C-Suite Talk Live第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第9回(3/4)

第9回 日本郵船株式会社 経営委員 甲斐 幹敏さん
Calendar2009/11/12
古森私も純和風の育ちでしたので、26歳で始めてアメリカに留学した時、現地到着後3日間は蕁麻疹が出て寝込んでしまった記憶があります(笑)。そのカルチャーショックという感覚、分かるような気が致します。

甲斐 それは若いうちだったから良かったですね。年取ってからだと立ち直れなくなるでしょう(笑)。ところで、ほどなく私は気づきました。日本語で話したとしても、十分な会話ができなかったかもしれない面もあったなと。財務的な知識など、IRの場面で必要とされるバックボーンの部分が足りなかったのだと思います。何を聞かれているのか、何を伝えるべきなのかについて、海外でIRを担当できるほどには訓練できていなかったわけです。

古森 英語で何を伝えるか。英語以前に、その根底にあるコンテンツ自体も同時に強くしていかなければならないということですね。それに加えて、財務系の専門用語などもあるでしょうし、投資系コミュニティ独特の言い回しなどもありますよね。そこまでキャッチアップできて、初めてグローバルの舞台での活躍なのですよね。

甲斐厳しい投資家の方々と対等とまではいかなくても、きちんと納得しあえる程度にダイアログを持つ能力は本当に重要です。

古森 単身乗り込むといいますか、自分自身で決着をつける必要がある環境に身を置いて、未知のプロトコルの中で何かを苦労して成し遂げる。そういう危機的な場面の中で、語学もマインドもグローバル化されるように思います。今グローバルで活躍している日本の方々を見ると、そういう経験をお持ちのケースが多いですね。それと、単に苦労すればいいのではなくて、その果てに「通じた」という喜びが必要です。これを経験できたら、語学力は飛躍的に伸びていきますね。お天気の話ではなく、真剣勝負の現場でそれを起こすことが大事だと思います。

甲斐 「IRって何か」と思ったとき、「株価を上げることですか」と先輩に聞いてみました。その先輩は、「違う、株価は相手が決める」と言いました。いわく、「IR担当の役割は、コミュニケーションだ」と。会社の実態を正確に伝えることがこの仕事の役目なんですね。それが国内でも海外でも、やれなければならない。

古森 まさに、真剣勝負の中でのプロフェッショナルとしての成長なのですね。

イノベーションへの取り組み

古森 もうひとつ、日本郵船さんで気になっていたのが、環境関連のイノベーションへの取り組みです。太陽光発電を取り入れた船の実験などもしておられますよね。あれは刺激的です。「イノベーションを組織としていかに生んでいくか」というのは、今とこれからの日本にとって非常に重要なテーマの一つです。少しお話をお聞かせ願えればと思います。

甲斐その船は、アウリガ・リーダーといいまして、2008年12月から新日本石油さんとの共同プロジェクトが進んでいます。実際に2年間ほど就航させてみて、塩害、風圧、振動下での耐久性と、太陽光発電と船舶電力系統との連系を検証するわけです。省エネルギー船の実現へ向けて、実際に動いているのです。

古森 自動車の世界でハイブリッドが脚光を浴びていますが、巨大な船の世界で太陽光の活用・・・。自動車でさえコストがあわないということで、当初は開発自体が危ぶまれたと聞きます。まして船となれば、大変なチャレンジなのでしょうね。

甲斐 その通りです。しかし、アウリガ・リーダーが全てではないのですよ。より大きな取り組みとして、「NYK Cool Earth Project」というものがあります。社長直轄の環境特命プロジェクトです。CO2排出量削減に向けた技術革新と、今後さらに厳しくなっていく国際的環境規制にも対応可能なビジネスモデル変革への挑戦です。

古森 今よりも環境面での縛りが甘くなることは、世界の潮流としてもありえないですね。民主党政権の25%削減の公約が話題になっていますが、仮に日本が言い出さなくても環境規制に関する世界の流れは変えられませんね。であれば、そこに挑戦していくという姿勢ですね。

甲斐 いうなれば、無理難題とも思える目標への挑戦なのですよ。CO2の排出量だけで見れば、船会社というのは確かに多量のCO2を出しています。採掘した原油から、良質な燃料はガソリンとして精製されますが、船の燃料はその残りカスを使っているのだから、天然資源 をそれなりに有効利用しているのではないかと昔は思っていたのですが、もはやそうはいきません。

古森 ははぁ、そのような話は知りませんでした。

甲斐船舶の燃料は硫黄分が出るので良くない、もっと良い油を使うべきだという声も上がってきます。欧州などでは、そういう論調があります。もしそれが規制になってしまったら、船会社の燃料コストは一気に数倍に跳ね上がってしまい、会社経営自体が難しい状況に追い込まれます。そういう現実的な危機感を抱きながら、イノベーションの取り組みがあるわけです。CO2の削減に関しては、造船会社とも検討を進めています。

古森 危機に陥る前に本気で危機感を持てるかどうかというのは、生き残る組織とそうでない組織を分かつ特性の一つです。船のユーザーである御社が変化すべき方向を示すことで、関係する業界もその変化について行く流れが生まれていく・・・。