C-Suite Talk Live第17回 コマツ (株式会社小松製作所) 常務執行役員日置政克さん

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第17回 コマツ (株式会社小松製作所) 常務執行役員 コンプライアンス、法務、人事・教育、安全・健康管理管掌 日置政克さん
Calendar2010/03/25

コマツウェイの浸透はトップ自らの実践にあり

古森 コマツウェイに関しては、もう多くの人が知っていると思います。社会人対象の様々な勉強会でも、頻繁に研究対象にあげられている理念の一つです。一方、字面を見ただけでは伝わらないものも多々あるでしょう。コマツウェイの策定~浸透に足掛け5年近く関わってこられた日置さんから見て、何が一番のポイントだと思われますか。

日置私個人としては、ハーバード・ビジネススクールの吉野先生との二人三脚で、外国人スタッフの教育をしてきた数年間でした。昨年からは、こちらから出向いて、アジアのミドルマネジメントの教育を始めました。コマツウェイを小冊子にまとめましたが、その文言の一つ一つにまで血が通っていると思います。英語版も含めて。ただ、やはり会社として見れば、何よりも大きいのは経営トップの関わり方ですね。

古森 日本のみならず、海外でも精力的に伝道活動をしておられるとか。

日置そもそもコマツウェイが今のような形にまとめられたのは、2006年の12月です。オペレーションもグローバルに広がってきて、新しい仲間も増えてきましたから、コマツに脈々と伝わる良いものを残そう、こういうものを明示しよう、という取り組みを始めたわけです。

古森 2000年代の初頭には、経営として難しい舵取りを迫られた時期もありましたね。そこから再び立ち上がっていく過程で、この動きが起きたのですね。

日置そうです。坂根(現会長、当時社長)と野路(現社長、当時取締役)がリードをとって、コマツの強みと弱みの再検証、コマツに脈々と受け継がれている現場のDNAや伝承の再認識を進めていきました。多くの人が参加して作り上げたものですが、ボトムアップの単なる総和ではなくて、経営トップが自らの意思をこめて作り上げたものです。

古森 検討段階から経営トップがオーナーシップを持ち、展開過程でも自らが率先していくという姿ですね。近年、理念系を再定義する試みは多くの企業に見受けられますが、書面は出来ても浸透されにくいという現象がしばしば見られます。コマツさんの場合は、経営トップが「わがこと」として取り組むのですね。そこに大きな力があるのだろうと思います。

日置浸透の仕方にも、意味があると思いますよ。一般的に、経営トップによる理念の浸透というと、各地を行脚して説明会を開催するような活動を想起しますよね。もちろんそういうことも初期にはたくさんやりました。坂根も野路も、本当に精力的に動きました。ただ、本当に大事なのは「コマツウェイの説明」ではなくて、経営トップが「コマツウェイを体現している姿そのもの」を見せることです。

古森 体現している姿そのもの・・・。

日置例えば、坂根も野路も、現場への経営情報の公開に大変熱心です。年に2回は、トップが自ら社員に対して会社の状況を説明することを有言実行しています。経営の話は出来るだけ中枢にとどめるという企業も多いわけですが、コマツの場合は「出来るだけ話そう」という方針ですね。もちろん何もかも話せるわけではありませんが、世の中の平均に比べたらかなり積極的に経営が現場に情報を出している会社だと思います。

古森 その姿勢自体が、コマツウェイの体現だと。

日置コマツウェイには、全社共通の部分と、マネジメント層に向けたものとがあります。
マネジメントのコマツウェイには、

  1. 取締役会を活性化すること
  2. 社員とのコミュニケーションを率先垂範
  3. ビジネス社会のルールを順守すること
  4. 決してリスクの処理を先送りしないこと
  5. 常に後継者育成を考えること
と、あります。現場に対する経営としての積極的な説明活動というのは、まさに「2. 社員とのコミュニケーションを率先垂範」にあたるわけですね。

古森 なるほど・・・。

日置 坂根も野路も、それを自分で実践していることを現場に見せているわけです。説明ではなくて実践そのものを。

古森 当然のことながら、「全社共通」の部分に関しても経営トップが背中を見せておられるのでしょうね。

日置 その通りです。「全社共通」のコマツウェイは、言葉だけでは分からないものがあるでしょうが、
  1. 品質と信頼性の追及
  2. 顧客重視
  3. 源流管理
  4. 現場主義
  5. 方針展開
  6. ビジネスパートナーとの連携
  7. 人材育成・活力
という項目になっています。坂根も野路も、ことあるごとに現場のことを考えていますし、実際に足を運びます。自ら背中を見せることをもって、経営として方針展開をしているわけですね。最近では、海外の社員が「Genba」と言うようになってきました(笑)。

古森 「人を育てる」という趣旨の項目は、マネジメントのほうにも全社共通のほうにも出てきますね。このあたりも、相当こだわりがあるところなのでしょうね。

日置 ええ、特に「人」に関わるところは、社内の目が経営トップの挙動を注視しているわけですから、ここでコマツウェイに背くことは許されません。一つ象徴的な話としては、子会社のトップ人事がありますね。昔は、そういうポストは本体からの天下りがほとんどでした。それが、坂根の時代になって子会社内での昇格を重視するように変わったのです。

古森 日系の大企業では、なかなか踏み切れないところですね。

日置それを見て、社内の雰囲気は変わったと思います。子会社の従業員にも、コマツが「人材育成・活力」ということに本気であるということが、感じられたのではないでしょうか。また、上から降りていく人事ではなく下から上がっていく人事をしていけば、結局は「常に後継者育成を考えること」にもなるわけです。

古森 感服いたしました。