C-Suite Talk Live 第61回 ヤフー株式会社 (3/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第61回 (3/4)

ヤフー株式会社

GUESTS:
執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 本間 浩輔さん

合理性に基づいた動機付け

西田 僕が凄く印象的だったのは、本間さんの本を読んだり、記事を拝見しての感想ですけれども、この分野で凄いと言われている人がいらっしゃいますよね、例えばLIXILの八木さんとか、サイバーエージェントの曽山さん、コマツの日置さんなど。そういった皆さんはご自身の人事哲学と言えるような揺るぎ無い信念を持っていらっしゃいますが、本間さんの言動はそれらをことごとく網羅していらっしゃるなぁと。

本間 まあ、読んでいますからね、あの方々の本を(笑)。世の中のMBAである人事コースって人事マンを作るじゃないですか。でも本来人事は現場のものですよね、そこをやるコースって無いですよね。そこをやるのがマーサーさんのやっている曽山塾や八木塾だったりするのでしょうけど、あれも僕は人事を呼んでいるうちはまだだと思っていて、現場のリーダーに曽山さんとか八木さんが「これで本当にいいのか、制度で何でも語れると思うなよ」ということを語らないとダメですよね。

西田 おっしゃる通りですね。マーサーの場合はそれを次世代リーダーに植え付けるつもりでやっていますが、本来は現役の現場のリーダーが望ましいですね。

本間 僕これ自分のことのように言っていますが、マーサーの古森社長が僕に一つ教えてくれたことが「本間さん、人事制度で人なんか評価できませんよ」と。でも一方で、「1年間一緒に仕事していたら、人の評価はできるでしょ」と言われて、「ああ、それは評価できます」と言ったら、「1年間一緒に仕事をしていれば人の評価なんかできるのだけども、それを好き嫌いで評価すると問題だから、だから評価制度として付けているんですよ」と言われてすーっと腹落ちしましたね。そういうことを現場のマネージャーにどれだけ言えるかということが重要だし、僕が一般化しているのはそういう話だと思います。

西田 本来、人を見る専門家を置くべきとマーサーでは言っていますね。この対談シリーズにも何度も出てきますが、Chief Evaluation Officer的な人です。

本間 それから人はお金じゃ動かないというのを体感して、これも文章にするのは難しいと思うけど、人をどこまで信じるかという話なのですが、信じる裏側にはすごく打算的なものがあるし、松下幸之助の名言じゃないけれども人ほど勝手なものはないなと。何をしでかすか分からないし、放っておくと仕事なんてしないという大前提のもとで、人を信じる。ベースの部分でそういう発想がありますね。その上で人を信じるという話。

西田 それは何に影響されてそのように思うようになったのですか。

本間 人は究極、給料を上げてもそんなに働かないと思うわけです。お金で一生懸命働いた経験は僕にはないから。もちろん、お金は重要なので、いっぱい払うように努力はしますよ。でもじゃあ本当に制度が重要かというとそうでもないし、人って本当に勝手だし、口から出まかせを言うからという前提で、そういうあなたを信じようという。なぜならば、僕がワーッと言うよりも、あなたがやりたいことを前に持ってきてもらった方が合理的だから。人に優しいとか言われるし、人を信じますけど、それは人間観とか倫理観とか道徳観とかじゃなくて、そっちの方が合理的と思っているからやっているだけの話。ここは凄い誤解を受けるのですけど。

西田 たしかに誤解されそうですね(笑)。

本間 ちょっと話は飛びますけど、僕のかつての上司は、昔こういうことを言ったことがありました。人が思い通りに動かなかったら怒鳴れと。怒鳴って聞かなかったらビンタしろと。ビンタしてだめなら蹴飛ばせと。蹴飛ばしてだめなら殴れと。もちろん、全て比喩ですけど、要するに、そこまでしてでも人を目標に向けて駆り立てるのがリーダーの仕事だ、と言われて、何言っているのだろう、この人はと思いましたね。

西田 確かに役割のゴールはそこかもしれませんけど、その手段ですかね。

本間 何故ならその前だけで一瞬動いたとしても、その後絶対長続きしないから。だったら個別面談とかしながら、「お前どうしたいの、何したいの、分かったオッケー、じゃあこの方向で行こう、これをこっちに持ってくれば会社の利益にも結び付くから、その方向で頑張りなよ」と。ただし、それですごく頑張っていても給料が上がるペースはこっちよりも遅いけど、そういうお前を俺は好きだなという風にするのと、どっちが合理的ですか、ということですね。これを周りの人は人間愛と取るのですけど、僕はすごく合理的に人はどういう風にしたら動くのかと考えているので。

西田 行動心理学的ですね。

本間 そこに愛はあるのかないのかという話をしたら、無くはないけど。

西田 今の若い人だと「うざい」という言葉に象徴されるのかもしれませんが、余計な関わり合いを持とうとする人を避けるような部分がありますね。

本間 ヤフーでは隣の人とメールでコミュニケーションをしたりする人もいるわけで。どうしてやっているの、と聞くと、履歴を残すためとかね…。あとは、一回彼と話したといったって、文字で伝わるものと見て感じた同じ風景とでは、全然違うはずですよね。

西田 違いますね。

本間 濃密な人間関係を作って、それを面倒くさくても上手く回していくという風にしないと、上手くいかない。ただ、日本人ほど勤勉な民族はいない。だから日本の人事はだめになるのだと思うけど、まともな人事制度を入れなくても勤勉に働くでしょ。象徴的な海外の話を知っていますか?

西田 どんな話でしょう?

本間 君はすごく優秀だから給料を倍にしてあげると言ったら、翌日その人は午前中来なかったと。なぜかと聞くと、給料が倍になったから働く時間は二分の一で良いと。笑えない話ですよね。そんな国がたくさんある中で、この日本においては、放っておいても概ねサボらず7割8割が仕事をしてくれるってまず素晴らしい国民性なわけですよ。そこをもう少し上手くやってあげれば。それは人事の仕事だし、究極的には現場のリーダーの仕事だと思う。

西田 昔から日本人にはお天道さまに恥じないように生きるという高い道徳観がDNAに刻み込まれていますから、それを強みとして企業ももっと生かしていく方法を考えていくべきということですね。

本間 日本人の勤労観は極めて重要ですね。

人間理解に必要な宗教観

西田 そんな中で外国人との関わり方というのは何かお考えがありますか。

本間 さっき言ったように人間は非常に勝手なもので、その上で人を信じるのだと。だから、ある程度保険も掛けながら、見るところはチェックして、でも型にはめるのではなくて、その人の才能と情熱を解き放つ。コーチングなんかできれば、何のために生まれてきたのと、あまりそういう話はかなり仲良くならないとしないですが、でもこの1年で一番モチベーションを感じた仕事って何かと聞いて、なんで嬉しかったの、なんで面白かったの、ではそうしよう、と意味付けして走らせるというマネジメントがベースだと思うし、外国人もそうなのですよね。個別性というか。その人の可能性を本当に信じるというか。

西田 拠り所って、突き詰めると、例えばアングロサクソンの場合は聖書であったり、普段関係ないと思っていても、追いつめられると出てくるものってありますよね。日本人は逆に無宗教と言いがちですが、しっかりとした宗教観がないと無宗教って本当は軽はずみに言ってはいけないのだと思うのです。敢えてタブーの話を持ち出すと、宗教って人材育成の面でも企業に関わってきますよね。

本間 重要だと思います。宗教は理解したほうがよいです。思いつきなので答えになっているか分からないけど。二つの側面があって、リベラルアーツと呼ばれる部分のある割合は、特に日本人は宗教を学んだほうがよいだろうというのが一つ。それと同じレベルで行くと、職業観とか価値観って追わないじゃないですか日本人って。哲学的というか。そのあたりを考え抜いている人達と、通り一遍の評価のためにやっている人達と、それは全然モチベーションが違いますよね。

西田 相手の宗教を理解せずにして本当にその人達を理解したとは言えなくて、でも何も知らなくて、それだとやっぱり根源的な判断の軸が分からないままだと思いますね。さっきの給料が2倍になったから働くのは半分でいいというような、そういう考え方がどこから来ているかということに繋がると思うのです。意外に宗教観から来ているというのはあると思います。

 

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