C-Suite Talk Live第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第9回(2/4)

第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん
Calendar2009/11/12

グローバル経営 vs. 日本人のメンタリティー

古森そのようにして、ビジネスの流れに沿って御社の組織も世界各地に展開して来られたわけですが、実際は色々な努力もあったのだと思います。差し支えない範囲で、お聞かせ願えないでしょうか。

甲斐 メンタリティーという点で、超えなければならないものがたくさんあったと思います。今だって、完璧だとは思っていません。ここはどうしても、日本的なものがベースになってしまいがちですね。

古森業界を問わず、多くの日系企業でチャレンジが必要になっている部分ですね。

甲斐 弊社だけでは変え難い部分もあります。海外での物流がメインになってきたとはいえ、顧客という視点で見れば、依然として日系企業さんは弊社にとって重要セグメントです。私たちはそういったお客様に育てられてきたと言っても過言ではありません。海外の眼から見れば、そういった関係は日本企業特有の風土と思われているかもしれませんが、また、お客様視点では、それが存在する意味もあるということです。

古森 一方で、日本の風土とは全く無縁のお客さんにも、満足頂けるような関係構築が同時に求められている・・・。

甲斐 そうなのです。それで、2003年当時のトップの号令で、「もっともっと現場へ、もっともっとグローバルへ」というスローガンを掲げまして、中期経営計画などを通じてメッセージを発してきたわけです。それから10年近くが経とうとしていますが、少しずつ成果が出て来ているという印象です。まだ道半ばだと思っていますが、確実に変化してきていると思います。

古森 風土やメンタリティーというものには、これまでの競争環境への適応反応という面がありますし、一朝一夕には変わらないですね。2003年に始めてようやく・・・というスピード感にも、現実味を感じます。場合によっては経営トップ数世代をまたぐような、地道な努力が必要なのですね。

甲斐人事関連でも、新しい動きが起こっています。5年ほど前にGHRというグローバル人事の組織ができ、新しい人事のあり方の検討を進めています。現状では、現地組織のトップの多くは日本人が占めています。現地組織内では、フラストレーションがあるかもしれません。そこで、将来の幹部候補生を若いうちから日本に呼び寄せて研修に参加させ、能力を見極めて育てようという取り組みを行っています。35歳くらいから、アジアではもう少し若い世代も含めて、本社主導での育成の輪に入れています。

古森 研修もさることながら、まず「どのような人材が海外各地にいるか」ということを、本社のグローバル人事がきちんと把握するという点が重要ですね。海外人材のタレント・アセスメントやその後の情報の蓄積は、最近ニーズの高まりが感じられますが、まだ十分に実行しえた日系企業は少ないというのが実態です。

甲斐 そこは、弊社ではかなりの精度で見えているのではないかと思います。米国や英国、シンガポールなど現地人材からの役員も既に誕生しています。こうした様々な事実が見えてくることも、日本人側のメンタリティーの変化に好影響を及ぼすのではないかと思っています。

古森 何か象徴的な変化を起こしていくというのも、チェンジ・マネジメントの鉄則ですね。

甲斐イメージだけではなく、実力を発揮してもらうことも重要です。例えば、英国では現地人材から登用した幹部が、われわれが今までおつきあいできなかったお客様の商売をとってくるなど大きな貢献をしています。彼は日本人のメンタリティというか日本人組織の中で何が重んじられるかもよく理解しており、それでいて顧客との交渉場面では欧米風のスマートなプレゼンテーションをやってのけます。

古森そのような事例を、ひとつひとつ積み重ねて社内で共有化していくことも、現実的なグローバル人事機能の役割ではないかと思います。

グローバルIRの重責

古森ところで、グローバルといえば、IRのお仕事は当然海外での投資家対応なども含まれるのですよね。グローバル経営の荒波の中に漕ぎ出す一個のプロフェッショナルとして、体験談などもお伺いできればと思うのですが。

甲斐2008年4月からIRを担当していますが、初めの頃は苦い思いもしました。

古森 やはり、色々ご苦労があったのでしょうね。

甲斐 IRの性質上、外国人投資家を相手に会社の実情をご説明する場面は頻繁にあります。例えば、ヘッジファンドだから・・・ということでもないのでしょうが、とにかく矢継ぎ早に質問を浴びせて来られる方もおられたりします。英語でまくし立てられると、内心慌ててしまうこともありました。今では、大体質問が出るポイントもつかめていますが、担当したての頃はそうはいきませんでした。

古森 甲斐さんは海外勤務のご経験も豊富で、日本人としては、英語はかなりお得意なはずだと思いますが・・・。

甲斐 英語力にはある程度は自信がありましたが、話が通じない。悩みましたね。なんとかなるだろうと思っていた英語が通じないのですから。本当にカルチャーショックを受けました。