C-Suite Talk Live 第64回 株式会ーク・ライフバランス (1/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第64回 (1/4)

株式会社ワーク・ライフバランス

GUESTS:
代表取締役社長 小室 淑恵さん

C-Suite Talk Live 第64回 ~対談エッセンス~
  • 復職支援プログラムからの起業
  • ワークライフバランス報酬という考え方
  • 国際女性ビジネス会議で人口オーナスをベースに課題を整理
  • 2016年女性活躍推進法案

復職支援プログラムからの起業

鴨居 小室さんご自身やワークライフバランスの企業としての活動内容はすでに色々な場を通じて多くの方がご存知だとは思いますが、まず最初に、小室さんがワークライフバランスということをビジネスの核にした会社を立ち上げてみようと、お考えになられた背景をお話しいただけますか。

小室 ありがとうございます。ワークライフバランスということを本業にしようと思った私の最初の問題意識は、前職の資生堂に勤めていた時に感じたことが原点です。女性の社員が育児休業からなかなか復帰できない、あるいは復職されても、結局早い時期にお辞めになられる方が多いというところに疑問を感じ、復帰支援プログラムを作ってみたいという点がスタートでした。
そして社内ベンチャーとしてプログラムを作り、企業さんへご紹介をしていく中で、育児で休んでいる女性も重要である一方で育休を取る男性もいるという視点が入って来て、さらに「うちは女性の育児より仕事で体調を崩して休んでいる男性のほうが多い。」という話が多く聞かれ、会社を休む理由というのは女性の育児から来るものだけではないという点に気づいたんです。 また、『介護』で休む男性の数が『育児』で休む女性の数を越えているというお話も聞いて、仕事を休まざるを得ない人の背景はずっと多様であるという事実から、女性の育児の視点だけで消化されるべき問題ではないんだなっていうのが、もうひとつの起点になりました。


鴨居 女性の視点で始められた活動で、より大きな課題が見えてきたということですね?

小室 はい、その通りです。また、復帰支援はどの企業さんも進めていらしたのですが、復帰した後に結局お辞めになられたり、体調を崩してまた休業に入ってしまう方が多い企業の特徴も見えてきたんです。それは復職後の長時間労働が原因でした。私はそれまで、復職の支援が大事だと思っていましたが、実は、復職してからのキャリアの中で仕事とご自身の生活の両立をしていく時間の方がずっと長いという点を再認識することになりました。
『一人前の労働者』というのは『時間外の対応ができて、会社からの要望に応じて異動や転勤を受け入れることができ、深夜に帰ってくる出張も厭わないというような、会社から見てフルに仕事に時間を使うのが当たり前と思えるような働き手である』というような暗黙の定義があり、それをベースに持つ考え方こそを変えなければいけないのではないか、これからはそうした従来の働き手という定義からさまざまな事情で外れる人の方が多くなるのではないか、という問題意識がふっと芽生えてきたんです。

鴨居 実は問題はもっと深いところにあり、しかも日本の固有の事情もありそうですね。

小室 はい。その問題意識に伴って、政府の白書類などを参考にして日本の人口構造の試算をしていったんです。人口構造は急に変わったりはせず、数字は明確に方向性を示しますので。年代ごとの試算をしていったときに、こんな恐怖をどうしてみんな知らないんだろうっていうぐらいの気持ちになっていきました。時間の経過とともに、この国は働く時間に制約を持つ人だらけになるだろうということが明確に見えたんですね。
その試算をしていたときに見つけた区切りの一つ目が、2007年です。ここは段階世代が一斉に退職を始めるので、労働力人口の減少ということが起きていく年です。もう一つが2017年で団塊世代が一斉に70代に入り始める年です。70代になると要介護率は大きく上昇するため、そうした方たちを介護しながら働く現役世代の人数が、急速に拡大するのが2017年ということです。今から見ると、もうあとたった2年後になってしまったわけですが。そうした労働環境の大きな変化という観点に立って、私たちの働き方を変えないとこの国は大変なことになると感じたのです。一人でこんな壮大な課題にどう取り組もうかと非常に焦ったのですが、同時に今すぐやらなければいけないということも明確に意識しました。

鴨居 その事実を明確に意識された時は、大変なプレッシャーだったでしょうね。そして、その課題意識に対して実際に行動を起こすために、資生堂を退職されたんですね。

小室 はい。辞表を出したのが、2005年の夏でした。

鴨居 そのような壮大な課題認識の元に、資生堂さんのようなしっかりした企業を飛び出してみようというのは、すごく勇気のあるアクションだと思います。確かに労働人口の減少は大きな日本の社会・経済問題ですよね。私自身も両親が共に倒れた時期があり、労働環境という広い視点と私自身の実体験の両面から共感する部分があります。私の実家が遠隔地でもありましたので、週末に通いながら介護をしたのですが、仕事も非常に大変なプロジェクトを抱えた時期と重なり、心身共に非常に疲弊しました。今の人口構造からは、そういう状態に置かれる方たちが2017年を契機に一層増加し、一般的になってくるということですが、残念ながらそれを事実として直視すべきなんですね。一方で、そうした実情にあえて挑戦しようと思ったとき、孤独な戦いだなと感じられたのではないですか。

小室 起業しようと思ったときは、そういうことで日本社会が困るからという、社会のためという意識が自分の中にあり、資生堂に辞表を提出したのですが、その翌日に私自身の妊娠がわかったんです。そこからはもう社会のためじゃなくて、自分自身がどうしていくべきかを考える状況になっていきました。おかげさまで非常に理解のある仕事のパートナーたちに励まされ、彼女たちには「そういう状況だからこそ、一緒に起業したい」と言ってもらえたのですが、普通、ベンチャーの立ち上げ期に残業できない人がいるというのは有り得ないことと思われますよね。時間制約付で起業することで、問題がいきなりわが身ごとになったわけです。さらに、2010年には親のケアも必要になり、そうした自分自身を取り巻く環境の変化からも、一層、自分ごとという意識を強く持ちながら取り組むことになりました。私は団塊ジュニア世代なので、そうした世代の方たちの環境を象徴するような立場になったということかと思います。親の介護をしながら、それから晩産化によって育児とも重なり、一層大変になるということが実際に起きてくるわけです。また、多くのその世代の方たちは、まだ会社の中枢ではなく、その少し手前にいる立場なので、会社はその人達の環境を中心に考えてくれているわけではないのです。とは言え、明らかにこの国の次のボリュームゾーンはそこですから。その世代の人たちがイノベーションを起こしていったり、この国のブランディングを高めていかないと、これからの日本の将来はないと感じ、私自身がその世代の代表なんだと思い始めたところから背水の陣になりましたよね。

鴨居 ご自身が実証実験を進めることになったからこそ、より生々しく、必要なことややるべきことが見えてきたとも言えますね。

小室 そうですね。一方で、私が会社を始めた当時、中枢にいらっしゃった団塊世代の皆さんは自分達が日本経済を発展させたという実証を持って語ってくるわけですから。彼らは成功体験による自信があり、私たちは仮説で話をしていたので、新しい働き方を推奨していくためには生きた証を示す必要がありました。わが社を例に見てみますと、現在までの9年間継続して増収増益で来て、残業ゼロ、有給消化100%です。しかも仕事量は当初の40倍になったのに、社員数はまだ4倍にしかなっていません。このことは、ひとつの証になっていると思います。

鴨居 おっしゃったように、自分たち自身を実証実験としてやってきて、それが成功につながっているという事実の一方、これからも生きた証として、御社自身の成長を継続させていかなきゃいけないってことになりますよね。

小室 色々な目で見られていると思いますし、失敗したらそれ見ろって言いたい人がたくさんいるんじゃないかと思うと、プレッシャーはありますけれども、エネルギーにもなります。

小室 淑恵 (こむろ よしえ)さん プロフィール
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。2006年株式会社ワーク・ライフバランスを設立。
「育児と仕事の調和プログラムarmo(アルモ)」、「介護と仕事の両立ナビ」、「朝メール.com」などを開発。また携帯電話用サイト「小室淑恵のWLB塾」をリリース。 多種多様な価値観が受け入れられる社会を目指して邁進中。二児の母の顔をもつ。著書多数。近著に『残業ゼロで好業績のチームに変わる 仕事を任せる新しいルール』(かんき出版)、『30歳からますます輝く女性になる方法 ~仕事も結婚も子育ても何もあきらめなくて大丈夫!』(マイナビ出版)。
産業競争力会議民間議員。中央教育審議会委員など複数の公務を兼任。
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