19日、厚生年金基金制度改革法案(「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」平成25年4月12日提出)が、国会にて承認され成立した。

 本法律の内容は、「厚生年金基金(以下「基金」)が一部代行している公的年金にかかる資産の保全を図るため、財政状況が悪化している基金から順次解散または他制度への移行を促し、10年以内に基金制度そのものを廃止させるか否かを政府が検討する」というものである。

 施行日は2014年4月となる見込みであり、詳細は今後政省令等により示されるが、本稿では今回の法改正のポイントを概説した後、現在基金制度の大半を占める総合型基金(同業種または同地域の企業によって設立された基金)に加入している企業が留意すべき事項をいくつか挙げてみたい。

 まず、基金制度の基本事項について整理しておく。
 基金制度は、下図のような二層構造から成り立っている。

 

 代行部分の債務を「最低責任準備金」といい、解散または代行返上して他の年金制度に移行する場合、この債務額を国に返還する必要がある。
 また、上乗せ部分に対応する債務として、加入者や受給権者に最低限保障すべき額を賄うために必要な額を「最低積立基準額」という。ここで、代行部分の最低積立基準額=最低責任準備金となる。

 さて、今回の法律のポイントは以下のとおりである。

1.【施行日から5年以内】
 年金資産が最低責任準備金を下回る基金(以下「代行割れ基金」)に対し、原則自主解散を促す。そのためのインセンティブとして、この期間内に「特例解散制度」を申請することにより、最低責任準備金の減額および最低責任準備金の不足額の分割納付期間の延長などの緩和処置を享受できる。また、この期間に限らないが、今回の法改正によって、自主解散の際の同意要件が緩和され、代議員・事業主・加入員の3/4以上の同意が2/3以上となったことで、解散へのハードルは下げられている。

 さらに、代行割れ基金の中でも特に財政状況が厳しい先は、厚生労働大臣から清算型基金と指定され、清算計画の承認をもって解散することとなる。なお、清算型基金も上記「特例解散制度」の緩和処置を享受できる。

2.【施行日から5年後以降】
 代行割れはしていないが、年金資産が「最低責任準備金の1.5倍以上」または「最低積立基準額以上」のいずれかの要件を満たさない基金(以下「代行割れ懸念基金」)については、厚生労働大臣が解散命令を発動することができるというものである。なお、代行割れ懸念基金は、1.の期間においても「特例解散制度」が適用されない。

3.【施行日から10年以内】
 施行日から5年後以降も2.の条件をクリアし続ける財政状況の良好な基金(以下、「健全基金」)は、基金制度として存続できることに現時点ではなっているが、政府の検討結果によっては、基金制度自体が廃止される可能性がある。つまり、健全基金についても、他制度への移行または解散しなければならないかもしれない。

 



次に、総合型基金に加入している企業が留意しておくべき事項について、基金の財政状況別に挙げてみる。

代行割れ基金に加入している場合

 基金が解散する際、最低責任準備金に対する積立不足額を加入企業が拠出する必要があるため、いつ解散するのか、また特例解散制度による最低責任準備金の減額により自社の負担額がいくらとなるかが客観的合理的に判明次第、財務諸表に前もって債務認識(引当金を計上)しておくことが望ましい。

 また、解散後は上乗せ部分の給付がなくなるため、従業員の不利益解消のため、会社からなんらかの補填策を講ずることを検討しておく価値はあるものと思われる。

代行割れ懸念基金に加入している場合

 基金が解散を選択した場合、最低責任準備金を国に返還した後の残余資産は、加入員・受給権者等の上乗せ部分の最低積立基準額に応じて分配される。つまり、従業員は分配時点で仮に退職した場合に受け取れるはずの給付額(要支給額)が保障されているわけではない。よって、代行割れ基金の場合と同様、会社からの補填策を検討しておくことが望ましい。

 また、基金が解散を選択する前に基金から脱退する場合は、脱退時点における基金の積立不足の自社分を一括拠出するのと引き換えに、基金から従業員へ要支給額が給付されることとなる。しかしながら、脱退時点で既に上乗せ分部分の年金受給資格(例えば加入期間20年以上)を満たしている従業員が、年金での受給を選択し受給者あるいは受給待期者として基金に残った場合は、基金の解散時に、当該者への分配額が年金の価値を含めた要支給額を下回ってしまう可能性がある。基金から脱退する場合は当該リスクについて、従業員に十分に説明しておくことが重要となる。

健全基金に加入している場合

 今回の法改正で10年以内とされた政府の検討結果の前に、基金が解散または他制度への移行を選択する可能性はありうる。この場合、財政状況の違いはあるものの、「代行割れ懸念基金」と同様の留意事項を理解しておく必要がある。

 総合型基金は、多数の企業により運営され、意思決定は代議員会における合議制によるため、一企業の裁量は限定的である。しかしながら、今回の法改正は、従業員の退職給付に対する影響はもちろんのこと、企業財務にも大きな影響を与えるため、株主・債権者への説明責任も重要となる。したがって、今後の円滑な企業運営に向け、これまで以上に現在加入している基金の動向をウォッチし、積極的に関与していくことが肝要であると考えられる。

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