C-Suite Talk Live第5回 キユーピー株式会社 研究所長・品質保証本部担当 取締役 和田 義明さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第5回(1/3)

第5回 キユーピー株式会社 研究所長・品質保証本部担当 取締役 和田義明さん
Calendar2009/10/01
C-Suite Talk Live 第5回 ~対談エッセンス~
  • 「深く考える」というDNA
  • 目的ではなく、結果として活性化した組織
  • ひらめきは、無ではなく有から生まれる
  • プロセスへのこだわり~実践・向上・展開
  • 管理職よりも支援職~聴く力、認知する力
  • 「タバコ部屋」的な場の今日的再構築

「深く考える」というDNA

古森取締役になられてから、さらに研究開発部門も担当されるようになって、お忙しいことと思います。研究開発組織の活性化については私も強い関心を持っておりまして、和田さんが今考えていらっしゃることや工夫しておられることを是非お聞かせ頂ければと思います。また、ご担当分野にかかわらず、キユーピーさんという会社の独特の遺伝子のようなものについても、何か伺えれば嬉しいですね。

和田私が考えているというよりは、皆で取り組んでいるものに「深く考える」というものがあります。これはもう、研究開発だとか品質保証だとかいう分野を超えて、全社的にそうです。社長の鈴木自身のメッセージとして、この点がすごく重要です。

古森 深く考える・・・。字面としては簡潔ですが、実践する立場に立てばとても重みのある言葉ですね。実際の現場の動きとしては、どのような感じでそれが生きているのでしょうか。

和田例えば、先般策定された中期経営計画です。一般的には、中期経営計画というのはトップダウンの要件が多くて、それを組織のピラミッドを通して解釈させていくという流れが生まれることが多いですよね。

古森 そうですね。中期経営計画と言いますと、最近のホットトピックの一つです。どのような水準の業績をいつ頃までにコミットするかという点が、昨今の読めない経済環境の中で非常に難しい・・・という悲鳴をよく耳にします。トップダウンだけで計画は書けないにしても、一般的には計画の核となる部分でトップダウンの性質が強くなりがちな作業であることは確かですね。

和田 今ちょうど研究開発部門でやっているのは、そういう一般的なアプローチとはちょっと趣の違うやり方です。ごく一部の人間でたたき台を作るような形ではなくて、部長クラスのセンター長から課長クラスにあたるチームリーダー層まで約50名を集めて合宿して、議論しながら中期の取り組みを決めていくような活動なのです。

古森 参画とか、巻き込みといった視点ですね。

和田 もちろん、中期経営計画で何を約束するかということは経営として非常に重要ですし、現場任せということではないですよ。でも、この手の計画づくりで一番大事なのは、現場の人間が計画内容を「わがこと」としてとらえて、主体的に取り組んでいけるかどうかだと思うんですね。ですから、こうして皆で集まって議論して、とにかく自分達の頭で深く考えていく。しっかり時間を使ってわいわいガヤガヤやって、最後に「分かった」といえる状態になっていく。そのプロセスを持つことが、非常に重要だと思うのです。

古森 合宿というイベントに参加しているという物理的な側面ではなくて、深く考えるという場を現場のリーダー層が共有することに意味があるわけですね。単に「深く考える」ということをスローガンにしないで、こうした個々の行動の中でいちいち愚直に表現していく。

和田 「英知を集める」という活動も、やっています。以前から部門を越えた議論の活動はあったのですが、その展開レベルを上げようと。あるテーマで煮詰まっているときに、全く異分野の人がふと発した言葉で解がひらめいた・・・といった場面が、実際にあるのです。

古森 それも、自分でまず深く考えていない人が会議を招請したら、参加する人も気が乗らないでしょうね。自分の思考のラクをして、相手の智恵に「ただ乗り」するような人がいると、無理でしょう。相手の真剣さのレベルが足りないときに、何かを本気で提供しようという気にはなれないものですからね、人間は。

和田 当然です。皆が深く考えるということが大前提にあって、それで成り立っている活動です。考えていない人が声をかけると、すぐに分かってしまいます。それと、良い考えを出した人を個人としてきちんと認知することも重要です。

古森 深く考えていない人が集まっても、「英知を集める」ことにはならないですしね。

目的ではなく、結果として活性化した組織

古森 そういった、実践の中で深く考えるという活動を積み重ねていく中で、組織も活性化しているという実感がありますか。世間一般では、組織をなんとかして活性化したいという声が昨今特に多いですが。

和田 ありますね。こういうものは完璧という状態はない世界ですので、あくまでも主観ではありますが、弊社の組織は活性化していると思います。でも、「活性化」ですとか、「モチベーション・アップ」なんてことを目的に掲げて動いても、これは駄目ですね。あくまでも、そういうのは結果として起こることです。

古森 深いですね・・・。

和田 以前、ある会議でモチベーションが話題になった際に、こんな議論がありました。現場のモチベーションが低いのではなく、多くの人は高いモチベーションを持っている。でも、それが実践の中で発揮されていく過程で、リーダーが邪魔をしないことが大事だ、と。これは何か権威のある人が言ったわけではなくて、うちのチームリーダーが私に直言してくれたことです。

古森 ある意味、上層部への痛烈な意見とも受け取れますが、そういう意見が陰口ではなくて正面切って出てくるところが清々しいですね。

和田 考えてみたら、当然のことなんです。会社が従業員の「モチベーション・アップ」を目指して何かをやろうと言っても、メッセージの受け手である本人達から見たら、どうなりますか。「モチベーションを上げられる対象なのか、私たちは」と感じたら、それこそデモチしますよね。会社の上層部が良かれと思ってやることも、従業員から見たらデモチの源泉になっていることはありうるわけです。あの言葉を聞いて、はっとさせられましたね。

古森 「組織活性化策」とか「モチベーション向上策」といった言葉を、ここ数年よく耳にします。また、それに意味がある場面もあるでしょう。しかし、答えに対して一足飛びに行こうとする風潮は、やはり今の日本に顕著です。それでは本質を間違える可能性がありますね・・・。例えばキユーピーさんの場合、「深く考える」ということを地道に求め続け、それを認め合うことで、結果として現場の個々人が主体性を持ち、試行錯誤を経験して、何かを見出していく。その個々人の経験過程自体がもう、組織の「活性」そのものなのですね。