C-Suite Talk Live 第1回 株式会社ニューオータニ 代表取締役CFO 川野 毅さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第1回 株式会社ニューオータニ 代表取締役CFO 川野 毅さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第1回(2/4)

Calendar2009/08/10
川野 例えば、「挨拶」をテーマに議論した際は、客室部門が自発的に「お客様への挨拶の前に、自分達で挨拶しあうのが先だろう」と言い出し、朝従業員通用口に4人づつ立って「おはようございます」と挨拶を始めました。一見小中学生のような活動に見えるかもしれませんが、こうやって同僚から挨拶を受け、それに皆が自然に応えていくことで、基本的で重要なことが文字通り身についていくわけです。

古森それを過去4年間、毎月継続して来られたわけですね。本当に効果のある施策というものは、得てして奇をてらったものではなく、愚直に基本的なことを継続する中にこそあるのだと思います。それを、「きな臭くなった」と冒頭に川野さんが言われたここ一年あまりの環境の中でも、続けてこられた。どんなに忙しくても、若手社員が参加しつづけ、経営陣が議論の場を見守り続ける・・・。愚直に継続すれば、これは今後の御社の大きなアセットになるかもしれませんね。

ボスではなく、リーダーを育てることの重要性

古森危機の中で、どのように次世代のリーダー人材を育てていくか。危機をどう生かしていくか。多くの企業が今そうしたテーマで思案しています。川野さんはこの点について、どのようなお考えをお持ちですか。

川野 まず、ホテルの仕事というのは、非常に強い二面性を持っています。宴会の運営などでは、それはもう軍隊的なイメージで規律正しく動かないと、次の宴会の準備が間に合わなかったりするわけです。こうした場面では、組織を統率する役割の人間は「リーダー」という響きよりも、「ボス」という言葉のほうが現実の印象に近いですね。そうならざるをえません。一方で、顧客サービスの本質を考えれば、非常に柔軟で即時性の高い、個々人の「その場その場での判断」も重要です。こちらは、誰かが何かを指示する以前に、個々人が仕事にオーナーシップを持って現場に立つことが鍵となります。また、そういう自律的個人の集合としてのチームワークが求められますね。これまでの傾向としては、組織の要になる人材に「ボス」タイプの要素が強かったことは否めず、チームワークや自律的な発想というのは生まれにくい風土があったと思います。

古森 なるほど・・・。そういった「ボス」的なイメージの中核人材から、御社の将来を踏まえた今日的リーダー人材へと変化していく必要が出てきているわけですね。

川野 それから、過去の成功体験も、変化の障壁になる場合があります。目の前の仕事をとにかくこなしていくことが求められた好況期に「ボスと部下」の関係で育った人達には、今の、そしてこれからのニューオータニを取り巻く環境への直感を持つのが難しい場面もあるでしょう。上からの指示が絶対の時代から、自分の意見を持ち、発言して変えていくというスタイルへと変わっていく必要があります。

古森 まさに変化の時ですね。ところで、「過去の成功体験が役に立たない」という議論はよく耳にするのですが、私はゼロか百かのような形で過去の経験を全否定するのもまた誤りだと思っています。安易に「若手に道を譲るべし」というのも、字義通りに極端な手を打つことは非現実的です。人間はやはり時間の流れの中で生きていく生き物で、過去の経験に照らして物事を考え判断するという行為自体は、極めて自然な脳の機能です。経験の引き出しが全くないところには、勘も働きません。過去の経験が良くないのではなく、時代の流れが加速し続けて過去の陳腐化が早いということですね。そうした中での現実解として重要なのは、直接の体験に加えて、いかに質の高い疑似体験を持つことが出来るか・・・ということだと思います。

川野 質の高い疑似体験というのはまさにその通りで、スマイルリーダーのような活動を継続していくことも、その重要な手段になります。危機の中、限られた人員数で今まで以上の仕事をこなす。兼務が増え、場合によっては一人何役も担っていく。一人ひとりが工夫しながら、必死に発見していく。その中で、これからの時代に求められる仕事へのオーナーシップも研ぎ澄まされていく。ある時期に圧力がかかって仕方なくやることも、その時広がった視野は必ずその後自分のものになって残る。そうした直接的な体験を過去のものとして蓄積しつつ、スマイルリーダーの活動を通じて最新の疑似体験も積み重ねていく。そうした好循環を組織の中に増やしていきたいですね。