C-Suite Talk Live第13回 サントリー酒類株式会社 ブレンダー室 チーフブレンダー 輿水 精一さん (4/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第13回 サントリー酒類株式会社 ブレンダー室 チーフブレンダー 輿水 精一さん (4/4)

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第13回 サントリー酒類株式会社 ブレンダー室 チーフブレンダー 輿水 精一さん
Calendar2010/01/26

功なってなお「運が良い」と言える人は・・・

古森 そろそろ終わりの時間に近づいて来ましたが、最後に一つ、お伺いしたいことが・・・。輿水さんが、いつも高い目標を自らの内面に持ち、挑戦しつづけることができるのは、なぜだと思われますか。言葉に出来ないものかもしれませんが。

輿水 う~ん。それは・・・。

古森 こだわりや矜持のようなものは、やはり理由のない世界かもしれませんね。

輿水 一つ思うのは、チーフブレンダーになった頃の心境変化ですかね。やはり、立場というものの緊張感もあって、世界がどう見るか、同業のブレンダーさん達がどう評価するか、とか。そういうものが、自然と意識されるようになりました。勝ち負けのようなものではなくて、認められるものをつくりたいという思いのようなものです。そういう思いと一緒に、自分が実現したい質感のようなものがあるわけです。

古森 プライドのようなもの、でしょうか。

輿水 う~ん。まあ、そういうものかもしれません。でも私は、やはり運が良かったと思っているんですよ。それで、あとは「うまい酒がつくりたい」と。そう思って、やってきただけなんですね。ただ、それだけのような気がします。

古森何事かを成してなお「運が良い」と言える人は、多くの場合、自分に出来ることを尽くしてきた人です。運以外に努力を相当量重ねてきた人でないと、それは口をついて出てくる言葉ではないと思います。世間には、自分でやれる努力もしないで、「私は運が悪い」と言う人はたくさんいますけど・・・。輿水さん、本日はウイスキーづくりの話から人づくり、そして仕事の価値観に至るまで、非常に示唆深いお話をお聞かせ下さり、本当にありがとうございました。

~ 対談後記 ~
世界のウイスキー市場で、「ジャパニーズ・ウイスキー」が「5大ウイスキー」の一つに数えられる時代になっています。数世紀の歴史を持つスコットランドの伝統。かたや、1世紀に満たない日本のウイスキー業界の歴史。時間という埋めがたいものが支配する酒づくりの世界にあって、歴史の圧倒的時間差を超えて評価されるに至った、ジャパニーズ・ウイスキー。埋めがたいものを埋めたその背景にあるものを、多少なりとも理解する幸運に恵まれた1時間でした。やはり、ウイスキーづくりは、人づくりに通じるものが多々あります。平均的なレベルを超えた、何か良いものを生んでいくための要諦は、きっと万事通じるものがあるのでしょう。

対談後、輿水さんから一冊の本を教えて頂きました。この11月に発刊された、「ウイスキーの科学」(古賀 邦正、講談社)です。輿水さんからのメールには、こうあります。

「・・・著者の古賀さんは、サントリーの研究所でウイスキーの貯蔵熟成を研究していました。私も数年間古賀さんのもとで樽や熟成について研究生活を送りました。今考えると、最も伸び伸び仕事をしていた時代かもしれません。熟成を科学的にとらえた本で、是非ご一読をお勧めします・・・」
若き日の輿水さんの現場経験、探求、そして試行錯誤を支えた方のお一人なのでしょう。早速、私も手にとって読んでいるところです。科学に感情がこめられている、そんな印象の本です。

輿水さん、有難うございました。