C-Suite Talk Live第16回 ガートナー ジャパン株式会社 代表取締役社長 日高信彦さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第16回 ガートナー ジャパン株式会社 代表取締役社長 日高信彦さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第16回(2/4)

第16回 ガートナー ジャパン株式会社 代表取締役社長 日高信彦さん
Calendar2010/03/11

英語の上達に欠かせないものは?

古森さて、とはいえ「言語」にもまた大きな壁があります。多くの場合、まずは英語なのですが、これに関して日高さんはどのようなお考えをお持ちですか。

日高 当然、言語の壁は越えなければなりません。それができなかったら、受容したり対案を出したり、食事をともにして信頼関係を築くことも出来ないわけですから。

古森 日高さんは、今では普通に英語を使ってグローバル・ファームの仕事をしておられるわけですが、どのようにしてそこに至ったのでしょうか。語学の道は必ずしも一本ではないでしょうが、何かヒントになるお話が伺えればと思います。

日高 私個人の経験としては、そもそも「好奇心があった」というのが原点ですね。好奇心があって、「海外に行きたい」という思いがベースにありました。小学校の頃に地理クラブというのがありましてね、海外の都市を覚えたりしていました。

古森 そういう好奇心は、わりと多くの人が若い頃に一度は抱くものではないでしょうか。それがどう広がっていくかは、千差万別でしょうけど。それで、その好奇心に満ちた少年は、その後どのような青年期を?

日高 結局、語学は自分である程度努力する必要があると思いまして、学生時代は週末を使って英語をよく勉強していました。高校生の頃は、関西に住んでいましたので、京都へ行って観光で訪れる外国人に道端で声をかけ、観光ガイドをしてみたりもしました。自費で海外にも行きましたよ。IBMに入ってからは仕事で英語を使う必要が出てきましたが、そんな中でも社外のスクールに通ったりして、自力での勉強は続けていました。

古森 ご自身で、地道に勉強して来られたわけですね。好奇心だけでは終わらせなかった・・・。しかし、高校生で観光ガイドの突撃営業までやりましたか!なかなか、そこまではやらないですね(笑)。

日高英語の上達に、やはり最低限の勉強は必要だと思いますよ。ある程度の絶対量を超えるまでは、地道にやらないと。

古森 基礎的絶対量の確保というのは、語学のみならず、あらゆる人間技の習熟過程で重要な意味を持つと思います。何かの道を極めつつある人は、皆さんそう言います。

日高 それから、日本人の場合は特に、「聞く」「話す」回路を鍛える必要があると思います。「読む」「書く」回路は、相対的には習熟度合いが高い。発音などは筋肉の使い方の問題なので、それを習得する必要があります。

古森 語学の習得は、基礎レベルでは理屈よりも筋トレに近い面がありますね。

日高 そうした基礎的な蓄積を経たうえで、実用レベルにまでぐっと伸びていく段階では、「覚悟」も必要だと思います。

古森 覚悟ですか。

日高 海外にいた頃、色々な日系企業の方とお会いしました。そこで「すごいな」と感じた人達は、多くの場合、海外で仕事をするうえでの覚悟が違っていたように思います。例えば、ある自動車メーカーでは、駐在で海外に出る人は「日本に帰ってくるな」と言われていたそうです。

古森 なるほど、海外で成功している日系企業では、それに類する話をよく耳にします。実際に帰国のローテーションがあるかないかは別にして、「帰らない」「逃げ場がない」という退路を断った感覚に意味があるのだと思います。最後は本人の心次第ですが、その背中を押す仕組みというのは、企業や学校でも提供可能でしょうね。

日高 「ここでやっていくんだ」という覚悟を持てば、カルチャーの違いなどを言い訳にしているわけにいきません。どうやったら、様々な違いを乗り越えて一緒にやっていけるのかを探すしかないわけです。

古森 一度壁を越えて中に入ってしまうと、見えてくるものがあるのでしょうね。

日高 違うカルチャーの中であっても、人間として向き合い続けていけば、やがて共通するものに気づきます。例えば、欧米では「フェアかどうか」というのを非常に気にしますが、日本にも「武士の誇り」というのがあります。表現は違いますが、似た感覚ですね。騎士道という言葉もある。悲しいときは泣きますし、痛ければ声をあげ、面白ければ笑うわけですよ。人間は、共通項のほうがが多いわけです。

古森そういうことが感覚的に分かるようになるためには、海外で覚悟を決めて過ごすという経験は重要ですね。いつでも帰れる旅行とは、全く違う。自費でも行くべきだと思いますし、会社から行くにしても「お勉強」のマインドセットでは駄目でしょうね。必ずしも悲壮感はなくても良いと思いますが、「ここで人間と向き合おう!」という姿勢は必須だと思います。

日高あるいは、海外から日本へ人を招いて一緒に仕事をする場合にも、そういう覚悟を持てば意義があると思います。いくつかの日系企業で、マネジメント層に海外の人材を据える事例が散見されますが、「お客様」扱いでは得るものが少ないようです。逆に、その機会を生かして組織に変化を生むことが出来ている企業では、受け入れる日本の組織内にある種の覚悟があるのを感じますね。

古森 行くのも来てもらうのも含めて、海外の異質なプロトコルの中にいる人間と覚悟を決めて向き合う。それが、英語の上達において重要だということですね。

日高 思えば、欧州やラテンアメリカの人たちの多くは、英語を使ってどんどんコミュニケーションをとっていますね。お世辞にも英語が上手とは言えない場合であっても。一方、日本人には、ある程度英語ができる人でも「やりたがらない」という傾向を感じます。これも、覚悟ということではないかもしれませんが、やはりスタンスの問題が大きいでしょう。

古森 確かにありますね、そういう傾向は。

日高 いろんな本を読んで思うのは、どうも「稲作農民」の意識に起源がありそうだということです。「おらが村」の発想ですね。日本人は、第2次大戦まで70%以上が農民だったという統計もあるくらいなので、なかば遺伝子的に「異人は怖い」という感覚があるのかもしれません。

古森 なるほど。

日高 儒教や武士道など、他にも日本人のメンタリティに深く影響を残しているものがあります。モノを言わないことをよしとする傾向なども、根深いものがありますね。

古森 いわゆるダイバーシティ論の中でも、異質なものに対する感覚バリアや、考えがあっても意見を口にしない傾向などが、日本の組織における典型的課題になっています。

日高 一方、面白い話もありまして、「海外に出て最初に母国のネイチャ―をなくす人種は日本人だ」という研究結果もあると聞きます。日本人には、「一旦壁を破ると馴染みやすい」という習性もあるようです。