C-Suite Talk Live第6回 日本GE株式会社 取締役 シニアHR マネージャー 八木 洋介さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第6回 日本GE株式会社 取締役 シニアHR マネージャー 八木 洋介さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第6回(3/5)

第6回 日本GE株式会社 取締役 シニアHR マネージャー 八木洋介さん
Calendar2009/10/08

グローバル経営時代における「日本的なもの」

古森 海外拠点の話が出ましたが、日系企業の多くが今後もグローバル展開を加速していく中で、何がポイントになると思われますか。もっと言えば、何を生かせるでしょうか。個々の企業の戦略に関わらず日系企業の多くが共有しているカルチャーのようなものも含めて、どう見ておられますか。

八木 俗に言う「日本的なもの」の強さの一つは、「人に迷惑をかけないこと」だと思いますよ。「己を抑える力」と言ってもいい。自分の感情を抑制できる能力というのは、日本人の強烈な強さだと思っています。例えば、ベストセラーでオペレーション・マネジメントの教材にもよく採り上げられる、「The GOAL」という本がありますね。あの背景にある世界は、多くの日本人にとって驚きではないわけです。

古森 「個」や「我」を超えた協調を、自然に仕事の前提にできる・・・ということでしょうか。協働するうえで、人に迷惑をかけないことを自然に気遣う能力と言っても良いかもしれません。たしかに、そういう面はありますね。個人差や世代差はあるでしょうが、依然として大きな特徴だと思います。それが実際にグローバルビジネスの中で活かされていくためには、何が必要でしょうか。

八木 あくまでも、そうした強みは基礎にある特徴のようなものであって、その会社のコアになるものが明確に定義されていなければ、グローバル競争では勝ち残れません。その会社のコアが何で、これから何をしようとしているのか。そのストーリーが見えてくることが大事です。

古森 確かに。企業として積極的に大事にするものを見せていかないと、それなしにただ「迷惑をかけない」人の集まりでは、意味がないですよね。クロスボーダーのM&Aの現場などでも、買い手である日本側の意図が読みきれない状態が長く続いて、相手側がたいへんなフラストレーションをためていることがあります。それがディール・ブレイカーになる場合さえあります。

八木 大事にしたいもの=コアが曖昧なのですね。しかし、曖昧に見える「日本的なもの」でも、定義さえ出来れば伝えることは可能だと思いますよ。

古森 脳科学的に見ると、日本語をベース(母語)にした脳はアナログ特性が強く、その他の多くの言語をベースにした脳はデジタル特性が強いという話があります。だとすると、日本語の世界で生まれた常識をデジタルの世界に伝えるためには、相当な負荷を覚悟した定義や解釈、言い換えなど、いわば信号の変換が必要なわけです。

八木 トヨタ自動車の例で言えば、Toyota Way でしょうね。グローバルに事業を展開していく中で、「日本的なもの」をしっかり説明しなければ勝てないという危機意識があって、大変な労力を割いて取り組んできたと聞きます。いわば複雑系で成り立っている「日本的なもの」を説明するわけですから、その負荷は相当なものでしょう。しかし、不可能ではないということですね。複雑なものだからこそ、説明可能になれば大変な強みになるとも言えます。

古森 そういう日本的な複雑系の価値観が伝わったときに初めて、自己の抑制だとか、他人に迷惑をかけないといった基本的なことの存在意義も、まさにストーリーとして理解されうるのでしょうね。これに付随して、「個人のあり方」というのも大きな論点になりますね。

八木 そうですね。個人のあり方という観点では、例えば「仕事」というものをどう見るかです。会社での仕事というのは、人生において非常に重要なものですが、人生の全てではありません。「議論で負けた」、「その会社にあわなかった」といったような場合に、それを人間として否定されたかのように捉える必要はないのです。

古森 しかし、日本のステレオタイプでは、得てしてそこが一緒になってしまいがちですね。私もある部分、そういう傾向があることを自覚していますし・・・。

八木 会社での出来事というのは、一定のルールのある「ゲーム」のようなもので、そこで「プレイ」しているんだというくらいの余裕を持ちたいですね。もちろん、いい加減にするというのとは違いますよ。あくまでも捉え方の話です。

古森 「ゲーム」と聞くと、誤解する向きもありそうです。でも、英語本来のニュアンスでは、「ゲーム」はいわゆる「遊び」という軽い感覚よりも、詰めていったり駆け引きをしたり・・・という、集中力を伴う活動のイメージですよね。そういう意味での、ゲーム。また、その中でのプレイですね。

八木 GEバリューにフィットしない、あるいは、GEの「勝ちの定義」に貢献できない人がいた場合には、違った場所で活躍するようにハッキリと言ってあげることが大事です。その際、「ゲーム」としての捉え方をしていれば、こういう話が人間レベルの否定にはならないわけです。人間としての自分を持ちつつ、会社にいる間はプロとして、その会社の「勝ちの定義」に沿って成果を出すようにプレイをする。そういう考え方がGEの根底にあると思います。

古森 日本人と海外の人々のビジネス上のコンフリクトを見ていますと、「ゲーム」感覚の重要性に気づかされる場面が確かにあります。つらい場面に陥った際の典型的な日本人の反応は、「話が分かってもらえないなら辞める」とか、「あいつらとはもう話をしたくない」など、感情的なものが多いですね。その気持ちは理解できるのですが、結果としてはほとんどプラスになりません。「プロとしてのゲーム感覚」のようなものは、特にグローバル経営時代の日本人には重要な視点だなと思います。