C-Suite Talk Live第12回 ワタミ株式会社 代表取締役社長 COO 桑原 豊さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第12回(1/4)

第12回 ワタミ株式会社 代表取締役社長 COO 兼 ワタミフードサービス株式会社 代表取締役社長COO 桑原 豊さん
Calendar2010/01/06
C-Suite Talk Live 第12回 ~対談エッセンス~
  • 創業を引き継ぐ者としての責任
  • 理念浸透への徹底した取り組み
  • 「自信」と「誇り」の好循環
  • 仕事とのめぐり合いの中で育つ
  • それぞれの「個」を観て育てる

創業を引き継ぐ者としての責任

古森 本日は、よろしくお願い致します。この対談シリーズ、それぞれの企業や経営者の方々が持っておられる「何か良いもの」「ヒントになるもの」を、世の中に伝えていきたいとの思いで続けております。

桑原 こちらこそ、よろしく。楽しみにしておりました。

古森 早速ですが、御社の社名を聞くと、多くの人々が創業者である渡邉美樹さんのことを想起するだろうと思います。その創業者から経営のバトンを受けて、社長になられたのが2009年6月でしたね。桑原さんの経営方針のようなものを、まずお聞かせ願えればと思います。

桑原 ご存知の通り、外食産業というのは、創業社長が事業を引っ張っている会社が非常に多い業界です。それは何を意味するかと言いますと、二代目でうまくいくことが少ない、ということの裏返しなんですね。

古森 ははぁ、なるほど・・・。

桑原 私、経営を引き継ぐということになって、改めて業界のことを調べて色々と研究してみたのですよ。ところが、私の知りうる限りでは、創業社長からの交代が非常にうまくいった例というのは、ほとんど見当たらないのです。

古森 何か、二代目へのバトンタッチがうまくいかない理由があるのでしょうか。

桑原まあ、考えたら当たり前かもしれません。創業社長というのは、その会社の価値そのものですから。別の人間がトップになった瞬間に、まったく別のものに変わるということがあるわけです。特に、変わり方が問題ですね。うまくいかない共通項があるような気がします。

古森 うまくいかない共通項、ですか。

桑原はい。端的に言いますと、それは「変えなきゃいけない」という使命感ですね。

古森それだけ聞くと良いもののように思えますが。「変えなきゃいけない」も、時と場合によるということでしょうか。

桑原そもそも引き継ぎの時期を迎えるということは、どういうことか。多くの場合、その会社がそれなりに素晴らしいものを積み重ねて生き延びてきたからこそ、次世代への引継ぎがあるわけですね。ところが、引き継ぐ者の心境としては、「自分の存在意義を出さねば」「自分の色を出していかないと」となりがちです。

古森 人々の尊敬を集める偉大な創業者の後を継ぐわけですから、それは当然とも言える感情でしょうね・・・。一種の強迫観念のようなものかもしれません。

桑原 それで、二代目社長が始めがちなのが、新しい事業の立ち上げです。そこまでいかなくても、とにかく今までと違うことをしたくなるわけです。ロゴを変えたり、ブランドを変えたり。本人としては良い意味でやろうとしているのですけど。

古森 ええ、分かります。

桑原しかし、「変えよう」ということが優先してしまうと、成り行きが芳しくない。結果として、二代目社長の人となりまで「らしくなく」なってしまう。失敗する事例では面白いくらい、この「変えようとする」という点が共通しています。

古森 桑原さんの見る限り、変化の取り組みがあだになる場合が多いということですね。ちなみに桑原さんも、変化への衝動をお感じになったのでしょうか。

桑原 私の場合、創業社長が大切につくってきた玉手箱をいかに傷付けずに受け継ぐか。それが現時点での一番大事な仕事だと思っています。自信を持ってそう思います。玉手箱をきちんと置くべきところに置いて、初めて次のことを考えたいですね。

古森 「あえて今は変えない」・・・。「変えられない」とは、全く意味が違いますね。以前、日経レストラン(2009年10月)で渡邉会長と桑原社長が対談されていた記事でも、「起承転結」という言葉を使われていました。今はまさに「承」の時期だと。

桑原 「承」です。もっとも、ワタミの将来を見通した場合の起承転結は、もっと長いスパンでの話ですが。今はその「承」の中でも、初期の大事な時期にあたります。我々の根っこにあるものを、「今、変えない」ことが極めて重要なのです。

古森 なるほど、そこに確信があるのですね。